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中国を数字で見る(3)成長すさまじい中国映画市場、個人制作映画も流通

先月11月25日、台湾の国際映画祭である「ゴールデンホースアワード(金馬獎)」が決定しました。金馬賞とは、中華圏における権威ある映画の表彰式で、今年の作品賞は、楊雅喆監督の「血観音」が受賞しました。「血観音」は作品賞だけでなく主演・助演女優賞と主要3部門を受賞しましたが、このうち助演女優賞は、弱冠14歳、台湾生まれ北京育ちのヴィッキー・チェン(文淇)に贈られ、大きな話題となりました。

昨今注目を集める中国映画市場ですが、11月には中国映画市場における年間興行収入の総額が初めて500億元(約8,477億円)を突破したと報じられました。そこで今回は、拡大著しい中国映画市場に関する数字を見ていきたいと思います。

参考:
14歳のヴィッキー・チェンが助演女優賞を受賞 涙の謝辞(出典:中央通訊社) 中国語
中国映画市場、初めて500億元を突破!「ウルフ・オブ・ウォー2」など国産映画が盛況―中国(出典:エキサイトニュース)

すさまじい成長を見せる興行収入、既に北米の7割に迫る

中国の映画興行収入から見ていきましょう。

映画興行収入の成長グラフ

「映画情報のデータマーケティングプラットフォーム(http://t.qq.com/dianyingzixunshu)」のデータより

2017年は第3四半期までですでに427.1億元となっており、前年の同期間と比べて20.49%も増加しています。また11月には、いよいよ500億元を突破したと報じられました。2007年には国内の映画興行収入が33.27億であったことを考えると、その成長率のすさまじさが理解いただけるのではないでしょうか。

他国と比較してみると、2016年の段階ですでに北米映画興行収入の70%日本の3.3倍に達しています。

また、興行収入増加に比例して映画館やスクリーン数も増加しており、その上昇率はきれいなカーブを描いています。

映画とスクリーン数の成長グラフ

「映画情報のデータマーケティングプラットフォーム」のデータより

2011年には2,800館9,286スクリーンだったのに対し、2016年にはなんと8,817館41,179スクリーンとなり、2017年には国内映画館の数がついに1万館を超えました。これは、北米のスクリーン数を抜き、堂々の世界1位を誇ります。

2007年には3,527スクリーンであったことを考えると、やはりその成長はすさまじいと言えるでしょう。

参考:
映画スクリーン数が北米を抜く、中国映画市場が成長の「高速道路」へ(出典元:新華網)
2017年中国映画産業における興行収入と発展についての分析(出典元:中国映画網) 中国語

中国映画興行収入の変遷 33億元から450億元までの激しい快進撃(2007-2016年)(出典元:每日头条) 中国語

中国に現れた、もうひとつの「大型」娯楽

中国国内でも大きな規模を誇る総合映画サイトの「Doubanムービー(豆瓣电影)」には「評価人数が10万超の作品ランキング」が掲載されており、作品数は何百にものぼります。ここで上位をご紹介したいと思います。

1位は「ショーシャンクの空に」(1994)で、あと少しで100万人に手が届く915,544人からの評価がされています。本作品は、Doubanムービーの評価数によるTOP250でも堂々の1位で、その評価は10点満点で9.6でした。ちなみに中国国内(香港含む)映画の中で1番評価の高い作品は、全体第2位のレスリー・チャン主演「さらば、わが愛~覇王別姫」(1993)でした。

参考:
評価人数が10万人を超える映画(人数によるランキング)(出典:douban) 中国語
豆瓣电影 Top 250 (出典:豆瓣电影) 中国語

このように、映画は中国における大型娯楽の1つとして成長していますが、中国には映画に似たもうひとつの「大型」娯楽があります。それは「网络大电影」と言われる、ネットで公開される個人制作のオリジナル作品のことです。2014年に誕生して以来、2015年に話題になり2016年にはその人気が爆発しました。そして、2017年までには3,000本も配信され、その市場規模はなんと30億元とも言われています。

個人制作映画の公開プラットフォームである「爱奇艺(iQIYI.COM)」によると、2017年5月までに興行収入が1000万元を超えた作品は4本あり、興行収入は去年の同時期の4倍になっています。その中でも1本あたりの最高額が2,300万元になった作品もあり、これはなんと2016年全体の興行収入よりも高いとのことです。

クチコミ評価の高いものを少し紹介すると、爱奇艺サイト内での評価が7.5の「虐心爱情故事之欲爱(SMラブストーリー 欲愛)」は、少し過激なシリーズ物のラブストーリーで、すでに9作以上制作配信されています。ネットでも「感染力が強くていい!見ているネット民も多いみたい!」などのクチコミもあります。

同サイトでこちらも7.5の評価を得ている「笔仙大战贞子(こっくりさんVS貞子)」は、中国のこっくりさんと日本の貞子を戦わせるというホラー映画で、11月に2作目が配信されると当日中に再生数一千万回を突破し、すでに3作目の製作が開始されているとのことです。

まとめ ホームシアターで映画がさらに身近に

昨今中国では電化製品も手ごろになっていることから、大型テレビや高品質スピーカーを買いそろえ、自宅を映画館さながらにして上記のような個人制作映画や過去の名作を楽しむ人が増え始めているようです。

中国国内の映画インフラが整い、手軽に近所の大型スクリーンで映画を見ることができるだけでなく、自宅でも映画鑑賞を楽しむ人口が増えていることで、映画は中国ではより身近なエンターテイメントとなっています。映画産業の成長は緩やかになったと言われますが、まだまだその成長からは目を離せません!

参考:
大型作品に負けない!国内ネット配信映画を発掘 2017年には3000本超え(出典元:Sina新聞) 中国語
品質向上へ グレーゾーンのネット配信映画もシフトチェンジ(出典元:Sina科技) 中国語
8大傾向からみる、国内ネット配信映画の現状 2017年には新時代に突入(出典:人民网) 中国語
爱奇艺 网络大电影(出典: 爱奇艺 ) 中国語
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