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【越境EC】 潜入! 日中越境ECを動かす 日本在住ソーシャルバイヤーたちの祭典(1)

季節外れの暑さに見舞われた4月末、都内某所に日本在住のソーシャルバイヤーたちが集まるという情報をキャッチした我々『中国トレンドExpress(略称:CTE)』編集部。さっそく会場に潜入し、日本で活動するソーシャルバイヤーたちの様子を探ってきました。

当日、私たちが会場に到着した時には、すでに多くのソーシャルバイヤーたちが集まっていました。その数4,50人といったところで、性別や年齢も様々。会場はやや異様な熱気に包まれていました。

このイベントのタイトルは「微店海外店主見面会」。ソーシャルバイヤーたちが出店、中国の消費者向けに販売ができるプラットホームアプリ・微店が主催した、日本在住ソーシャルバイヤーたちに向けたイベントなのです。

※いまさら聞けない「ソーシャルバイヤーとは何ぞや?」
個人で商品を買い付け、SNSを使って消費者に告知、販売を行う人たちの事。2014年から始まった「爆買」ブームの真の火付け役とも。多くは留学生や主婦、ビジネスマンですが、専業ソーシャルバイヤーも多数存在している模様で、中国のソーシャルバイヤープラットホーム上には45万店舗もの日本商品取扱店舗が存在していると言われています。

▼参考
【緊急企画】中国EC商戦の戦い方③ 信用がイノチ! 知られざるソーシャルバイヤーの世界

【緊急企画】中国EC商戦の戦い方④ 発信力と販売力。新たな道を示すソーシャルバイヤーたち

※ソーシャルバイヤーを使った越境ECサービス「越境EC X(クロス)」についてはこちらから。

月に約170万円以上の売上も…。

この日集まったソーシャルバイヤーは、約100人にも達しました。しかも東京・関東圏在住者のみならず、他の地方からも集まっているとのこと。

主催者である微店に話を聞くと、「今回のイベントに声をかけたのは、ほぼ毎月10万元以上の売り上げを見せているバイヤーたち」とのことで、「ソーシャルバイヤーになったばかりの留学生がそのぐらい売り上げていた」と教えてくれました。

月10万元の売り上げと言えば日本円に換算すると170万円…。あるソーシャルバイヤーさんは「手元に残るのはそのうち30%程度です」と苦笑交じりに話していましたが、それでも50万円ぐらいにはなっているということです。

それでもこれは今回の標準ライン。中には月売り上げで50万元(約860万円)というツワモノもおり、これはもう「小遣い稼ぎ」の域を超えている様子。実際に留学生やサラリーマン、OLのサイドビジネスとしてだけではなく、専業のソーシャルバイヤーとして仕事をしている人もいるようです。

これらを作り上げているのは、日本商品の人気ももちろんながら、中国の購買力、そしてソーシャルバイヤーの販売力の高さによるものが大きいのです。

店頭から商品が消える?

高い利益を上げているように見えるソーシャルバイヤーたちですが、話を聞いてみると苦労も多いようです。

彼らの生活、「一日の内、寝る時間を除けばドラックストアやデパートをめぐっているか、郵便局に行っているか(商品はEMSで郵送するケースが多い)、WeChatでお客さんと話しているか」のどれかだとか。つまり買い付けとカスタマーサービスってことですね。

考えてみればソーシャルバイヤーたちは、完全に個人事業。そのため、仕入れから発送、宣伝から顧客対応すべてを1人でこなさなくてはいけないわけです。そりゃタイヘンだわ……と感心してしまいます。

そんな彼らにとって、一番大きな問題はやはり「商品の買い付け」。

最近、主に日本の大都市のドラッグストアを中心に「特定の商品」が欠品したり、販売制限がかかっていたりという事態に出会ったことはないでしょうか? ソーシャルバイヤーの悩みがそこにあるのです。

例えば資生堂の人気日焼け止め「アネッサ」。

同商品は資生堂というブランド、比較的求め易い値段、そしてその効果によって中国で火が付いた商品です。

しかし中国で人気が出たのはよいのですが、手に入りにくかったり、ニセモノが出回り始めたりとした現象が現れました。その結果、中国の消費者がより「安全かつ信頼できる」日本在住のソーシャルバイヤーからの購入へと向かったのです。

ソーシャルバイヤーたちはこうした消費者たちからの依頼に応じる形でドラッグストアを回り、商品を買い付けていましたが、供給量が追い付かず、特に都内の小売店で欠品が起こってしまいました。

ある日本の最新動向を常にアップしている在日本インフルエンサーのSNS上で、胸に中国語で「アネッサはございません」と書かれた紙を貼ったドラッグストア店員の写真がアップされ、中国でも話題になりました。

その数日後、また「依然としてアネッサはございません」というメッセージに変わっており、現在も一部では依然として品切れ、品薄状態が続いている様子です。

「依然としてアネッサはございません」というプレート。ようは「無いから聞くな」ということらしい。

これはアネッサだけに限ったことではなく、多数のブランド、さらに化粧品や食品・サプリなど、幅広い商品で同様のケースが起こっています。特に中国のKOLが「これいいよ!」と紹介した商品の情報は、瞬く間に拡散され、日本の店頭から消えていきます。

▼参考
「超ド級KOL?ファン・ビンビン効果で売り切れ続出」売れるKOLの影響力とは

日中双方の「買いたい」を満足させるシステム作りを

この人気に「対象となったブランドのメーカーや小売店はさぞかし喜んでいるだろう…」と思いきや、実は必ずしもそうではありません。

ソーシャルバイヤーの買い付けによって店頭で欠品が起こったことで、国内の消費者のニーズを満たすためには早急な商品補充が必要となり、対応に追われます。

なかには生産キャパシティを超えてしまったがために出荷できず、多くの日本国内の消費者手に届かないといった状況も、メーカーを悩ませています。

現在ソーシャルバイヤーたちが買い付けできる場所がドラッグストアや百貨店などの小売店に限られてしまっており、多数のソーシャルバイヤーがそうした場所に集中してしまっていること。

またメーカー側から見れば、まったく予期せぬニーズであるため、当初の販売計画に組み込まれていなかったことなどが考えられます。

こうした騒動に、「買いたいのに買えない!」と眉を顰める日本の消費者も存在します。しかし「ほしいのに買えない」というのは、中国の消費者もまた同じ。

今後は、メーカーやソーシャルバイヤーを巻き込んで、「国内外の消費者双方が安心して買える、満足できる状況づくり」が必要とされているように思います。

次回はソーシャルバイヤーたちを支える「信頼」とその評価について考えていきます。

▼つづきは
【越境EC】潜入! 日中越境ECを動かす 日本在住ソーシャルバイヤーたちの祭典(2)