中国女性のお悩み相談室(4) ~中国女性の健康管理は?~
シリーズでお届けしている中国女性のお悩み相談室。前回は女性たちの「お化粧」に関するお悩みを紹介しましたが、4回目となる今回は、中国の女性の「健康」に関するお悩み。
まず下のグラフを見てみましょう。
今回の調査では「体調」と「疲れ」の2つのキーワードでWeibo上の口コミを調べてみました。このお悩みは、全体の約2割を占めており、中国の女性たちが抱える悩みの中でも大きな比重を占めていることが見て取れます。
【グラフ】
女性ならではの体調、疾患
では、健康に関するお悩みの具体的な内容を見ていきましょう。
【グラフ】中国女性、体調に関するお悩み
(1)女性にとって毎月の悩みが…
結果を見るとやはり女性にとっては「生理(生理痛)」に対する悩みが上位に入っています。またこの悩みは後述する「疲れ」に関する悩みにも登場しており、女性にとって深刻な悩みになっているようです。
こうした悩みに、日本の商品が注目されています。
WeChatで日本商品を紹介する公式アカウントでは「ドラッグストアで買うべき商品」として「イブクイック」など、日本の頭痛・生理痛の薬が買われています。
これは薬の効果(即効性)ももちろんながら、体への副作用が少ないといった点も高評価につながっているようです。
こうした「痛み止め」関連では、まだランキングには現れていませんが、近年は興和株式会社の「エルペインコーワ」も、Weibo上で紹介されています。「日本で唯一の生理痛専用薬」というキャッチが中国消費者に刺さったようです。
さらに現在注目すべきが、花王の「蒸気の温熱シート」。こちらもランキングにはまだ登場していませんが、体を温めることで生理痛の緩和効果があることから、すでに日本国内のソーシャルバイヤーたちが中国向けに販売を始めている模様です。
また、生理痛の悩みだけではなく「生理不順」も現代中国人女性の悩みになっているようです。
もともと北京や上海などの大都市は、変化のスピードも速く、また競争も激しいストレス社会。さらに物価の上昇、子供の教育、不動産購入、また病気になった場合の治療費など、常に本特集のメインテーマである「悩み」を抱えた生活を送っていますが、それが女性のホルモンバランスにも影響を与えているようです。
こうした女性ホルモンを整えるという面で、日本の漢方をベースにした薬が注目されています。その一例が「命の母」、「命の母ホワイト」です。
両商品は日本の漢方技術を用いた女性向けの医薬品で、ソーシャルバイヤーを中心に中国へ紹介され、人気となった商品です。
なかでも「命の母ホワイト」は対象が20代~40代と、まさに中国社会の中心で活躍する女性に適した配合であることから人気が続いており、SNS上でもソーシャルバイヤーたちが継続的に宣伝を行っています。
「命の母ホワイト」のランキング推移
(2)女性をむしばむ「癌」への恐怖
さて、具体的なお悩みの中で注意が必要なキーワードが「子宮」、「乳腺」というもの。首をかしげる人も多いかもしれません。
実は近年、中国では女性の癌が増加傾向にあります。WHOの調査では、中国における乳がん患者は5年間で3倍、また子宮頸がんに関しては年平均13万人の増加と言われています。
こうしたなか、女性特有の癌についての意識が高まっており、今年の「三八婦人節(3月8日の国際婦人デー)」でも女性向けにがん検診を進めるイベントや報道が見られています。
また近年流行している日本で健康診断を受けるメディカルツーリズムにおいても、男性・女性を問わず、PET-CTなどのがん検診を希望する中国人が数多くいます。
活躍する女性たち。でもやっぱり「疲れる」時も…
会社ではバリバリのキャリアウーマンとして、そして家庭ではよき母として活躍する中国の女性たち。頼もしい存在ではあるのですが、やはり疲れはたまるもの。
続いては中国の女性たちの「疲れ」に関する悩みを見てみましょう。
【グラフ】中国女性の「疲れ」に関するお悩み
トップに来ているのは「お肌」、「ビタミン」、そして「貧血」でした。
疲れが表面に出てくるのはやはり肌荒れ。それを改善するためにはビタミン補給、といったイメージでしょうか。また真ん中あたりに登場する「コラーゲン」も、疲労からダメージを受けた皮膚を整えるという目的があるようです。前回紹介したように、日本のビタミン剤は非常に人気が高く、男性、女性を問わず購入につながっています。
貧血の改善には、中国では古くから「枸杞(クコ)」や「棗(ナツメ)」の摂取が知られており、前者はお茶やおかゆに混ぜて、後者はドライフルーツにしたものや伝統スイーツにしたりされています。
近年は日本のDHC「ヘム鉄」サプリや、小林製薬の「ファイチ」などが、主にソーシャルバイヤー経由で販売されているようで、中国消費者の興味が向けられつつあるようです。
また「むくみ」に悩む女性も多いようです。
目元の疲れを癒し、むくみを取る商材としては、日本の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」がECサイトにおける人気商品となっています。
また健康サイトやWeiboなどのSNS上では「日本の女性のむくみ除去マッサージ」というタイトルの動画が掲載されていました。
座り仕事が多いキャリアウーマンも数多くいることから、今後はこうした「足のむくみケア」商品などもニーズがありそうです。
まとめ
女性の体調管理に関する商品を見てみると、痛み止めのような一般的な薬も人気ですが、
上述の「枸杞(クコ)」や「棗(ナツメ)」のような、漢方知識での改善がネットやSNSで紹介されています。「命の母」の人気の理由も漢方商材であることが大きいようです。
もちろん中国でも女性向けの漢方商材は販売されているのですが、味や効果の部分で評価が高くないこと、また漢方薬局で処方される場合も昔ながらの「煎じ薬」で手間がかかることなどの不満があるようです。
日本ではこうした漢方技術を用いた女性向け商材が多くありますが、現時点では中国消費者に知られているのは一部にとどまっている様子。上手に情報発信を行っていけば、悩みを抱える女性消費者に刺さる可能性は大きいように思われます。
余談ですが、もともと中国では「体を冷やす」ことに非常に敏感。訪日観光客も日本のレストランやカフェで、冬でも氷入りの水が出されることに「驚いた」、「馴染めない」といった意識を持つ人が多くいるようです。中には「お湯をお願いしてもお店から断られた」といった、ややネガティブな意見が時折見られるなど、訪日観光客に対する満足度にも影響するケースがあります。
インバウンドにおいても中国女性の体調に関する悩みと意識を知っておくこと、そしてそれに対する心遣いは、「おもてなし国家」を掲げる日本にとっては非常に大切なことといえるでしょう。
▼参考