【双十一】2017年中国ダブルイレブン振り返り(前編)キャンペーンは手を変え品を変え、従業員の採用枠発表も
中国で年間最大のショッピングイベント、ダブルイレブン(双十一)が今年も盛況のうちに幕を閉じました。
「ダブルイレブン(双十一)」とは、1990年代頃、「1」が並ぶことから中国では「独身の日」として盛り上がっていた11月11日に合わせて、アリババグループ(阿里巴巴集団)が仕掛けたイベントが始まりです。今や世界中が注目する中国最大のショッピングイベントとなっています。
この時期は台湾や香港、マカオの様々なECサイトや実店舗でもセールが開催されるようになりました。2015年からは日本のYahoo!ショッピングでも「いい(11)買い物の日」として様々なイベントを実施しているので、参加したことのある方もいるのではないでしょうか。
このように今やアジア全体を巻き込む勢いのダブルイレブン、今回はその盛り上がりについて振り返ってみたいと思います。積極的なプレセール、大手ECサイトそして店舗の怒涛のキャンペーン、驚異の売上が記録されたのはもちろんのこと、一風変わったイベントも行われていました。
※金額はすべて1元=17円で換算
参考:
11月11日を「いい買物の日」に制定!Tポイント提携先のYahoo! JAPAN、ファミリーマート、ソフトバンク、TSUTAYAによる、リアル・ネット同時展開の“お買物の祭典”を11月3日~16日に開催(参考:ソフトバンク(株)プレスリリース2015年)
台湾、香港も“双11”に向けてウォーミングアップ(出典元:新华网NEWS)
クーポンは当たり前、ダブルイレブン前のウォーミングアップに●●
中国の二大ECモールのTmall(天猫)は、アリババグループの運営するECモールです。セールの開祖でもあるアリババグループは8年目となる今年のダブルイレブンですが、10月第3週からプレセールを開始しました。
プレセールでは最高1,111元分(日本円にしてなんと18,887円!)を配布するキャンペーンも行われましたが、SNSではまた別の活況を呈していました。
自分が紹介したリンクを踏まれるとポイントがたまる、また紹介者コードを入力すると両方にメリットが与えられるといったキャンペーンのおかげで、新浪微博には続々と紹介リンクが貼られていました。
参考:
本当?!2017天猫と淘宝の双十一プレゼント最大1111元!(出典元:CCTIME)
新浪微博上では、「天猫双11潮流盛典」(Tmallダブルイレブンの祭典)が11月1日のトレンドワードになっていました。ユーザーの投稿数は12万人を記録しています。
「天猫双11潮流盛典」は、10月31日21:00から開催された天猫のコンサートイベントです。多くの芸能人が参加しその模様はネットで生中継されていました。
一方の、JD.com(京東商城)では、11月10日から11月12日まで使えるクーポンを配布し、ダブルイレブン前後の売上も増やす作戦に出たようです。
参考:
天猫のコンサートイベント
天猫Weibo公式アカウントより
京東の双十一キャンペーン紹介 京東の双11がやってきた!(出典元:京東優評)
たったの3分で100億人民元、9時間後には1000億元
いよいよ本番当日、そのスピードと規模は圧巻でした。
Tmall(天猫)の売上は、セール開始からたったの3分、11月11日0時3分に100億元を突破、そして9時間後の朝9時、1000億元を越えました。
2016年のダブルイレブン当日の1日の総売り上げが約1200億元であったことと比較すると、1年でものすごい勢いでマーケット規模が拡大したことが感じられるのではないでしょうか。
参考:
双11ネットショッピング取引額の記録更新 天猫は9時間で1000億元突破(出典元:光华网)
なんと「仕事」も大売出し
EC各社の太っ腹は物品販売面だけではありません。その「仕事」までも市場に大量放出しています。
これはどういうことかというと、人材求人サイトの「www.51job.com(前程無憂)」ではなんと「ダブルイレブンEC採用フェスティバル(双11电商招聘节)」と銘打って、タオバオ、京東、yMatou、amazon.cn(アマゾン中国)、SUNUNG(蘇寧易購)といったEC会社の人材募集の特別情報を掲載しました。今回の求人では5000人を超える大幅な雇用を見込んでいるとのことです。
参考:
双11 ECサイト採用フェスティバル(51job.com)
Tmallから「キノコストリート」まで 刻々と変わるセールイベントまとめ
各サイトでは様々なイベントが開かれ、大手ECサイトや店舗では時間刻みで様々なキャンペーンが行われていました。各社の特徴を比較するため、前編の最後で整理してみます。
TmallとJD.comは「生鮮食品」にアクセル
Tmall(天猫)
合計3週間を超える期間で、総額数億元という規模のクーポンを配布していたTmall。プレセールは約2週間にわたり開催されていました。
割引だけでなく、リアル店舗とのコラボイベントも企画されました。一例をご紹介すると、
- スキンケア、食品酒類、家具類、対象商品を1点購入で1点プレゼント
- レディースファッション、メンズファッション、雑貨を対象に割引
- 生鮮食品、購入に応じ1点プレゼント
となっています。
JD.com(京東商城)
続いてJD.comです。JD.comのダブルイレブンでの主な割引イベントは以下のような内容になっていました。
- 家電24Hセール 最大90%OFF
- 京東生鮮 199元(3,383円)購入で80元(1,360円)OFF
- 京東スーパー 199元購入で100元(1,700円)OFF
- 会員のステージに合わせ、クーポンを配布
- 2時間ごとに開催される、日用品や家電のセール
両者のセール内容を見てみると、二大巨頭のTmallとJD.com(京東商城)がどちらも生鮮食品販売の舞台で競争を強めている様子がうかがえます。
Tmallを経営するアリババグループは11月20日、「大潤発」「欧尚」といったスーパーを展開している、中国で最大のスーパーマーケット経営会社の「高鑫零售」の株式取得を発表しています。「食」といえば最も「商品の質」が重要視されるマーケットの一つです。今後ますますこの分野での競争が熾烈を極めていきそうです。
参考:
阿里巴巴28.8亿美元入股高鑫零售 持股比例36.16%(出典:中証網)
二大巨頭には及ばず? 「海外」で訴求のAmazon
amazon.cn
- QRコードを読み込むと、99元(1,683円)以上の買い物で使える10元(170円)クーポンをプレゼント
- 72時間無休で、Kindle値下げ、デジタル製品から食品や酒類、紙おむつやファッション雑貨などのセール
- 「海外ショッピングフェスティバル」…輸入品の在庫一掃セール
還元されるクーポンの額面はTmallやJD.comには及びませんが、逆に言えば消費額が小さくても優待を受けられるという見方もできそうです。
またセール時間の「72時間」も上で紹介したTmallには及びませんが、「輸入品」を前面に出し二大巨頭とは差別化を図っていることがわかります。
ファッション分野は専門ECサイトと「高品質」に存在感
「消費昇級」の起こる中国ですが衣類の購入に意欲的な女性も多く、生鮮食品と同じく成長が期待されるファッション関連のダブルイレブンでの動向を最後にご紹介します。
MOGUJIE(蘑菇街)
「キノコストリート」という意味のECサイト。若年層向けのファッションアイテムを取り扱っている。コアユーザーは18-23歳。2014年11月には月取引額が3億元を突破、年取引30億元を達成している。
- 109元(1,635円)以上の購入で使える15元(255円)クーポン、169元(2,873円)以上で使える25元(425円)クーポン、259元(4,403円)以上で使える50元(850円)クーポン
- 2品以上の購入で5%OFF、3点で10%OFF、4点購入で15%OFF
ユニクロ中国(Tmall)
- Tmall内の公式販売サイトで使えるクーポン
- 対象商品の期間限定価格(30元~200元OFF)
ZARA中国(Tmall)
- 50%OFF以上、499元(8,483円)以上の購入で使える30元(510円)値引きクーポン
- 高品質の対象商品(中綿ジャケット、ウール混のハイネックシャツなど)が半額などの限定特別価格。
クーポン、値引きは15元(255円)~200元(3,400円)と幅があり、ファッションアイテムの価格感は幅広い展開であることがわかります。MOGUJIEの価格帯ごとの割引券やZARAが「高品質」の商品をこの商戦で打ち出していることから、一般女性のファッション予算や「セールで買いたい商品」が見えてくるようです。
参考:
11日0時: 天猫精鋭 ZARA公式店による 双11ショッピングフェスティバル 半額からの限定価格 さらに499元以上購入で使える30元OFFクーポン(出典元:SMZDM.COM)
【後編】では売上数字をおさらいし、クチコミから消費者の反応を探っていきたいと思います。
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【双十一】2017年中国ダブルイレブン振り返り(後編) 近日公開