中国トレンドExpress

【越境EC最前線!】第5回 ~正しい越境EC運営してますか? 抑えるポイントとは(1)~ 株式会社unbot

お話:福積亮 株式会社unbot General Manager

インタビュアー:株式会社トレンドExpress代表取締役社長 濱野智成

ますます重要視されつつある中国市場。そしてその中国市場に「手軽に」進出できるといわれる越境ECもこれまで以上に注目されています。しかし、実際に越境ECを始めてみると…。そんな日本企業の悩みについて、中国ECサポート事業を行っている株式会社unbotの福積亮氏に、中国EC市場におけるポイントについて伺いました。

コンプリートしているのは40社程度?押さえるべく4ポイント

現在、中国向けの販売チャネルとして、越境ECを含めたECによる販売を選択する企業が非常に多くなっています。しかしながら、そこで「成功した!」という企業が少ないような印象を受けます。御社から見て、中国ECにおいて成功を収めるにはどういった要素が必要だと思われますか?

「押さえるべきは4つのポイントですが……」と語る福積氏

福積亮(以下:福積) ポイントはいくつもありますが、大きくまとめると以下の4点になります。

サイト内広告

APP最適化

CS対応

プラットホーム、バイヤーとの関係構築

ただ私はこの2年ほどで中国向けB to C事業を行っている日系企業を900社ほど訪問して課題抽出をしていますが、この4つをすべて行っているのは極めて少ない状況です。感覚値でいうと、5%程度でしょうか。

5%ということは、40社強ということでしょうか?意外に少ないですね。特にできていない部分とその理由について伺えますか?

福積 できていない点としては①と④ですね。

このうち、①ができていないのは、ブランド(メーカー)とTP(EC運用会社)にサイト内広告のノウハウがないという部分が大きいです。

「サイト内広告ってなにがあったっけ?」や、「クリックでお金かかるヤツだよね」、「旋回表示で…」といったような、ゆる~いイメージしかもっていないんです。

ブランド側ももちろんながら、運用会社でもはっきりと仕組みを理解していないために、ブランドに提案できていないのが現状です。

そのため、ブランド側も運営会社もノウハウの蓄積しようが無いのが問題ですね。

なるほど。専門的な知識がないからノウハウも蓄積されない。なかなか大きな問題ですね。

福積 そうですね。弊社ではECサイト内広告、金額でいえば月間数億円の広告運用を行っています。その中で「どのカテゴリの商材」で、「いつ、どのようなキーワード」を設定し、「CPC単価をいくらぐらい」と設定すると「どのくらいの売り上げ」というデータが蓄積されていきます。そのため、100元の広告投資に対してROASベースで200~300元程度の売り上げにつながる、という実績になって見えてきますが、こうしたノウハウがないと実績を上げることは難しいのではないでしょうか。

これはブランドさん単独で行って効果を出すのは至難のワザですね。

福積 実を言えば、こうしたデータ分析をせずに、単純に広告を打っている企業さんでは、ROASで10~11ぐらい出ているんです。

例えば、ある消費者が「〇〇という商品を買いたい」という場合、その商品名である「〇〇」をキーワードとして出稿しておく、つまり「指名買い」になることから、ROASは自然に高くなります。

ただこれは、もともとその商品を買う消費者に対しては有効ですが、商品名でなくカテゴリーなどで検索する消費者に対して効果を上げることはできなくなり、売り上げそのものを上げることは難しくなります。

この方法では、例えば広告出稿に1000元費やせば1万元につなげることはできますが、それ以上に規模へはつながらないでしょう。

最も重要なことは、ROASを2~3程度まで下げ、「10万元の広告投下を行って2~30万元のうり上げにつなげる」という考え方だと思います。

こうしたサイト内広告を行う場合、見なければならないKPIとは何でしょう?

福積 サイト内広告のKPIで見ているのはROASとROIです。つまり、「いくら投資して、いくらの売り上げにつながったか」という明快な設定です。

もちろん、ページを閲覧してくれた消費者がどのくらいの購入につながったのか、といういわゆるコンバージョンに関しても注目しますが、こちらは実は②のAPP最適化とつながるんです。

コンバージョンを上げるためにいかにAPPを最適化するかということですね?

福積 コンバージョン率の低さ、つまり「検索してページにまで来てくれた」しかし「買わない」という現象。これは「ページに問題があるんじゃなか」という考えになり、すなわち「APPの最適化が必要なのでは」というロジックなのです。

幅広いキーワード設定が成否を分ける

APP最適化に関しては次回以降詳しく伺うとして、コンバージョンを高めるには、まずはページまで誘導する必要がありますが、そのために必要な施策とは何でしょう?

福積 キーワード設定能力ですね。例えば「スターバックスのコップ」を売るとしましょう。この場合、まず「スターバックス」や「コップ」というキーワードをリストに入れておけば、指名買いの消費者を呼び込むことができます。

しかし、それだけでは売り上げを伸ばすことはできません。より多くの消費者にページを見ていただくためには、例えば競合である「パシフィックコーヒー」をリストに入れておくことも必要でしょう。

また「コップ」を検索する消費者は、同時に「お皿」を探すこともあります。そのため、相関性に基づいて類似セグメント名も必要になっていきます。

そのため、まず1SKUに対して80から100程度のキーワードを設定していきます。

同じセグメント内で、競合を含めたキーワードを設定していくことで、ページへの導入を増やしていくということですね。

福積 必ずしも同じ分野とは限りません。別のケースですが、「おむつ」を探していたお母さんがいたとします。もちろん「おむつ」や「乳幼児製品」といった検索をかけ、「おむつ」と同時に「哺乳瓶」などのマタニティ製品も探すケースが多くあります。ここまではイメージしやすいと思います。

しかし同時に出産後の女性は「肌荒れ」に悩んでいたりもします。

そうすると「おむつ」などのベビー用製品を売りながら、リスティングには「化粧品」というキーワードを設定しておくと、購入につながることもあります。

そのため最初は80~100という数からスタートします。その後、運用の最適化を行いつつ、最終段階では1SKUに対して20~30程度のキーワードに落ち着くケースがほとんどです。

幅広い分野までイメージを膨らませて、キーワードを設定していくことが重要なんですね。こうした作業は一般的に誰が担当するケースが多いのでしょう?

福積 実はこうした部分は、EC店長がやっていたんです。お客さんやECプラットホームとコミュニケーションを取りながら、リスティングなども同時進行で行っていました。しかし、それではノウハウの蓄積と深掘りができないんです。

弊社ではそうした理由からDM部を設立し、サイト内広告の運用のみを扱う部隊で運営しています。

たしかにこれまでは、中国のECで成功するには、いい運営会社ではなく、いい店長にアサインするか、などと言われていましたよね。それを独立化した部隊が行うというは、画期的なように思います。

福積 またリスティングを店長業務からはがした理由には、店長ではクライアントの声を聞きすぎるというという点もあります。売り上げを上げるためには、そのリスティングにおいてもクライアント好みではなく、数字とロジック、そしてマーケット(消費者ニーズ)に基づいて提案する必要があると判断しました。

なるほど。確かに売り側がどうしたより、買う側がどのように検索しているかが重要ですね。ありがとうございました。

次回は中国の主流となりつつあるAPPへの最適化、そして意外にも重要なCS対応について引き続きお話を伺っていきます。

▼つづきはこちらから

【越境EC最前線!】第6回 ~正しい越境EC運営してますか? 抑えるポイントとは(2)~ 株式会社unbot