中国政府も構造改革! 工商局から「市場管理総局」へ
今年も中国の全国人民代表者会議(全人代)が行われ、いろいろと新たな施策が打ち出されました。前回は個人所得税に関する改革についてご紹介しましたが、3月22日付で今度は行政機構の改革が報道され、注目を集めています。それは「工商局の廃止」です。
これまで中国は、国内で活動する企業およびそのビジネス活動を管理するため「国家工商行政管理総局」という機構を設けていました。中国ビジネスに携わった方ならだれでも一度は聞いたことのある「工商局」という組織です。
この組織は各地方にも備わっており、会社の設立や商標の登録など、多くの場面で目にする、耳にする部門でした。
しかし、「その名称が消える」という報道がなされたのです。
〇〇無き構造改革!
これは中国のいわゆる「構造改革」の一環。工商局はその名前を「国家市場監督管理総局」と名前を変え、かつこれまでいくつかの部門に分散されていた機能を集約していくとのことです。
まず国家工商行政管理局のすべての機能は、新しい「国家市場監督管理総局」へ移管されます(工商局が看板を変えるに近い)。
次に国内で生産されたり海外から持ち込まれたりする製品の検疫などを行う「国家質量監督検験検疫総局」では、その機能のうち、輸出入品の検査検疫部門はすべて「海関総署(いわゆる税関)」に移行。残りのすべての機能は市場監督管理総局へと引き継がれます。
つまり輸入品の品質管理は今後、中国税関部門が行うことになるので、中国向け商品の輸出を行っている企業は注意が必要です。
また食品と薬の安全性の監督を行う「国家食品薬品監督管理総局」も、そのすべての機能を「国家市場監督管理総局」へ移管することになったため、同様に関連商品を取り扱う企業は確認をしたほうがよいでしょう。
さらには発展改革員会の内、物価の監督部門が「国家市場監督管理総局」へ移管されるほか、「反壟断法」すなわち独占禁止法関連部門も同じく新組織へと移ります。
独禁法関連では、商務部に「経営者集中反壟断法」という部隊があり、また国務院内にも「反壟断委員会弁公室」という組織がありましたが、ともに新組織に移り、独禁法関連はすべて「国家市場監督管理総局」で管理監督を行うことになりました。
【参考】工商局を含めた国内企業活動管理機構の組織改編
知的財産権の管理も一極化
日本企業が気にする特許や著作権などの「知的財産権」も、間接的に国家市場監督管理総局が管理することになります。
もともとあった「知識産権局」を新組織管理下に置き再編、もともと工商局が管理していた商標や品質検験検疫総局が管理していた産地表示に関する管理機能を移すことになります。つまり一部に散らばっていた知財関連の業務を一括して行えるようになる、ということです。
現在、越境ECなどによって中国市場で販売を行う日本企業も増えていますが、「知財」への懸念を払拭できないケースも増えています。こうした状況に日本貿易振興機構(JETRO)などでは「中国における商標登録」を推奨、サポートしています。その点から見ると、同業務の一極化は喜ぶべき変化なのかもしれません。
▼参考:
越境EC最前線!第4回 ~中国政府の規制の行方は? 今後の越境EC市場(2)~日本貿易振興機構
この改編の意味とは
これまで中国は市場経済導入から現在に至るまで、非常に速いスピードで発展してきました。そしてその猛スピードの中で、発展過程に生まれた副産物ともいえる様々な課題に対処してきたわけです。
例えば知財権、食品や医療品の安全性、独禁法などなど。対応初期には「とりあえずこの部門で」といって対応部署が設立されてきましたが、その結果、1つの事に関する対応部署が複数の機関に分散するなどの問題が生じていました。
さらに近年、北京や上海などの国際都市では「行政対応のスピード化、簡素化」が進められており、今後は「経済政策に関しては商務部(日本の経産省に相当)」、そして「企業の管理に関しては国家市場監督管理委員会」と、比較的すっきりとした住みわけがなされる模様。
これらの改編は、中央においては「2018年末までにすべての改編を完成させること」、また地方行政である省レベルにおいても「改編企画(人事)について2018年9月末までに中国共産党中央で認可を得、2018年末には改編実務が完了していること」とされており、省以下(日本でいう市町村)においても、翌2019年3月までにすべての組織改編が終了していることが求められています。
この改編で、中国ビジネスの利便性が向上することが期待されています。