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中国女性のお悩み相談室(2) ~“ストレス社会”に生きる中国の女性たち~

「ストレス」社会。その言葉はすでに日本の専売特許ではなくなっており、中国、特に大都市の女性は多くのストレスに囲まれた生活を送っています。

今回の特集は、そんな中国の女性たちがSNS上にアップした言葉から、中国の女性たちにのしかかる「ストレス」について探っていきます。

SNS上から集計した中国女性の悩み

グラフを見てみると、お悩みの大分類においては「ストレス」が第1位。中国の女性たちは常に何らかのストレスを抱えていることがデータからも明らかです。

では、彼女たちはどんなことにストレスを抱えているのでしょう?その原因を見ていきましょう。

仕事の悩みは日中共通?

【グラフ】中国女性のストレスの原因

【グラフ】中国女性のストレスの原因

上のグラフは「ストレス」というキーワードとともに呟かれた言葉。すなわち「ストレスの原因」です。

1位の仕事については今後じっくりと見ていきますが、中国では女性の社会進出・起業という面では日本よりも進んでいるという印象があります。特に北京や上海の大企業では、女性管理職も決して珍しいものではありません。

高学歴、有能な女性も少なくなく、10年ほど前には「白骨精」という言葉もネット上で流行しました。「白→ホワイトカラー」、「骨(骨干)→中心的存在」、「精(精鋭)→エリート」という意味で、つまりはバリバリ仕事をこなせる優秀な女性のこと。

近年のネット上ではこうした優秀な女性を表現する言葉も、職場でも家庭でも優秀であることや、起業家としての成功などの要素が加わり、「女強人(英語ではIron Ladyなのだとか)」といった、やや物々しい言葉でとらえられるようになりました。

もちろん「女強人を目指すわ!!」という女性も多い反面、同時にそう呼ばれることを喜べない女性もいるようで、「真面目に仕事していただけなのに“女強人”って思われている…」や、「え、アタシこのまま“女強人”になっちゃうのかしら」という声も聞こえてきます。

とはいえ、職場の悩みと言えばやはり人間関係。同僚や上司とのコミュニケーションに悩む女性も多いようです。

「部下に若い子が入ったんだけど、使えない」といった日本でもよく聞かれる悩みから、「同僚が、不動産を買ったかどうかや、旦那の仕事や給料を根掘り葉掘り聞いてくる!」など、中国ではよくある悩みなど様々です。

若い女性とみられるユーザーは「接待の場所に呼ばれてセクハラを受ける」といったストレスも抱えているようです。日本などではセクハラ、モラハラが社会問題となっていますが、中国の地方都市ではいまだ色濃く残っていると言われており、やはり職場における大きなストレスとなっています。

悩んでいる女性 イメージ

懐かしの「成田離婚」?! 女性を悩ませる夫婦関係

また3位に入った「夫婦」というのも重要なキーワード。近年中国では離婚率が30~40%台と比較的高水準なのです。

【グラフ】中国の結婚組数と離婚組数、離婚率の変異

【グラフ】中国の結婚組数と離婚組数、離婚率の変異

かつては政府の「不動産購入制限」を逃れるための一時的な離婚もあったのですが、昨今は90后など、新世代の夫婦による離婚も増えています。

その理由の多くが「性格の不一致」と「不倫」、端的に言えば「感情のもつれ」です。1人っ子同士の結婚では、夫婦間で喧嘩になった場合の譲り合いがしづらく、さらに最終判断が早いため、離婚率の上昇につながっているとか。

参考:
离婚率赶超欧美,中国人的婚姻出了什么问题(出典:网易新闻) 中国語
中国”粗离婚率”一路走高 并非每个都要”劝和”(出典:网易新闻) 中国語

【グラフ】中国離婚率の高い都市TOP10

【グラフ】中国離婚率の高い都市TOP10

身近な「〇〇」がストレス元??

また非常に面白いのが、6位に「母親」という回答。そして9位に「父親」という回答が入っている点です。

両親から受けるプレッシャー、中国における両親と娘のトラブルと言えば…、やはり「結婚」という話題になるでしょう。

Weibo上には「母親によるお見合い攻勢」についての書き込みが多くみられます。特に帰省する春節シーズンは、同時にお見合いシーズンでもあります。

最近は中国でも晩婚化が進んでいますが、「剰女(聖女と同音ながら、“行き遅れ”的な意味合い)」という単語が現れ、先の「女強人」とワンセットになって利用されることもしばしば。

ただ、中国の場合、自身で一定のキャリアを築き、高い収入を得ることでようやく生活が保障されることもあり、「生活のために、今の仕事と自身のキャリアアップで恋愛どころではない!」という書き込みも高い頻度で出てきます。中には「私はキャリアアップを目指すわ!剰女で何が悪い!!」という、開き直りとも受け取れる言葉もありますが、それでも家庭を持つということへの希望と現実(主に経済面)の間での悩みがストレスになっているようです。

またそんな適齢期の娘、息子の悩みを知ってか知らずか、子供たちが結婚しないことに業を煮やした母親同士が、子供の情報を交換し合う場などもあり、現実で戦う若者と、早期の結婚を望む母親との間でバトルが続いているようです。

ちなみに「母親」というキーワードは「母親が悩み」というタイプ以外に、「母親としての悩み」とも理解することができます。

後者は比較的わかりやすく、母親として子供の教育やしつけ、健康管理にプレッシャーを感じるもの。総合的に見ても、女性の悩みの中で「ストレス」、「健康」に次ぐ多さとなっており、これも徐々に深掘りしていこうと思います。

余談ではありますが、前述の「母親」との回答6位と「父親」との回答9位、その間にあるものは?という疑問があります。

両者を隔てているのは「体重」と「ダイエット」。つまり「母はダイエットより強し」、「ダイエットは父より強し」といったところでしょうか?

中国の女性たちにとっての「父親の重要度」が垣間見えます。

こうした心理的ストレスの向け先とは?

では、中国の女性たちはどのようにそのストレスを緩和しているのでしょうか?Weiboの口コミから探ってみました。

まず一番は「食べる!」という回答。また「ショッピング!」、「旅行」といった書き込みも多く、女性のストレス解消が中国の消費を強く押し上げているかのような印象も受けます。

また人気なのがスポーツ。特にジムでのトレーニングやランニング、そしてヨガ(ホットヨガ含む)などは大都市のホワイトカラーを中心に人気が高く、大都市の商業施設内にはジムチェーンが多く展開しています。

さらに近年はこうしたストレスをソーシャルゲームで発散させる女性も増えています。昨今、日本のメディアでも多く紹介されている「旅かえる」のヒットは、職場における上司や同僚、夫婦間、親など、多くに人たちからの「干渉」を受けている女性たちに、自由気ままに旅に出るカエルの姿に自身を投影させるというお手軽な現実逃避がウケたせいかもしれません。

次回は中国女性の「美容」の悩みについて深掘りしていきます。