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【コラム】中国-日本コンビニシームレス時代 ~上海のコンビニから始まる日本体験が訪日消費を左右する?~

北京、上海、広州等の都市部では日系コンビニの進出が加速しています。大まかな勢力図で言えば北はセブンイレブンが、南はファミリーマートが強いと言われています。そしてその二社をローソンが追うという形になっているようです。(ただし台湾、香港は除きます)。

日系コンビニの中国進出は中国人のライフスタイルにも大きな変化を与えています。例えば…

・冷たい飲み物

・おでん

・コンビニカフェ

こういった食品は、日本発で楽しまれるようになった商品として有名なだけでなく、その登場によりそれまで当然とされてきた中国のライフスタイルを変えた商品です。今後の中国市場のマーケティングを考える際に参考となるのではないでしょうか。どういった楽しまれ方をしているのか、それぞれ見ていきたいと思います。

まずは冷たい飲み物です。中国ではもともと体を冷やすことが病気につながると考えられていたため、冷たいものを飲むという習慣がほとんどありませんでした(ビールですら常温で飲んでいました)。

しかし、日本のサントリーが自社のビールやウーロン茶を中国市場に投入したころから次第に冷たい飲み物も飲まれるようになり、日系コンビニの増加によって冷たい飲み物を飲む習慣が定着しています。

おでんも日系コンビニが最初に提供し始めたサービスで、中国語では「関東煮」(グアンドンジュー)と呼ばれています。当初は日本のおでんのネタが中心でしたが、その後中国人が好む具を取り扱うようになり、更にはカレー味、麻辣味(中国のスープの味付けの一種。しびれるような辛さが特徴)等のバリエーションも増えました。結果としておでんは今やすっかり中国の文化として定着し、今では中国の食べ物と思っている人もいるほどです。

いろいろなおでんの具が、コンビニのおでんのケースの中に並ぶ。

そして、最近日系コンビニ各社が中国で力を入れているメニューが、コンビニカフェです。日本のようにセルフではなく、注文をすれば店員さんが作ってくれるスタイルとなっています。中国に多数進出しているスターバックスをはじめとするコーヒーショップチェーンに比べると値段が安いため、最近人気が上昇しています(スターバックスのカフェアメリカーノは18元ですが、コンビニカフェのブラックコーヒーは10元程度です)。

紙コップのコーヒーを飲みながら、パソコンを開き話をする男女四人

このように、中国社会になかったものを提供しながら、そしておでんのように一部は現地の感覚に合わせながら、日系コンビニは中国展開をしています。

中国にいながらにして日本文化を体得し日本商品を消費する場、それがコンビニ

そして今こうした日系コンビニの拡大を受け、「中国-日本コンビニのシームレス化」という現象が起きています。

例えば、中国で日系のコンビニを日常的に利用していれば、日本旅行で日本のコンビニを利用してもその作法で迷うようなことはあまりないかもしれません(チケット発券や荷物受け取り等の複雑なものはそうとも言えませんが)。

利用方法だけではありません。中国の日系コンビニをのぞいてみると、日本から持ってきたと思われるような、日本の文房具や化粧品、雑貨、食品等が多数並べられています。もちろん値段は輸入品のため相当高いですが、それにも関わらず店員さんに聞いてみるとほぼ毎日買っていく人がいるそうで、それなりに売れているようです。消費されるものについても、中国と日本の間で境目がなくなりつつあると言えるのではないでしょうか。

このように中国のコンビニでも、日本のシャンプー、お菓子、化粧品、文房具が買えるということは、中国人の訪日時の購買に少なくない影響を与えていると考えられます。

例えば、中国の日系コンビニでみかけた日本製の化粧品が200元で売られていたとすれば、消費者はそのあまりの高さに購入を断念するかもしれません。しかし同時に、その商品に対する記憶は刷り込まれていることもあるはずです。その後機会を得て日本へ旅行した際に、この商品を日本のドラッグストアでみかけ、さらにその値段が半額であったら、この商品を購入する可能性は非常に高いと言えるのではないでしょうか。

また、仮に日本へ旅行しなかったとしても、コンビニでみかけた輸入品を越境ECサイトでより安く買おうとすることはよくあると言われています。そのような意味で日系コンビニは中国人の日本製品購入意向を喚起する有力な窓口になっていると言えるでしょう。

 

これからの日本文化伝播のキー・ポイント

今後、中国の消費者が購買力を高めるにつけ、これまでは価格帯に魅力を感じなかった日系のコンビニを日常的に利用するようになるのではないでしょうか。そういった状況に加えて、コンビニではコンビニカフェのような日中間でサービスに違いの無い商品が広まりつつあります。結果として、コンビニはますます中国と日本で同じ商品を味わえる場となり、「中国と日本のコンビニのシームレス化」が進行していくと考えられます。

また、アニメ、ウーロン茶、おでん、カフェと日本の様々な文化や習慣が中国の消費者(特に若者)に根付いていっていますが、コンビニはそのきっかけとして重要な位置を占めつつあります。

こういった事実は、中国の日系コンビニに並ぶ、日本人でもあまり知らないような日本の商品が中国人の間で大人気となり、訪日中国人が日本でその商品を買い漁るというような人気拡大のパターンが生まれる可能性を感じさせます。

これから夏にかけて中国人の日本旅行はピークを迎え、更に夏が終わると11月11日に向けてネットではセールの季節を迎えます。今、日系コンビニに置かれている輸入日本製品である洗顔料、シャンプー、文房具、玩具、スマホアクセアリー等は、夏の訪日中国人による購入や、セール時期にECサイトでの人気が期待できるのではないでしょうか。コンビニ発祥の人気日本商品に、引き続き着目してみたいと思います。