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【セミナーレポート】中国事業のチャンスとリスクを徹底解剖!(2)シェアリングエコノミーから見るNB-IoT

中国トレンドExpressで月1回行っているセミナー。会員様限定でお送りしているセミナーレポートの第1回では、中国の今を知ろうと、2017年の中国における商品やサービスの新しい動きについてご紹介しました。

第2回では、シェアリングエコノミーから見るNB-IoTと題し、昨年から急成長を遂げた中国のシェアサイクル市場で、実際に何が起こっているのかを詳説します。


シェアサイクル市場の動向

ここ数年、AirbnbやUberなど、世界的にシェアリングエコノミーが広がりを見せています。中国でもその流れは例外ではなく、代表的なものとして、シェアサイクルの例が挙げられます。中国の都市の街角を歩いていると、地下鉄の駅の出口や商業施設のエントランス付近に所狭しと並べられた、黄色やオレンジ色の自転車が目につきます。

これは何かといえば、中国を代表するふたつの会社「mobike(摩拜单车)」と、「ofo(小黄车)」が管理・運営する貸出自転車です。ユーザーは使用したい自転車のQRコードを専用アプリで読み取ると、スマホ決済にて解錠して乗れます。返却時は好きなところで駐輪場に停め、施錠するだけです。

こうしたシェアサイクル市場は2016年夏以降中国全土で急速に展開され、今ではこのmobikeとofoの2社独占状態となっています。時間貸で、30分~1時間単位の価格が0.5元~1元と安く、この2社以降は、他が同様のサービスで参入しようにも価格競争の消耗戦が続き、淘汰されているのが現状です。特にクーポンなどの配布が多く、すぐに割り引かれるため、毎日のように使っていてもひと月で10元いくかいかないか、というほどの価格帯となっています。

これらのシェアサイクルに使われる自転車も実に様々で、通常の自転車に加え、電動アシスト付きのものや、ペダルがなくすべてが電動のスクーターに近いような形状の自転車まで出てくるようになりました。そして電動で動くものについて、ライセンスや登録なしに自由に乗れるのは危険であると、一部の都市が規制を始めました。

試験的に導入されてから、わずか半年~1年ほどで「投資→展開→流行→浸透→規制」というサイクルが回っているこのスピード感には目を見張るものがあります。

中国のシェアサイクル

 シェアサイクルに見えるIoT

このシェアサイクルサービスで特筆すべきは、このサービス自体が新しいということではなく、そのフォーマットによって新たな価値を生み出していることにあります。ofo(小黄车)のケースでは、当初ダイヤル式ロックだった解錠が、Bluetooth通信での自動解錠に変わりました。そしてこれが、NB-IoT対応のスマートロックへと、現在テスト展開が開始されています。

アプリとサーバが通信して自転車の鍵をコントロールしているため、従来の2GSIMでは電池消費量が多く、バッテリーが課題でした。これが今後はNB-IoT(5G)で解決され、また中国全土でこのサービスが展開されていることから、世界初のNB-IoTの大規模展開になると注目されています。

しかし、自転車の貸し出しそのものは、さほど大きな利益を生むビジネスではありません。何よりも、こういった新たな移動手段の獲得によって人がどう動くかが可視化されることが大きく、これが新たなビジネスを生むのではないかと期待されています。

人がシェアサイクルを使えば、GPSとSIMとがついているため、ユーザーがどこへ行ったかといった情報が集約されます。またもうひとつ、人が移動できる手段を提供することで、新たな人の流れができます。これが、今まで公共の交通手段でアクセスしづらかった場所への集客や、あるいは移動そのものがビッグデータとして新たな価値を生むのです。

新中国経済を牽引する新世代

シェアサイクルの二大巨頭mobike(摩拜单车)とofo(小黄车)の2社に見える特徴としては、経営者が80后、90后と呼ばれる1980~90年代生まれの、つまり20代~30代の若い世代であるということです。

中国経済はすでに「旧中国」「新中国」とに分かれていると言われます。前者は従来のイメージのように人脈や共産党との繋がりを重視した、ウェットな関係のあるビジネスモデルで、業種によってはまだこれも必要とされています。

しかしITやモバイル業界では、上記2社の代表のように若い世代による「新中国」と呼ばれるスピード感のあるビジネスモデルが主流です。彼らは例えば留学経験があり、また中国の大学で修了して、海外の大学でも修士号を取るというダブルマスターの人材も増えています。アメリカのシリコンバレーでの経験や知識を中国に持ち帰って起業している、といった形で、新しい中国ビジネスの確立に大きく貢献しています。

中国発となるトレンド

中国で近年始まった同様のシェアリングビジネスとして、雨傘のシェアリングの例があります。公共施設の出入り口付近などに傘立てが置かれて、アプリで決済をした後に借りられるものです。これは返却率が悪いイメージがあり、そもそもビジネスとして成り立つのか疑問に思うかもしれません。

しかし、このアプリの秀逸なところには、「買う」という機能がついており、返却しないで使いたい場合には購入もできます。また、一定期間の返却がなければ、紐づいた口座から自動的に購入代金分が引き落とされます。

これは必ずしも返ってくる必要のないシェアリングであり、新しい販売の形にもなっています。つまり「借りる」という入り口を設けることで消費者に商品を体験させ、それを購入に繋げる、といった形です。

もう一つは、業務を行う場所のシェアとして、カフェのようなコワーキングスペースが北京と上海で増えています。アメリカに本社を置くWeWorkも、2018年にようやく東京で開設される日本より先に、中国(北京と上海)に上陸しました。また、中国人が代表となるコワーキングスペース提供会社URWorkや、中国人と日本人の共同経営であるXnodeといった中国勢の成長が続いています。

そしてこれは日本企業にとってもメリットで、中国で何か新しい事業を行いたいが、出資あるいは技術提供といった形で合弁をしたいといった企業にとっては、こういった場所を活用するチャンスが増えている、と考えられます。

これからのチャイナtoジャパン

こうした新しいビジネスモデル、例えばシェアサイクルであったり、コワーキングスペースであったりといったものは、中国がまず先に行ない、それが日本へ、というように流れが変わってきています。従来は日本でヒットしたものを中国へもっていくことが大半でしたが、今後はこのようにチャイナtoジャパンのビジネスモデルが展開されやすくなるのではないかと見られています。

そしてこうした「新中国」とのビジネスにおいては、従来の中国ビジネスにおけるイメージを捨て、彼らのスピードに対応することが重要です。アプリであったり、NB-IoT対応の新技術であったりといったもので、日本に持ち帰れるものを早めに取り入れていけば、新たなビジネスチャンスが日本でも広がるのではないでしょうか。

次回は、スマホ決済が主流となっていく中で興隆したトークンエコノミー、そして越境ECの現在を考察し、中国において日本企業がこれから成功するためには? といった点についてお伝えしたいと思います。

▼近日公開
【セミナーレポート】中国事業のチャンスとリスクを徹底解剖!(3)トークンエコノミーとECのこれから~日本企業が成功するには?~