中国トレンドExpress

2018年「315」中国消費者権益イベント(2) ~今回の315報道から読み取れること~

3月16日、中国トレンドExpressでは中国「315」の速報をお伝えしました。今年の315では昨年のような日本商品、越境ECに関する取り締まりはなく、ホッと胸をなでおろした企業も多いようです。ただ、「315」のイベントからは中国での消費業界における問題や政府としての注力ポイントなどを見ることもできます。そこで、今回大手以外に注目度が高かった取り締まり状況を把握し、若干の分析を行ってみましょう。

 

▼前回は

【速報】2018年「315」中国消費者権益イベント(1)~今年のターゲットとなったのは?~

 

まずは2018年の「315」で問題視された内容を見ていきましょう。

宝飾店の「おめでとう!」詐欺

ある地方の宝飾店。

買い物でよくあるのがお買い物抽選。一定額以上の購入者はその場でくじを引き、商品や割引が当たるというもの。本来はうれしいこの出来事にも、ちょっとしたワナが仕掛けられていました。

メディアの潜入取材、愛想よくふるまう店員さんに「じゃあこれ買うよ」と小さなアクセサリーを指さすと、店員も満面の笑み。すかさず「今、イベント期間中でして」とスクラッチの付いた抽選くじを持ち出し、その場で削るよう指示。

記者がスクラッチを削るとそこには「1等賞」の文字。店員さんも大きな声で「おめでとうございます!!」と喜び、「こちらの商品を3つまで無料で差し上げます」と、高級そうなアクセサリーの棚を指さします。

記者は中から「約6000元」の値札が張られた玉のアクセサリーをチョイス。すると店員は「商品は無料なんですが、18%の鑑定料を頂いています」とのこと。

記者はそこで1,000元余りを支払い、「幸運の赤いブレスレット」をもらって店を出る。

実はこの「当たった商品」、お土産物卸店では数十元程度で売られているもの。それを高級品と見せかけて「プレゼント」し、その鑑定料などの名義で数百元から数千元をだまし取るという手口でした。ちなみに赤いブレスレットは「だまし済み」というマークだったとか。

この店ではこの手口で、店員1人で平均3万元程度の儲けを上げていたらしくあります。

公共事業でも手抜き生産品が…

また中国国内の公共事業のサプライヤーでも悪質な劣悪商品が見つかっていました。今回発覚したのは、道路にひかれたセンターラインの反射素材。

道路のセンターラインには、夜道で判別しやすくするため反射材が使用されています。しかし、このセンターライン用塗料を生産していた会社は、意図的にその反射用素材を減らして納品。実際は反射効果が全くないことが発覚し、行政処罰を受けることになりました。

そのほかぞろぞろ、模造食品

また、すでに315の「お約束」ともいえるのが、有名ブランドをまねた模倣商品。今回は地方で流通している国内有名食品の模造品が紹介されました。

例えば、人気のココナッツ飲料「椰樹牌」(椰樹集団)。同商品は国の迎賓イベントでも提供される有名商品ですが、地方都市で出回っていたのは、ほぼ同じパッケージデザインながら、同社とは全く関係のない企業が作った「椰子汁」…(日本人的感覚で見ると、ちょっとイヤなネーミングです)。

椰子汁

また世界的に有名なエナジードリンクと言えば「Red Bull(中国名:紅牛)」ですが、同じく別の地方都市で出回っていたのは「Tencel Bull」。何か、肌触りが良くて強い繊維みたいなネーミングで、かつ「そこに牛ってのはどうなの?」と感じます。でも生産は「Red Bull」の名前…?

Tencel Bull

また国内で有名な乳飲料「旺仔牛奶」も、「旺好牛仔」に!名前も微妙なら、トレードマークもまたビミョ~。「牛仔(カウボーイの意)」という名前ながら、絵がまったくカウボーイしていない点も気になります。

旺好牛仔

などなど。

分析~2018年の315から見る消費の問題

さて、かいつまんで取り上げた今回の315ですが、そこから現在の中国政府が力を入れている部分が見て取れます。

今年のテーマは「農村消費と高齢者消費」。特に前者に力を注いでいます。

もし10年以上前に中国で生活された経験があれば、こうした模造品もどこか「懐かしい」と感じたかもしれません。

数年前ですが、筆者も出張先の中国地方都市で、小腹がすいたためお菓子の「オレオ」を購入。食べてみると、なんとなく味が違ったので「中国用に味を変えているのかな?」などと表示を見てみました。

本来「オレオ」の中国語表示は「奥利奥」、しかしよ~~~く見てみると、「奥利奥」ではなく「“粤”利“粤”」(※)だったのです。

まさに「してやられた!」と思った瞬間でした。

以前は北京や上海の大都市でも、街角に入ればまさに「微妙な商品」が売られていましたが、北京や上海では、国内外の大手小売店の進出・展開によって、こうした模倣品取り扱いの数が全体的に少なくなっています。

しかし地方、いわゆる2級、3級都市では、こうした「有名商品によく似た製品」を生産しているローカル小型企業(郷鎮企業)がいまだ存在しています。こうした企業は商標権の侵害という点だけではなく、大企業のような品質・安全管理が行われておらず、利益重視のため、基準を満たしていない原料や非合法な生産を行っているため、行政も看過しえないのです。

これは大都市における安全かつ合法的商品の流通がひと段落付き、中国政府が、今後消費拡大が見込める地方都市・農村エリアの市場管理に本腰を入れ始めたと見ることができます。

少なくとも、315で取り上げた場合、その年においては取り締まりが強化される傾向があります。

これを機に、安全面やブランド意識などがきちんと整備された市場が地方都市へと広がっていくことを期待したいものです。

※「粤(yue)」は日本語読みすると「えつ」で、広東省の別称。広東省~香港エリアで行われる京劇に似た伝統演芸の事を「粤劇」などと呼びます。