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【インタビュー】中国で広がるデジタルサイネージ活用(3)運営の肝と新たな施策~「アート」が模倣品に負けないインパクトを生み出す~

(2)では店舗のデジタル化が、オフライン店舗の価値を再定義する可能性について整理していただきました。また実際に導入されているユニクロの事例から、サイネージの設置意義が多層的であることも確認できました。引き続き同社の事例から、デジタルサイネージの設置後の運用、効果、導入費用などをお話いただきます。

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【インタビュー】広がるデジタルサイネージ活用(1)~人に足を運ばせるものは「オフライン」にあった~

【インタビュー】広がるデジタルサイネージ活用(2)来店価値の創出~ユニクロの事例から~

インタビュー最終編となる本編では、二つ目の事例として製菓ブランド「BAKE」のオープンイベントもご紹介いただきます。中国では先に模倣品が出回ってしまったチーズタルトを商品ラインナップにそろえる同ブランドの戦略とは。

設置のあとは「苦手」な運用

―サイネージ設置後のポイントを教えてください

デジタルサイネージの施策が成功したかどうかは、エンゲージメント、つまりサイネージ(看板)を目にしたユーザーがその中のコンテンツに参加してくれるかどうかを評価指標とします。

高いエンゲージメントを得るためには、企画やデザインも重要ですが、同じくらい運用も結果を左右するポイントです。

―中国の「運用」の実態を教えてください。

ユニクロの場合は広大な中国の各地に散らばっているため、遠隔でモニタリングをしています。店舗から送られてくるデータにおかしな点があれば、モニターの不調など何かトラブルが起きている可能性を疑って店舗のスタッフに確認を依頼し、正常な状態に戻すための必要な対処(例えば修理など)をとります。

安定運用ができるかどうかは、この「スタッフの確認」「正常に戻すための対処」ができるかどうかにかかっています。「画面の不具合が放置されている」という状態は、ユニクロのブランドイメージを損ないますので、安定運用は至上命題ともいえるでしょう。

中国の街中には「作ったけど壊れている」サイネージもよく見かけます。中国では「作る」ことは得意でも、「運用」は不得手なんです。悪く言えば「やりっぱなし」という状態で業務が完了した感覚になってしまうんですね。

数字に表れたサイネージの受容

―そろそろ施策を初めて1年です。ユニクロは取得したデータをどのように活用するのでしょうか。

まずは地域別、季節別の傾向を分析します。特定人物への『適切なレコメンデーション』は次の段階として考えていますので、今回は踏み込まない予定です。

―売上には施策の結果が現れているのでしょうか?

まだ一年目とあって、正直大きな成果は現れていません。ただサイネージにふれるという「習慣」はかなり浸透したと思います。サイネージ経由のクーポンの取得数、またWeChatへの遷移数という指標には成果が表れています。

―成果を上げるための工夫にはどんな点が挙げられますか?

「キャラクターとのタイアップ」「クリスマス」など、イベントごとにサイネージ上でもキャンペーンを展開しています。

1店舗1店舗では傾向がとりづらいですが、積算することで傾向は見えてきます。今のところ右肩あがりです。

今は、コンシェルジュ機能のかなり初期段階を経験しているところだと思います。数字の伸びには、かなり今後の可能性を感じています。

―施策にかかる大まかな費用を教えてください

サイネージ1台、CMSと呼ばれるバックエンドのシステムで合計の費用が150万~200万円程度です。運用の費用はすなわち人件費なので、月に10万~20万円くらいでしょう。驚くほどの高さとは言えないと思います。運用期間にもよりますが、合計300万円弱を準備すれば実行できる施策です。

特に当社では各製品、サービスを内製して提供しているため、価格は安いと思います。

「本当のBAKE」上陸のインパクトを伝えたデジタルアート

―先日は南京で、飲食店のオープンイベントを手掛けられました。

BAKEというチーズタルトで有名な北海道発の製菓ブランドの出店イベントを行いました。同社のチーズタルトは中国ではすでに評判が高まっており、なんと出店のかなり前から「偽物」のBAKEが多数出店していました。

そこで同社では、すでに真似された商品が出ているチーズタルトではなく、「ZAKUZAKU」というお菓子をメインの商品として、出店を計画されました。

その際に仕掛けたイベントで採用したのが『カメラとモニター』です。この施策はサイネージというよりは、インスタレーション、デジタルアートの類に属すると思います。

―どんな仕掛けなのでしょうか。

カメラの前にお客さんが立つと、カメラの後ろに設置された横長のモニターに、ドットで描かれた自分が現れます。

このカメラの前で口を開けたり閉じたりすることで、モニターに映し出されたお菓子(ZAKUZAKUという同社の製品です)と自分の顔が動くようになっています。

―かなり好評でしたね。

はい、ブースをぐるりと一周するほどの列ができていました。モニターに映し出される自分を楽しむだけでなく、同行者に写真を撮ってもらっている姿もよく見かけられました。

白黒のドットで描き出された自分のビジュアルだけでなく、リアルの動きに連動するモニター上の分身のコミカルな動きがお客様の「参加したい」という意欲を刺激したと思います。

こうして撮影された体験は静止画、動画問わずSNSにシェアされているはずです。

まとめ

オフラインに設置したデジタルサイネージは、オンラインへの誘導という機能だけでなく、その「エンタメ性」「アート性」からブランディングに効果を発揮します。

ユーザーはデジタルサイネージを媒介して、「オンライン」のSNS、ECサイトに遷移することもできます。ブランドはこれら情報を収集・分析することで、より効率の良い、ユーザーにとって価値のあるサービス(商品)を展開することができるでしょう。

デジタルサイネージの施策はオンライン施策同様、「エンゲージメント」は欠かせません。そしてご紹介いただいた事例からは、エンゲージメントの獲得には「クリエイティブの質の高さ」「エンタメ」「相互作用」といった外せないポイントがあることが見えてきました。また設置するだけにとどまらない「運営」の重要性も本編を通して感じられたのではないでしょうか。

EC(ネット通販)がますます拡大していく中で、リアルの店舗の価値づけは競合との差別化を図れる恰好の機会です。

デジタルという特性からその形態は自由自在なデジタルサイネージ、オンライン施策同様、中国マーケティングで必携の施策となっていくでしょう。

 

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【インタビュー】広がるデジタルサイネージ活用(1)~人に足を運ばせるものは「オフライン」にあった~

【インタビュー】広がるデジタルサイネージ活用(2)来店価値の創出~ユニクロの事例から~