2021年618商戦 クチコミ分析から何が見える?
JD.comにおいても昨年越えが発表されている2021年の618。好調を伝えるブランドも数多くあるが、消費者たちはその商戦にどのような印象を抱いたのだろうか?
中国トレンドExpressでは2021年と前年の618商戦期間中(ともに5月25日から6月20日)のクチコミを収集。618商戦中のクチコミ上における人気ブランドなどを分析した。
今回はその中から618全体を俯瞰してみよう。
618クチコミ件数は増加傾向。年齢層も平常化へ
まず618に関するクチコミ件数である。今回は単純に5月25日から6月20日の期間中に「618」というキーワードを含んだ投稿があった件数を収集した。
【グラフ】618に関するクチコミ件数
出所:数慧光商務諮詢(上海)有限公司
これを見ると2020年は300万件の投稿があったが、2021年は約315万件と5%ほどの件数増加がみられた。
昨年と比べて大きくはないが増加がみられており、618商戦全体としては前年並み、もしくはそれをやや超える盛り上がりを見せたと言っていいだろう。
2020年は新型コロナウイルスによる外出制限終了後の大型商戦とあって前年である2019年以上の盛り上がりを見せたが、商戦全体として2021年もその流れを継続した結果となった。
続いて、このクチコミを行っているユーザーを年齢で見てみよう。今回は昨年に比べて小さいながらも変化が見られた。
【グラフ】618クチコミの年齢分布
出所:数慧光商務諮詢(上海)有限公司
主力年齢層は2020年同様、「25歳から34歳」という世代、中国でいう80後世代後半および90後世代が中心となっている。
しかし全体における比率は2020年から微減を見せている。
それに代わって比率を伸ばしたのが19歳~24歳。すなわち本格的なZ世代となっている。
この世代はプラットホーム、多くのブランドがターゲットとしている消費層であり、国潮や国貨など、同世代向けのプロモーションやキャンペーン露出が2020年に比べても増えたことが要因として考えられる。
また興味深いのは35歳~50歳という世代のクチコミも増えている。
彼らは社会的には主役とされている世代であり、購入意欲・能力も高い世代であるが、2020年はコロナ禍によって経済的にも打撃を受けていた世代であり、その分「元気が無かった」といえる。
そうした視点で見れば、年齢分布も新型コロナから脱し、正常な状態に戻りつつあるといえるのかもしれない。
2020年に比べて落ち着きを見せている「買った」クチコミ
続いて「618×買った」のキーワードで、618でショッピングをしたことを投稿したクチコミ件数を調査した。
【グラフ】「618×買った」クチコミ件数
出所:数慧光商務諮詢(上海)有限公司
グラフを見ると、2020年は99000件余りであったのに対し、2021年は89000件と、約1万件の減少を見せている。
これまで公開されたプラットホームやブランドの618結果を見る限り、ともに昨年を上回ることが述べられている。そのため、売上そのものが下がったとは考えにくい。
一つの可能性としては、2020年は全国的に「脱新型コロナの影響」という社会的なキャンペーンが展開されており、また外出規制などの逼塞した第1四半期などを過ごしたリベンジ消費が多かったことで、購入後の「報告」投稿が増加したと考えられる。
そのため減少という事実はありながらも、ネガティブな要素としてではなく、現時点では中国市場自体が平常運転に戻っている(2020年はやはり特殊な1年であった)と考えることができる。
もちろんこれは敬意観察が必要なものであり、2022年の同商戦でどのように「買った」クチコミが変化するのかも見る必要がある。
では気になる「618×買った」とともに投稿されたブランドのランキングはどうなっているだろうか。
50位までを整理してみた。
【表】「618×買った」ブランドクチコミランキング
出所:数慧光商務諮詢(上海)有限公司
1位、2位は「ロレアル」と「エスティーローダー」が2020年と交代することになった。この両者はT-Mallのスキンケア商品でもトップ2を抑えているが、全体を見ても好成績であったことが想像される。
ちなみにロレアルグループの各ブランドは、それぞれの分野においてT-Mall、JD.comにおいて1位(海外ブランド1位)などの成績を収めており、2021年618を大成功で終えている。
スキンケアでも商戦開始からのスタートダッシュを見せており、世界最大級の化粧品ブランドとしての総力を挙げた様子が見て取れる。
スキンケア業界では今後もロレアル、エスティーローダー2強時代が続き、3位にどこが入るか、という戦いが繰り広げられそうだ。
また順位を大きく上げたのは韓国ブランド「The history of Whoo(后)」や「SULWHASOO(雪花秀)」である。
これらのブランドは2020年のダブルイレブンで売上を大きく上げており、その余勢を2021年につなぐという、理想的な流れを見せている。
また日本勢ではKOSEグループの「COSME DECORTE」が順位を上げている。
T-Mall618では一時期トップ10圏内に顔を見せたように勢いをつけている。商戦直前にはガラス工芸における世界のトップブランドであるBACCARATとのコラボ限定商品を中国で販売開始。
上海においてイメージキャラクターである女優・周迅を招いての豪華イベントを開催し、目を引いた。
こうした特別な動きと商戦向けのプロモーションが合わさり、順位を上げたものと考えられる。
興味深いのは、商戦前に政治問題に絡んでインターネットやSNSで批判を浴びていたNIKE、adidasの海外スポーツブランドであるが、安定の上位に姿を見せている。
こうした政治的な反応と「安売り商戦」は別という認識があったようである。
こうした傾向が見えるのも商戦期クチコミ分析の面白さであるといえるだろう。
次回は中国プロモーションの中核となっているライブの様子をクチコミから見てみよう。