中国人社会に存在する「圏子」とは? ~メンバーの利益が最優先。中国でクチコミが共有される社会的背景~
中国人の人付き合いを理解するのに有効な「圏子」という概念を知っていますか? 直訳すると「サークル」という意味です。しかしこの「圏子」には「サークル」以上の存在意義と存在感があります。
「圏子」の成り立ち
「圏子」は同じ所属先、地域の人間が仲間となり団結し助け合い、その集団を利する行動を良しとする構成員で構成されてきました。中国ではこの「圏子」が歴史上、特に貧困の時代には相互補助のための役割を果たしてきたといいます。
一方で、この「圏子」文化では、自分の所属する「圏子」の利益のみを考え行動し、他者の属する「圏子」の不利益は考えません。異なる「圏子」の間では利益が相反し争いがおこるという側面もあります。
インターネットと消費の結びついた時代に存在感を増す「圏子」
かつては農村で「圏子」の社会単位を重視して生きてきた中国人ですが、近代化に伴い進学や就職で農村、親族、家庭を離れることが一般的となり、そうして離脱した「圏子」の代わりとして、心のよりどころを求めるように、インターネットの中で新たに「圏子」を形成していると言われています。現代の「圏子」がインターネット普及以前と違う点は、ネットの上では所属先や年齢が関係なく、趣味や志向を紐帯として「圏子」を形成しているという点でしょう。
インターネット全盛時代、この「圏子」という概念はかつてないほどその存在感を増しています。「圏子」は現代において中国の文化的トレンド、消費トレンドを形成する要素となっているからです。信頼できる人間からのクチコミを大切にする中国では、「圏子」の構成員は、他のメンバーに利益となるよう自分が得た「良い」情報、体験をシェアし、メンバーはそれを参考にします。
情報提供を行う動機は、自分の所属する「圏子」のメンバーから除外されないため、というある種ネガティブなものでもありますが、マーケティングの観点から言えば認知拡大やブランディングに寄与してくれる存在であることは間違いないでしょう。