【越境EC】 ビッグイベント重複も新しい小売モデルへ 2018年618商戦まとめ
今年も大きな盛り上がりを見せた618年中商戦。この後訪れるW11を占う商戦としても注目されているこのイベントですが、今年もいろいろと話題に事欠かなかったようです。ニュース報道などを中心に、今年の618商戦を振り返ってみましょう。
もとは彼らの創立祭。売上トップ「京東(JD.com)」
まず売上です。中国の調査会社・星図数据によると、今年の618期間(6月1日~6月18日)、全サイトの受注額を合計すると2844.7億元。日本円で約4兆8400億円あまりとなっています。
そのうち、京東(JD.com)の受注金額は1592億元と半分以上を占め、トップに立っています。
【グラフ】2018年618期間中の売上
中国EC業界最大手と言われるT-Mallはその金額は公開していませんが2位、そして「拼多多」と続いています。もともと618自体、JD.comの設立記念日だけあって、ライバルを抑えてのトップ獲得となったようです。
【表】2018年618商戦受注額順位
順位 | サイト名 |
---|---|
1位 | JD.com |
2位 | T-Mall |
3位 | 拼多多 |
4位 | 蘇寧易購 |
5位 | 唯品会(VIP) |
6位 | 網易電商 |
7位 | その他 |
出所:星図数据のデータを基に中国トレンドExpressにて作成
注目はやはり「拼多多」が蘇寧やVIPを抑えて3位にランクインしたことでしょう。同サイトは一つの商品に対して一定人数以上が注文すると価格が抑えられるという、かつてあった「団購」をECアプリに活用したサイト。
今年の618には「特定商品で一定時間内に所定人数の注文で無料」というキャンペーンを打つなど、他とは一線を画した商戦でユーザーを獲得。好成績を収めています。
「紅包」が飛び交った618プロモーション
さて今年の618ではJD.comが勝利しましたが、商戦期間中、各サイトあの手この手のプロモーションを展開しました。
特に各サイトごと「紅包(日本でいうご祝儀袋)」作戦を展開、WeChatなどのSNSを活用しお得な割引となる紅包を配布。消費者の購買意欲を高めました。
主なサイトのプロモーションは以下の通り。
【T-Mall】
– 0:00 618元「紅包」争奪イベント
– 10:00,15:00,20:00 一千万個紅包ランダム発行
– 「セットサービス」、ショッピングサポート618感謝カーニバルチケット(300元の購入で60元のプライスダウン)
– 6月16日0:00、人気所品の「割引+割引」
– 300元購入で30元引きサービス
– ミニゲーム(猫の飼育ゲーム)、猫を3匹成長させると紅包を獲得。紅包発行総額「1.2億元」
【JD.com】
– 6月1日~17日毎晩6:18,現金が包まれた紅包の雨。最高額4999元
– 毎日6.18元か61.8元の「秒殺価格」
– 紅包サービス、毎日3回の受け取り(現金:2元、3元、5元)
– 購入100元で8元,200元で15元,300元で25元,400元で50元,1000元で618元をそれぞれ値引き
【拼多多】
– 金色の卵を割ることで、謎のプレゼント。4人の仲間を募って金の卵を割ろう。最高618元の現金が包まれた紅包、iPhone X、オーブントースターなどが獲得できる。
-6,9,14,16,21,22時には有名ブランドの割引獲得チャンス
-時間制限秒殺イベント。タイミングによっては10元で究極のチケットをゲット
– 特定商品で、一定時間内に購入者数が一定数に達すると価格が「ゼロ」になるキャンペーン
【唯品会】
-6月16日、多ブランドの商品購入199元で100元引き、298元で80元引き
– 1商品60%OFF
– 超級紅包を無料配布。最高30元の無制限割引チケット。
キーワードは「新小売」。実体店とのタイアップも
2018年618商戦のもう一つの特徴として「新小売」という言葉とともに、大手ECサイトと実店舗を持つ小売ブランドとの提携が行われました。
【T-Mall】
EC最大手のT-Mallは、オンラインプラットホームである自社とスーパーマーケット「大潤発」100店舗と連携しました。
その目的は発送にあったようで、T-Mall上で注文した商品のうち、大潤発との提携商品は、T-Mallの倉庫ではなく大潤発の店舗から発送。店舗から3キロメートル内には発注後、1時間で配達しています。
しかもこの取り組みは大潤発だけではなく、銀泰百貨店、箱馬小型スーパー(3キロメートル内無料配達)など70以上の実店舗が参加。やはり3キロメートル以内は発注から1時間以内の発送を行いました。
【JD.com】
618期間中Wechatと携帯QQプラットフォームを通じて300回にわたる消費者参加型のイベントを開催しましたが、同時に50万以上のオンライン、オフライン店舗(ウォルマート、永輝スーパー、聯華スーパー、歩歩高スポーツショップ)と連携、イベントを展開。
期間中はJD.comのポイントを提携している実体小売店でも活用できたり、実体店での消費で割引ポイントが取得できたりしました。618のイベント当日、ウォルマートは昨年同日の4倍、永輝も同じく5倍、歩歩高も2.6倍、世紀聯華も同じく7倍の売上となっています。
これらの「EC×実体小売店」コラボ、今年のW11ではどのように動くのか、その行方も気になります。
ビックイベントが重なった618。売り上げへの影響は?
今年は昨年の618とはまた変わった特徴がありました。それは、多くのビッグイベントが重なったという点。
重なったのは「父の日」、そして中国の伝統節句である「端午節」、さらに今年は4年に一度の「ワールドカップ」。そのため、売れ行き商材の中にも、通常とは異なる動きが見られました。
まずは「サッカー観戦」。無類のサッカー好きである中国では「きれいな画面でワールドカップを楽しみたい!」というニーズがあるようで、60インチ以上の大型テレビが昨年の3.5倍の販売量となったようです。さらに家庭用プロジェクター(パソコンなどとつないで壁に投影)も昨年比2.7倍の伸びを見せたようで、中国消費者のサッカー観戦熱を見せつけています。
しかしテレビとセットで売れたのが、なんと「ザリガニ」。ザリガニは中国では一般的な食材で、地域差はありますが香辛料たっぷりの煮汁で煮たザリガニはビールのお供として定番になっています。618期間には3000万匹ものザリガニが販売されました。
サッカーを見つつビールを飲み、ザリガニを食べる。それが今年の618の過ごし方だったようです。
また父の日ということで、家庭を大切にする中国ならではだったのが、マッサージ器具の売上。「マッサージ器・マッサージチェア・足湯セット」が三大神器とよばれ、その販売量は昨年比226%増となったとのこと。
日々疲れているお父さんに、ちょっとした安らぎを、ということだったのでしょう。
消費者にとっても「お疲れ」商戦。中国SNS上の618
最後に、中国の消費者が今年の618にどういった感想を持ったのか、Weiboのクチコミを見てみましょう。
まずはポジティブなクチコミ。「お得商品をゲットできた」や「たくさん買った」などといった書き込みが多く、ショッピングを楽しんだ様子がみてとれます。
【ポジ】
-普段値段は高いが、618のお得で購入。意外とよかった!
-618後こっそり私の7個の小包を取りに行ったけど、お父さんも後ろに付いてくる。「どうしてだろう」と思ったら、お父さんにも5個の小包が届いてました。
-618の後、銀行の預金残高を見る勇気がない。
翻って、ややネガティブなクチコミも少なくありません。ネットショッピングならではの「衝動買い」や「思っていたものと違う!」といったクチコミが見られます。
【ネガ】
-618やっと終わりました。感想は「買ったけど、全部損をした」気がする。
-618の戦利品、唯一の感想は二度とオンラインで服を買わない、3着とも大きすぎる。
-618が過ぎたが必要な物を買い忘れた。全然必要のない物をたくさん買っちゃった!
今回は「ポジ」、「ネガ」に関わらず気になるクチコミにも注目してみましょう。
【その他】
-今年の618は今まで一番難しい。618キャンペーンをやっているサイトが多すぎて、どれにするか頭が痛い。
-W11より辛い618がやっと終わりました。もともと買い物は楽しいのだけど、ストレスを感じるようになってしまった。毎日あちこち価格を比べてると、頭がおかしくなっちゃうよ。
-知らないうちに618が終わった。買い忘れたものがあった!どうしよう…。W11まで我慢するしかないな…。
多かったのが「割引キャンペーンが多様すぎ」、「イベントに参加しているサイトが多すぎて、価格比較に疲れた」といった内容でした。
消費者にとってこうしたECキャンペーンはお買い得商品をお得に購入できるイベントとして人気はあります。しかし限られた予算で購入する消費者にとっては、昨今はその規模の大きさや複雑になりすぎたお値引きキャンペーンなどが悩みのタネになっている様子。
今後は企業(小売り、メーカー)も、自社の売り上げをどう上げるかだけでなく、いかに「買いやすい売り方にするか」にも意識を向ける必要があるのかもしれません。