【セミナーレポート】双十一の振り返りと2018年春節対策(2)~中国人消費者の変化に基づいた戦略とは
中国トレンドExpressで月1回行っているセミナー。12月は「双十一の振り返りと春節対策! 売上を拡大した事例から探る中国で有効なマーケティング手法とは?」と題し、2017年の締めくくりとして、中国最大のECサイトイベント《双十一》を振り返りました。
会員様限定でお送りしている本セミナーレポート、(1)は2017年双十一の総括として、5つの特徴をお話しました。今回は、双十一がこんなにも盛り上がる理由と、それを踏まえた上での戦略についてご紹介します。
中国の双十一が盛り上がる4つの理由
双十一が盛り上がる背景には大きく分けて4つ理由がありますが、まずは急速化するEC化、モバイル化の波がそのひとつとして挙げられます。
中国のEC化は諸外国と比べても近年急速に発展しています。2008年の北京オリンピックを境に、インターネット関連のインフラも整備され、一気にアクセスしやすくなった、という背景があります。また、アリババ社などの展開するキャッシュレス決済が成長してきた点も見逃せません。今や財布を持たずとも生活できるようなスマホ決済の普及によって、中国の消費社会が変化しつつあります。
また、購入時の利用端末についても、2012年の段階ではPCからの購入がほとんどを占めていますが、2015年にPC/モバイルの比率が逆転、翌2016年にもモバイルの比率がさらに増加しています。
2017年の双十一では、モバイル端末からの購入率は90%を超えました。どこにいても手軽に購入が可能であることからどんどん普及してきている、という点がわかります。この手軽さが、ECサイト躍進に一役買い、さらにこうしたECサイトの祭典を盛り上げている一因だと言えます。
第2の理由としては、消費イベントが大好きな現代中国の文化背景が挙げられます。経済的に発展してきたものの、全体としてみればまだ娯楽が少ないと言われる中国においては、消費行動そのものが娯楽となります。また、自分の好きな会社やサイトを応援する文化があり、自分たちの消費活動によって好きな会社が売上を伸ばしていくことが楽しい、といった心理があります。企業側もそれを刺激するために自社のサイトに売上高を掲出したり、双十一でのランキングを大きく広告したりします。
第3の理由としては、物流網のハイスピード変革が挙げられます。双十一で購入した翌日には、その商品がスペインに届いていた、という話があるほど、物流のスピード感は高まってきています。物流コストが安いため、様々な階層の消費者が利用することから、物流への関心度や注目度は高く、また同時にクオリティも求められるようになりました。
そのクオリティの向上に一役買ったのが、テクノロジーの進歩です。京東の例で言えば、ビックデータを活用し、特定の地域である商品が売れそうだとわかると、事前にそこへモノを集め、注文と同時に発送出来るよう準備されています。2016年頃までは遅配や商品間違いなどの配達に関するクレームが多かったのですが、2017年はデータ活用などにより配送の正確性が増し、そういったクレームは激減したと言われています。
最後の理由として挙げられるのは、越境ECの普及とグローバル化です。
中国人消費者は国内製品をあまり信用しない傾向があり、ブランド品や電化製品などは海外のものを購入することが多いです。安全・安心面からは日本の商品に人気が集まり、おしゃれさやデザイン性は欧米ブランドに求めます。越境ECによって、こういった海外製品が手軽に、安く購入できるようになったという点は、双十一が盛り上がる大きな理由のひとつと言えるでしょう。
双十一、2つの戦い方
それではここから、実際の双十一の戦い方について考えていきたいと思います。双十一の戦い方として、まずは2つの方法に大別できます。
- PR販促型
- 在庫処分型
双十一は、売り上げとしては大きく伸びる可能性がある一方で、利益率は低くなります。というのも、キャンペーンで値下げをすることで、単純に商品の単価が下がるからです。それに加え、双十一で売るためのプロモーションを大々的に行うことで、広告費が相当かかります。
①のようなPR販促型の場合、この双十一での売上に関してはもとより広告費としてとらえている企業がほとんどです。利益率はそこそこに、まずは自社商品を安く手に取らせることが目的です。新商品や、値段の高い高品質商品を、安く購入して試したり、知ってもらったりしてその後の知名度や売り上げにつなげる、といったプロモーションの一環としています。
②の場合、これは特にアパレルなどに多いのですが、双十一を在庫一掃セールとして、売れ残った商品等を安く売りさばく、といった方法です。どちらがより前向きな戦略かと言えば一目瞭然で、①のほうが双十一以降の売上にもつながります。安くても、人気のないものであればわざわざそれを買うことはない、と、②のような売り方をされる商品は敬遠されてしまう危険性もあります。
変わりつつある消費者感覚、「指名買い」が主流
UNIQLOなどは、今年も強気な戦略をとり、双十一においても値下げをほとんどしないといった方向に踏み切りました。近年の傾向として、「商品さえよければ値段が多少高くても購入する」といった消費者が増えてきたからです。
最近のネットショッピングの傾向は、従来の、まずECサイトに入ってそこからよさそうな商品を探し購入する、といったパターンよりも、他の媒体や口コミで商品を知り欲しくなり、ECサイトで検索して購入する、といったいわゆる「指名買い」が増えてきました。そして、普段のなんでもない日よりは双十一で自分へのプレゼントにしよう、とリストに保存して、双十一を待つのです。
このことから、すでに知名度のあるブランドや、商品そのものに力のあるブランドは、双十一だからといって大きな値下げをあえて行わなくてもしっかりと売れる、といった現象が起きています。
まとめ
上に見てきたように、急速なモバイルの普及や物流の発展によって越境ECサイト全体が高まりを見せ、そのうえで双十一は大きな消費イベントの代表として盛り上がるようになりました。
中国の消費者の間では本物志向、つまり高くても良いものを、むしろ値段に裏打ちされた良い商品を購入したい、といった欲求が高まってきています。従来、日本の商品は品質が良いものの、高くて買わないといった傾向がありましたが、この本物志向の高まりに乗じて、値段相応の高品質をプレゼンテーションしていけば、それが中国人消費者にも受け入れられる時代になった、と言えるのではないでしょうか。
次回は、双十一で成功した企業を例にとり、そのプロセスから、双十一の戦い方の具体的な戦略についてお話していきます。
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