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中国・都市解説(2)四川省(成都市) ~激辛料理とパンダの先に存在する、8000万人の消費者~

中国の四川省をご存知の方なら、激辛料理を思い浮かべる方も多いでしょう。実際に四川省の省都である成都市には元祖・麻婆豆腐店である「陳麻婆豆腐」が存在します。また、さらに知識のある方なら中国国内有数のジャイアントパンダ保護区の存在を知っているかもしれません。

しかし広大な土地を有する四川省にはもちろん麻婆豆腐とパンダ以上の歴史、自然そして産業があるのです。本日は四川省の知識、ダイジェスト版をお送りします。

歴史と自然と「川妹」

まずは歴史的遺産にフォーカスしてみましょう。四川省の広漢市には紀元前2000年頃のものとされる三星堆遺跡があり、成都市は日本でも人気の高い三国志の蜀の都が置かれた地域です。

自然景観にも恵まれています。ユネスコの世界遺産にも登録されている九塞溝(きゅうさいこう)の渓谷の景観と歴史地域は中国でも最も人気の観光地の一つで、国内観光地の人気ランキング・ベスト10の常連となっています。四川省という内陸部に位置していることに加え、標高2,000~3,400メートルの高度にあるというロケーションのせいか、日本における九塞溝の知名度は杭州の西湖や北京の万里の長城には及ばないようですが、中国国内での絶大なる人気がその価値を証明しているといえるのではないでしょうか。

また、四川省の女性には「川妹(チュアンメイ)」という呼称があります。四川省はスレンダー美女が多いと評判の地域となっています。日本ではalanという女性歌手が活躍していましたが、この歌手は四川省のチベット民族の女性です。四川省は西部をチベット自治区と接しており、四川省内にも飛び地のチベット族の自治州があります。


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中国国内でも屈指の人口・経済規模、メイン産業は「鉄鋼」

四川省には歴史そして自然の豊かさが存在するものの、中国の内陸部は沿海部に比べて「立ち遅れている」というイメージがあるのは事実です。実際には立ち遅れているのでしょうか? 四川省の経済指標等をみていきましょう。

まず初めに、対象地域の人々の生活水準を図る基本的な指標として、四川省の1人当たりGDPを見てみます。

 

中国地域別一人当たりGDPランキング(2016年)

順位 地域
1 天津市 115,613
2 北京市 114,690
3 上海市 113,731
4 江蘇省 95,394
5 浙江省 83,923
省略
24 四川省 39,835
省略
31(最下位) 甘粛省 27,508

※1 至誠财经より作成。(URL: http://www.zhicheng.com/n/20170228/125652_4.html)
※2 小数点は切り上げ。

 

これを見ると、四川省は31の地域のうち24位に位置し、一人当たりの生活水準としては中国国内でもそれほど高くない事が予想されます。

GDPの産業別シェアでも、第一次産業や第二次産業のシェアは全国平均より高くなっています。サービス業の発展した沿海地区に比べると、四川省はまだまだ農業が強く、これに加えて鉄鋼系の生産で知られる攀鋼集団有限公司(はんこうしゅうだんゆうげんこうし)のような域内大企業によって同省の経済は支えられています。

日本の三分の二!? 小売総額を押し上げる膨大な人口

次に消費の側から四川省を見てみましょう。以下は中国の消費統計である「社会消費品小売総額」のランキングです。

 

社会消費品小売総額(2016年)

順位 地域 億元
1 広東省 34,739
2 山東省 30,646
3 江蘇省 28,707
4 浙江省 21,971
5 河南省 17,618
6 湖北省 15,649
7 四川省 15,502
8 河北省 14,365
9 湖南省 13,437
10 遼寧省 13,400
省略
30(最下位) チベット自治区 457

※1 中商情報網より作成(URL: http://www.askci.com/news/paihang/20170216/16594990751.shtml
※2  黒竜江省のみ未公表
※3 小数点は切り上げ。

 

これによれば、四川省の順位は北上広(北京・上海・広州の三都市)、長江デルタ(上海市の南北に位置する江蘇省、浙江省)といった経済先進地域の次の集団に属していると言えそうです。

それもそのはず、四川省の人口は8000万を超えており、これは全省の中でも第4位に位置づけられます(2016年時点)。このため、消費市場の規模としては中国でも比較的上位の地域であると言えるのです。成都市内でもルイヴィトン等のラグジュアリーブランドの店舗が出店していることからも、さらなる外資の参入も予感させます。

成都市は杭州市、武漢市、長沙市と並んで、新一線都市として商業的なポジションがますます北上広に近づいているとの見方もあります。昨今の中国国内での旅行産業の盛り上がりが四川省の経済発展を推し進めるのかどうか、そして四川の経済発展が「川妹」たちにどのような消費トレンドをもたらすのか、インバウンド・アウトバウンドの市場で注目すべきポイントとなるのではないでしょうか。編集部でも引き続き注視していきたいと思います。

参考:2017年最新新一線都市リスト 新たに新一線都市となった都市は?(出典:財富動力) 中国語


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