中国で進む「信用」の可視化。違反者には厳罰も

「信用」とは遠いイメージがついて回る中国ですが、近年、個人や企業の「信用」が問われる社会へと、政府も民間も動きを見せています。

政府は2020年までに社会信用管理システム導入を政策として掲げています。今年に入り、国家発展改革委員会は信用失墜者への懲罰に関して発表、中央銀行(中国人民銀行)は中国初となる個人信用調査会社の設立を認可するなど、着実に社会信用体系の確立へと向かっているように見えます。

信用を失墜すると飛行機や列車に乗れない?

国家発展改革委員会をはじめ、人民銀行、民政部など関連31部門は2018年4月10日、信用失墜行為を働いた者への懲罰に関する覚書を公布しました。

例えば、婚姻の登記や婚姻生活にまつわることで、身分詐称、戸籍謄本や各証明書の文書偽造など、婚姻法や婚姻登記条例に違反する悪質な不正行為を行った者には、信用失墜者として政府の全国信用情報システムのブラックリストに登録し、懲罰を与えるというものです。

当事者のみならず、加担した個人や企業も懲罰対象。公務員への就職や法人登記ができなくなり、雇用や昇進、認可、融資、補助金といった様々な側面で制限されることになります。

慈善・寄付、家政服務(家事代行などのホームサービス)、公共資源取引においても適用され、信用失墜者に対し、飛行機、新幹線(高速列車)、グリーン席や寝台席の利用を一定期間許可しない、新築住宅の購入や増築、豪華な内装をしてはいけない、車を購入してはいけないなどと消費を制限、つまりは「優雅な暮らしをしてはいけない」と締め付けるのです。

また、プライバシーの観点からはいかがなものかと思うところですが、駅や街中で「信用失墜者」として彼らの個人情報が掲示板などで開示されます。

スマホ決済で分かる自分の信用度点数

懲罰とは逆に、「信用度が高いとメリットがある」というホワイトな情報の活用もされています。

各省・都市では、独自の信用評価システムによって個人や企業の信用度を格付けし、例えば、信用度が高いと図書館での貸出期間や冊数が増えたり、信用度が環境保護への貢献度に反映され優遇政策を受けられたりと、日常のささやかなことから企業の優遇政策まで、様々なことに信用評価は導入されています。また、江西省では、ボランティアや社会貢献などの善行により、失ってしまった信用を回復できるような措置も発表されました。

民間も数年前から「信用」を扱うビジネスを始めています。ご存知の通り、中国はスマホ決済が浸透するキャッシュレス社会。それら決済アプリは「信用情報管理システム」という機能を附帯し、アプリの使用情報からユーザー個人の信用評価を行う仕組みがあります。

決済アプリのシェアNO.1を占めるアリババグループ「アリペイ(Alipay・支付宝)」の「芝麻信用」という信用情報管理システムは3年前から運用を開始しています。

購買履歴や資産、納税、公共料金などの支払状況、資産運用や借入の詳細と返済状況といったお金に係る情報から、決済アプリは個人間の資金のやり取りもできるので、交友のある人間の資産状況や社会階層まで把握し、それに学歴や職歴、車や住宅などの保有状況を加え、これらすべての情報をポイント化し、ユーザーの信用度を格付けします。

その信用点数は、金融機関の与信や金利優遇のほか、婚活や企業の雇用などの際の判断材料としてなど幅広く活用され、日常生活でも、信用点数が高いと宿泊施設やETC、レンタルなどの各種方面での優遇を受けられるようなメリットがあります。

信用点数を上げるには、納税や支払期限を守り、入金を増やし計画的に支出するという基本行動以外に、信用度の高い人間との交友を増やすことや、無料レンタルサービスやシェア自転車などを規定通りに利用するなど、社会規律を遵守させるような中国ならではのやり方もあります。

官民一体の信用情報管理システムの構築とその思惑

こうした流れを受けて、中央銀行は2月23日、「百行征信有限公司」(略称「信聯」)に対し、個人信用調査業務を認可したと公布。

「信聯」は、政府と民間が手を組んだ全国統一の信用情報調査会社で、政府主導のもとに全国民の膨大な個人情報を収集・集約・管理してシステム運用するという狙いです。

その構成ですが、政府系業界団体「中国インターネット金融協会」36%に、民間の信用情報調査会社8社が各8%ずつの出資比率。その8社には、タオバオ、T-MALL、アリペイなどを運営するアリババグループの「芝麻信用」、WeChatや決済アプリ「WeChatPay」を運営するテンセント・ホールディングスの「騰訊征信」、平安銀行や平安保険を抱える平安集団の「深圳前海征信」など、独自に信用情報を保有している大手企業が名を連ねています。

実は、上述8社は信用評価機関として早々に認可されており、各々で信用評価システムを開発・運用していますが、時には中央銀行と衝突する側面も。

「騰訊信用」は1月末日、個人信用評価システムのテスト運用を開始、しかし「信用調査の乱用」とストップがかかり、たった1日で公開中止へと追い込まれました。「芝麻信用」も、たびたび当局からの規制強化に合っています。

国の治安や安定のために信用情報を国家システムとして運用したい政府に対し、信用情報を活用して新たなビジネスへつなげたい企業、官民それぞれの思惑があるようです。「信聯」は今後いかにして管理システムを作り上げるのか、注目が集まっています。

「プライバシーへの意識」の覚醒という逆風も

社会主義の影響下、情報一元管理の仕組みが存在していた中国では、国民の情報開示やプライバシーに対する意識は全体的に低い傾向にあります。「信用が低いと何もできないが、高ければ快適かつ安全、社会的メリットを享受できる」という信用社会を支持する声のほうがプライバシーの保護よりも大きく、信用情報システムの構築は比較的スムーズに進むように見えました。しかし、ひとたび「信用情報」に意識が向くと、逆に「プライバシー」への意識が覚醒するという現象が発生。

今年初め、「芝麻信用」の情報の取扱記述にユーザーから抗議があり謝罪したという問題が発生したように、プライバシーに敏感になりつつある中国国民。彼らの意識こそが、今後の中国の信用社会化へのカギとなるのではないでしょうか。

 

<参照>
失信者日子越来越难过 这些人被限制招为公务员 出所:東方網(中国語)
婚姻登记严重失信当事人将受到联合惩戒 出所:Weibo北海発布(中国語)
江西部署社会信用体系建设 做公益可修复个人信用 出所:Weibo新華網(中国語)
在宿迁,信用好借书多时间还长 出所:Weibo宿遷之声(中国語)
央行下铁命令:中国征信八大霸主正式被“收编”! 出所:sina財経頭条(中国語)
个人征信机构转型路:违约数据压箱底 信联共享路漫漫 出所:金評媒(中国語)
央行下了铁命令:马云正式被“收编”! 出所:鳳凰網(中国語)

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