【インタビュー】中国で広がるデジタルサイネージ活用(2)来店価値の創出~ユニクロの事例から~
D2Cチャイナ近衛元博CEOへのインタビュー、本編では日本の雄「ユニクロ」の中国におけるサイネージ戦略の展開をご紹介いただきます。
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【インタビュー】中国で広がるデジタルサイネージ活用(1)人の気持ちを動かすものは「オフライン」にあった
「新小売」時代のデジタルサイネージ
―小売業界でもデジタルサイネージの存在感はやはりかなりのものなのでしょうか。
そうですね、いま「小売り」というセクションではECサイトのタオバオが強いです。オンラインが存在感を増す中、オフライン、つまり店舗の存在意義が問われています。
スマホの中で買い物が完結する世界で、足を運ぶという労力を払ってまで求められる「店舗の価値」をどのように再定義するか。今当社が果たすべき役割の一つだと思っています。
店舗のデジタル化
「店舗の価値の再定義」はデジタル化によって実現すると考えています。すでに実装済みのものもありますが、具体的には以下のような手法があります。
(1)ゲーミフィケーション
ゲーミフィケーションとは簡単に言えば「いろいろな要素をゲームにする」という意味です。事例として、入口にデジタルサイネージを設置し、そこに現れたゲームへの参加を通じてクーポンを取得するという施策を打ったことがあります。
この事例ではゲーミフィケーションにより店舗に「エンターテイメント」という価値が生まれています。クーポンという経済的なリワードだけではない、「楽しみ」という要素で新たな来店価値を創出しているわけです。
▲イベントに登壇する近衛氏
(2)レコメンド機能
二点目は消費者の望む商品への最短でのリーチを実現する「レコメンド機能」のオフライン店舗への実装です。
消費者が自由に使える時間は有限です。店舗の中の滞在時間も限られています。その限られた時間で摂取できる情報量は限られています。
「効率的に」自分の求める商品に出会えること、これもまた消費者にとっての「価値」です。アマゾンのレコメンド機能のようなものを、オフラインでどう装備するかが今後の実店舗の発展を左右すると言っても過言ではないでしょう。
レコメンド機能は顧客への価値を創出するだけでなく、店舗にとっての価値も創出します。レコメンド機能でついで買いを促す施策が実現すれば、顧客単価の向上にもつながるからです。
SNSの価値は強大、「店舗で使いたい」利用方法の提案がカギ
(3)SNSとのリンク
最後が「SNSとのリンク」です。いま中国マーケティングはSNSなしには語れません。
生活と密着し、他者との関係保持に存在感を発揮している中国のSNS。SNSを利用した「ここでしかできない」楽しみ方を訴求することは、店舗来店の価値を生み出すと当社は考えています。
(1)で紹介したゲーミフィケーションとも通ずるその「エンターテイメント」性はデジタルサイネージを媒体としてオフラインの店頭とオンラインのSNSをつなぎます。
例えばフィッティングルーム横にサイネージを設置して、映し出した自身と店舗の取り扱いアイテムなどの合成動画をその場で作成し、データを贈るシーンを想像してください。
▲店内に設置したサイネージで撮影、画像データを取得する。イメージ図(D2C「SMILE+」資料より)
購買体験をリアルタイム・自然な形でSNSに流れるようにデザインされたこの施策は、レコメンド機能同様、販売側にとってのベネフィットを備えています。ベネフィットとは「商品のSNS露出」です。
「周りの人の目を気にせずに写真をとる」中国人の特性も手伝って、SNS露出は日本と比べものにならない期待ができます。デジタルサイネージの設置は費用対効果の高いPR手法となります。
日本の雄、UNIQLOが選んだD2Cのデジタルサイネージ施策とは
―D2Cが2016年11月からてがけてらっしゃるのが、中国各地の「UNIQLO」(以下ユニクロ)の店舗のデジタルサイネージ施策です。
中国でユニクロは現状100店舗を展開、今後さらに出店を拡大していく予定です。同社からはクリエイティブに強いという理由で当社を選んでいただきました。
「データの会社にサイネージを作ってもらうと、インターフェイスが味気ないものになってしまい、エンゲージメントが作り出せない。結果として購入がとれない。」上層部でこのような判断があり、有機的なつながりを創出できるD2Cに白羽の矢が当たったのです。
―競合が多い中、D2Cはユニクロにどのような戦略を提案されているのでしょうか。
中国はアパレル天国です。まずは狭義の意味でのOtoOを仕掛けていくことが勝敗の分かれ目になります。
遠くから足を運ばせるという大きな目標は一度脇に置いて、まずは店頭付近を通りかかったお客様の足を止めさせる、店内に誘導するということ(エンゲージメント)を創出します。
競合が多い「アパレル」の分野です。「店頭で足を止めてもらう」ことにかなり価値があります。このフェーズで採用したのは「アテンションをとる」ためのサイネージと言い換えることができるでしょう。
―アテンションの先は。
「体験・体感してもらう」インタラクティブなサイネージが想定されます。その先には商品の購入も期待できます。
▲店内に設置したサイネージで撮影、WeChatのアカウントをフォローして画像データを取得する。イメージ図(D2C「SMILE+」資料より)
ユニクロでは現在「オーソドックスなPR」は辞めていく方向に舵を切っています。コストを軽減できるだけでなく、上述のようなデジタルサイネージ施策によって顧客のデータを取得することができるからです。
顧客のデータとは、興味を持った商品、滞在時間、サイネージの操作時間、WeChatへの遷移などです。ユニクロでは店舗ごとのデータを取得しています。
アテンションをとるための入口のサイネージでは、現状、こういったデータをとるようなデザインにはなっていません。ユニクロにサイネージがあり、便利で楽しいスポットであるというブランドを確立することにまず力を注いでいます。
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【インタビュー】中国で広がるデジタルサイネージ活用(3)運営の肝と新たな施策~「アート」が模倣品に負けないインパクトを生み出す~