7月1日から中国関税再調整 化粧品・スキンケア商品も8.4%→2.9%へ
5月30日、中国国務院から7月1日以降の新たな輸入関税率についての正式な通達がありました。その内容を見る限り、大幅な引き下げとなりそうですが、消費者にはどのような影響があるのでしょうか?現在の状況から若干の考察を加えてみたいと思います。
高まる「海外商品」ニーズに門戸拡大
まず、この度引き下げとなった商品分類と関税を見てみましょう。
- アパレル・スポーツ用品:15.9%→7.1%
- 家電:20.5%→8%
- 水産品:15.2%→6.9%
- スキンケア・化粧品・一部の医薬健康商品:8.4%→2.9%
この調整に背景にあるのは、まずは今年4月に行われたボアオ国際会議における習近平国家主席による演説で、高まる中国消費者の「海外商品」ニーズに対応したものでしょう。
▼参考:
【中国関税】中国関税のさらなる引き下げ、輸入博覧会開催も 習近平国家主席、ボアオ会議で経済開放政策を確約
そしてこうしたニーズによって発展したのが越境ECシステムで、中国の消費者が海外の商品を購入しやすくなった半面、中国政府はそこからの税金が取りにくくなっています。これまでは、こうした越境ECの法整備を進めることで市場の管理(主に税制度)を図ってきました。
しかし今回は正規輸入品の関税を見直すことで、海外の商品のハードルを下げ、中国国内で海外製品を販売しやすくしようとするもの。つまり海外商品からの税収の重点を関税から、国内流通・消費にシフトしようとするようです。
同時に海外商品の流入が増えることで、そのライバルとなる中国国内メーカーが一念発起し、自社商品のレベルアップを図ることも期待しており、一般貿易・越境EC・国内商品の3社を上手に競争させて、国内の消費促進、国内製品レベルの向上を目指すようです。
消費者に恩恵はどこまで?~中国で「輸入品」が高いワケ
さてこの関税の大幅引き下げ、中国の消費者が喜んでいるのかといえば、Weibo上ではあまり実感がわかない様子。
「もともと高いのに、ちょっと下がったぐらいでは…」
「逆にニセモノののほうが流通しそう」
「店頭に並んだ時だと、ホントに海外製品か分からないし…」
といった声が見受けられます。
中国における輸入商品、特に人気商品は海外の1.5~2倍の価格で販売されているというのは広く知られています。
その理由の1つにはもちろん「高関税」がありましたが、もう一つは中間利益、つまり国内に入ってからの流通・販売におけるコストが高く、それが小売価格に上乗せされているという点があるのです。
特に以前は小売店がメーカーや卸などに対して非常に優位な立場にあり、棚の確保や商品の搬入、販促費用など、様々な費用がメーカーに要求されます。メーカーとしては売るためにそうした費用を払わないわけにはいかず、結局そのコストを小売価格に上乗せしなければ利益が上がらないというシステムでした。
それに代わって台頭したのがECでしたが、徐々に管理費用などを取得するようになりました。日本でも「中国の大手ECサイトで旗艦店を開いたが…」といったつぶやきが、それを物語っています。
ある消費者は「関税が下がるのであれば、小売店への卸価格は下がる。小売店はそれを今まで通りの価格で売れば、利益は増えるじゃないか」といったツッコミ。つまり関税が下がったからといって、売り手が価格を下げてくれることには期待していないようなのです。
関税の引き下げは、海外のメーカーなどにとってはハードルを下げることになりますが、消費者からみると「輸入後から消費者の手に渡るまでを」何とかしなければ、大きな恩恵は受けられないと感じているようです。
ソーシャルバイヤーたちはどう変わる?
では、日本など海外で商品を買い付け中国側に販売しているソーシャルバイヤーたちはどうでしょう? 海外製品の関税が下がることで、彼らの商品が買われなくなるという懸念はないのでしょうか?
Weiboや本件を報道するWeChatメディアに対する書き込みなどを見てみると、あまり危機感を感じている様子はみられません。
もともと彼らはあまり「価格勝負」のビジネスをしていないのです。実際に彼らの販売価格は同じ商品でも大手越境ECサイトで売られている場合より若干高いケースが多いのですが、少なからぬ消費者が越境ソーシャルバイヤーからの購入を選択しています。
その理由はやはり「海外で直接買っている」という安心感、「この人ならニセモノを売らない」という信頼感によるもの。そのため、関税の引き下げもあまり影響がないと見ているようです(「むしろ日本の消費税率の方が気になる」という人も…)。
同施策は7月1日から。そのため上記は現時点での反応です。実施後に果たして政府の思い通りの結果が得られるのか、はたまた中国消費者の懸念がそのまま実現するのか、われわれ編集部では情報収集に努めていきます。