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中国・都市解説(3)山東省(済南市) ~無骨な男性と古代の思想家が支える裕福な沿海部~

中国各地の統計的基本情報と特長をご紹介する「都市解説」シリーズ第三弾は、中国の首都北京からほど近い「山東省」です。

人口規模は全国2位!

渤海と黄海に突き出た山東半島を持つ山東省は人口9,946.6万人、広東省に次ぐ第2位の人口を有し、中国を代表する巨大な省と言えます。

山東省人には「山東大漢」(山東の大男)というステレオタイプがあり、「剛直」「頑強」「酒飲み」といった豪快なイメージを持たれているようです。実際に、男性の平均身長が中国国内で第1位(男性平均が175センチ強)といったデータもあります。

試しに中国の検索エンジン「百度(バイドゥ)」で「山東大漢」をイメージ検索してみると、画面がマッチョマンとスポーツマン等、武骨な男たちに占領されます。同じ沿岸部でも浙江省の「抜け目のない商人」というイメージとはかなり異なります。


▼浙江省についてはこちらの記事から確認ください

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観光資産はお任せ! 歴史・食・気候に恵まれた土地

省都である済南市は古代四大文明の一つ、黄河文明の中心地であるとされ、代表的な遺跡が存在します。

また千仏山を中心とした仏教関連の名勝地もあります。省内他の地域においても曲阜(きょくふ)市は孔子、鄒城(すうじょう)市は孟子といった人材を輩出しており、中国の歴史に与えた影響は計り知れません。曲阜市には、中国各地にある孔子廟(孔子をまつる廟)の中でも最大の孔子廟があり、ユネスコの世界遺産にも登録された同省最大の観光スポットの1つとなっています。

19世紀からは同省は西欧列強の支配を受けたため、海辺の景観で知られる威海市はイギリス、ビールで有名な青島はドイツの租借地がかつて存在しており、同地域は異国情緒にあふれた観光地でもあります。

現地の山東料理は中国8大料理に数えられます。気候は一年を通して穏やかですが、夏は蒸し暑く冬は乾燥して寒くなります。

経済規模は全国第3位、一人当たりGDPは全国TOP10にランクイン

最後に経済規模の概況です。2016年の省別GDPランキングを確認してみると、山東省は中国国内第3位の経済規模であることがわかります。中国国内で一人当たりGDPも10,000ドルを超える地域は9つですが、このうちの一つとなっており、省全体の豊かさを確認することができます。

中国省別GDPランキング(2016年)

順位 地域 億元 前年比(%)
1 広東省 79,512.05 7.5
2 江蘇省 76,086.17 7.8
3 山東省 67,008.19 7.6
4 浙江省 46,464.98 7.5
5 江南省 40,160.01 8.1
6 四川省 32,680.50 7.7
7 湖北省 32,297.91 8.1
8 河北省 31,827.86 6.8
9 湖南省 31,244.68 7.9
10 福建省 28,519.15 8.4
    省略
31(最下位) チベット自治区 1,150.07 11.5

※南方財富網より作成(http://www.southmoney.com/redianxinwen/201702/1089704.html

一人当たりGDPが10000ドルを超えた9つの地域(2016年)

順位 地域 ドル
1 天津市 17,406
2 北京市 17,271
3 上海市 17,120
4 江蘇省 14,361
5 浙江省 12,635
6 福建省 11,184
7 内蒙古 11,171
8 広東省 11,034
9 山東省 10,245

※中国情報網より作成(http://www.askci.com/news/finance/20170301/13461192081.shtml

さてこの豊かさを支える産業は何でしょうか? 省内を代表する企業はその名も山東魏橋創業集団有限公司という非金属加工業社。聞きなれない企業かもしれませんが、中国全国工商連合会らの調べによる2016年の中国民営企業ランキングにおいて同社は3位に位置づけられ、まぎれもなく中国を代表する企業であるといえます

参考:中国民間企業500社ランキング、華為は第1位に(出典:人民中国)

こうした経済基盤を支えたのは、沿岸部の地の利に起因する、韓国・日本などからの豊かな投資です。山東省は青島市(チンタオ)、煙台市(イエンタイ)、威海市(ウェイハイ)などの沿岸地域の地域別GDPが、省都である済南市を凌駕しており、海路により経済発展した地域であることがわかります。特に青島市のコンテナ輸送量は国内屈指となっています。

まとめ

観光資源も豊富で省民の経済力も強大な山東省。無骨な男性と古代思想家に支えられているかのようなこの土地では一人当たりGDPも高く、消費活動も活発であることが考えられます。経済力に裏打ちされた「消費昇級」が進行していくとすれば「日本製品」についての関心の増大するポテンシャルの高い地域と考えられるのではないでしょうか。

トレンドExpressが行った新浪微博を用いた複数の美容関連ワードについての指数検索でも、山東省は各ワードで検索指数の高い地域としてランクインしています。「北上広」「長江デルタ」といった経済先進地区に加えて、中国市場開拓に際しては要注目の都市となりそうです。


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