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Weibo VS Tik Tok 中国SNSの開祖と新進気鋭音楽共有APP 仁義なき戦い勃発???

中国での人気SNSといえばWeibo、そしてモバイルを中心に展開しているWechatが知られており、少なからぬ日本の企業でもこれらを使ったプロモーションを展開しています。しかし昨今、その2強時代を揺るがしかねない新たなSNSアプリが登場し急成長。ついに2強の1つとバトルを展開し始めた?とのウワサが。今回はその騒動を分析します。

 

 

今、中国の若者を中心にユーザー数が急拡大しているSNSがあります。

その名は「抖音(douyin 英語名:Tik Tok))」。

2016年9月に提供を始め、わずか1年足らずで中国のAppダウンロード数トップに躍り出た、バケモノ級のAppです。

このApp、いわゆる「音楽動画コミュニティ」と呼ばれるもので、自身の撮影したミュージックビデオをアップし、共有していくというもの。主に20代の女性が有名楽曲に合わせて、口パクで面白パフォーマンスをしたり、美声を披露したりと、元来の表現欲を十分に発揮し楽しんでいる様子です。

また、ある美食動画クリエイターは、自身の作品を60本ほどTik Tokにアップしたところ、52万人のフォロワーを獲得。飲食店の広告まで転がり込んできたとか。

あるモデルはTik Tokにアカウントを開設してから4~5か月ほどで48万人のフォロワーが集まり、引き続き動画作品をアップし続けています。

同サイト、すでに日本にも上陸を果たしています。こちらもじわじわと人気を拡大させ、ユーザーも増加中です。

しかし、そんなTik Tokですが、3月に入りあるトラブルに見舞われています。それは「Weibo上で動画が拡散できない」というものです。

「抖音(douyin 英語名:Tik Tok))」

検索サイト「百度(バイドゥ)」でもWeiboの対応にユーザー投票が行われている

可愛さ余って憎さ? 蜜月から対立へ

発端は3月10日、多くのTik Tokユーザーが、Tik Tok上の動画をWeiboに転載しようとしたところ、「自分は見られるが、転載できない!(Tik Tokの情報が自身のWeiboアカウントのホーム上では確認できるが、他者が閲覧できない)」という声を上げたことがきっかけでした。

中国のSNSユーザーは、新しいApp情報や使用感、さらに面白い動画などをWeiboやWechatで拡散することに楽しみを感じます。しかし、それが急にできなくなったことで、「すわ、WeiboがTik Tokを“封殺”か?!」と騒ぎ始めたのです。

もともとTik Tokが広く世に知られたのは、2017年3月。Tik Tok上で、中国の「相声(漫才)」役者・岳云鵬のモノマネで人気を集めたブロガーが、岳云鵬本人のWeiboで「いいね」とつぶやかれたことからでした。

これによりTik Tokは一気に注目を集め、またWeiboはこのことで中国SNSとして「未知の流行を作り出す」というパワーを見せつけたのです。

そう、両社は「蜜月」状態だったのです、この時点では。

しかしこの結果、Tik Tokを知った多くのWeiboユーザーがTik Tokでアカウントを開設。またTik Tok側も多くの有名アーティストやアイドルなどのアカウントを呼び込み、勢力を拡大させました。

それを見たWeiboは、「ユーザーを奪われた」と感じたのか、自身の地位に不安が生じたのか、2017年8月に自社でTik Tokとほぼ同じ内容のサービスを開始。このころから、両社の間に亀裂が入り始めたとみられています。

発端は広告費? Weiboに立ちふさがるのは

この戦い、一部の中国メディアは「ユーザー獲得だけではない」と見ています。

中国メディアが注目しているのは「広告戦略」。

Weiboは中国におけるSNSの開祖ともいえる存在として君臨してきました。

その登場から現在に至るまで、文字による表現・拡散からショートムービーなどの動画へと、ユーザーの興味やニーズは大きく変化してきました。Weiboはそれらに上手に対応し、現在の地位を保ってきたのです。

そしてそのために、「中国SNSマーケティング」の必須ツールとして企業からも注目され、広告収入へとつなげてきたという経緯があります。

そのなかで消費者の興味が動画に向いたことは非常に大きな転機を生みました。「動画広告」というものが大きく注目されたのです。

Weiboはこの動きに素早く対応し、「網紅(ワンホン:インフルエンサー)」を世に生み出しました。その結果、動画広告収入が2017年第1Qで前年比50%増という伸びを見せています。

そして今後も動画広告に力を入れていこうとした、まさにその時、Tik Tokが姿を見せた形になったのです。それも、皮肉なことに、Weibo自身の持つSNSの拡散力の強さによって。

Weiboとしてはまさに出鼻をくじかれ、さらに自身の王者としての地位を揺るがされるように感じたのではないでしょうか。

さらに追い討ちをかけるかのように、「小紅書(Red)」にファン・ビンビンがアカウントを開設。大物女優のコスメKOL化により、そちらへのユーザー流出の懸念。また、企業の広告出稿までそちらへ流れる可能性も…。

今回、WeiboがTik Tok情報の転載を「封殺」しているのは、そんな焦りからではとみられています。

WeiboによるTik Tok封殺騒動。現時点では解消されていない様子。今後の両者、そして中国のSNS業界の動きに注目です。