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【セミナーレポート】 すでにスタートしているW11(ダブルイレブン) 618から何が見える?(2)

6月28日、トレンドExpressでは恒例の月イチセミナーを開催。時はまさに中国ECイベント618終了直後。その動向から、来るべく11月11日の中国EC最大の祭典『W11(ダブルイレブン、中国語では「双十一」)』に向けての戦略が紹介されました。

日本企業も多く出品している中国大手ECサイト『京東(JD.com)』が開催する、年に一度の特大キャンペーン『618』。成功した企業に共通する戦略とは?注目を集めたセミナーの後半は、今年のW11の戦い方に迫ります。

▼前回はこちら
すでにスタートしているW11(ダブルイレブン) 618から何が見える?(1)


商戦期間(618、W11)のポイントは?

618やW11などの商戦期のみプロモーションに力を入れるのではなく、事前のブランディングが最重要である一方、商戦期の最中にも売れるためのポイントは隠されています。

第1に、わかりやすくお得感のある割引訴求。消費者は「お気に入りの商品が安いから買う」ため、この商戦期を広告宣伝費と捉え、徹底的に安く買えることをアピールすることで商品を実際に購入して使用する母数を増やします。口コミなどによってキャンペーン期間が終わった後も売れ続けた事例もあります。

第2に、期間中もマルチチャネルで継続的なブランディングを行なうこと。

【参考】618成功企業の施策(例)

上記の例ではPR記事配信、KOL施策、モール内キャンペーンの3つを複合的に実施しました。この中で1つ2つはやったことがある、といった企業もあるでしょうが、やはり複合的に施策を行なった方が購買を促進しやすいという結果が出ました。

ユーザーアクセスの多いメガメディアやKOL施策を含めて、「マルチ」に情報を拡散し、市場内の情報網をつなげて認知拡大を最大化させることで、より多くのユーザーにリーチできます。何がきっかけで爆発的に売れるかがわからない、そのために可能性の種を撒いておくことが必要です。

また、口コミなどの評判は積層的に増えていくものなので、一度露出が下がると評判の拡大に時間がかかってしまいます。コンスタントに消費者の目に触れていることで「いつか買いたい」とう欲求をより多くの人に蓄積させられます。

第3に、KOLは有効なインフルエンサーを選別することです。

日本商品を売るのであれば、上海、北京など一線都市出身のKOLを使うことが一番です。地方都市のKOLは、実績として低価格帯商品とのタイアップが多く、フォロワーも同じ地方の消費者など、高価格帯の多い日本商品にはにそぐわないことが多く、ターゲット層に届きにくい傾向があります。

その点、日本商品がもともと目につきやすい環境にあったり、収入の高い一線都市の消費者のフォロワーを多く持つ、同様に一線都市出身のKOLが有効であると考えられます。

2018年度・W11をどう戦うのか?

改めて、中国で売上を上げるために重要なことは何か?と聞かれれば、

認知の拡大

であると言えます。

PRというと購買喚起に目が行きがちですが、中国国内ではまず商品を知っている層の母体数を増やす、ここから始めなければいけません。

中国国内は偽物の流通が多く、消費者は本物志向、つまり「知らない商品は買わない」という意識です。どんなに宣伝をしても、SNSで話題になっていない、口コミが少ない、といった形ではまず買ってもらえません。

つまるところ、大型商戦は「事前ブランディングとマルチチャネルでの購買施策」が成功の要です。中国ECは韓国や欧米企業も狙っている一大市場で、多くの広告がひしめき合っています。特にW11などの時期に天猫や京東といったモール内で中途半端に広告を出しても、多くの中に埋もれてしまうでしょう。

その前に、ブランディングによってモール外での認知を拡大させておくことが重要です。

  W11は「予熱期」が超重要!

618とは異なるW11の大きな特徴は、本番期の11月1日よりも前に勝負が決する、という点です。

【参考】W11(双十一)前後の大きな流れ

天猫(T-mall)では、10月の中旬(20日頃)から31日までの「予約販売」が開始されます。

この10月中旬から月末までを予熱期(ウォームアップ期)と呼びますが、天猫では予約の時点でカートに入れる(購入手続きをする)ことで、割引が適用されるなどといった施策があり、このためにほとんどの消費者が予熱期にほとんどの欲しいものを決めてしまっている状況です。

先の項でモール外での認知を重要視したのは、この予約販売の時点で、「指名買い」をしてもらうためです。

天猫などのECサイトでキーワード検索されると世界中の商品が引っかかり、広告費をより出した方から上に表示されます。しかし事前にブランディングが成功し、認知が増えていれば、消費者は欲しいと思ったその商品名、もしくはブランド名をダイレクトに検索(指名検索)します。

競争の激化したモール内で広告を打つよりは、外でのブランディングによる指名買いを狙うべきだと考えます。

【参考】モール外とモール内を切り分けた考え方

大型商戦期はどうしても実施しているモール依存になってしまい、ECサイト側の施策やルール改定によって左右されるところがあります。

しかし、それでもブランディングの下積みがあれば、「指名買い」されるための土台の底上げは出来ているため、結果売り上げの増加に繋がります。

ではW11に向けてはいつから始めるのか?といえば、10月20日にはスタートダッシュが始まることを意識して、8月にはどういった施策を行なうかを考え始めておくべきです。

そして9月からは調査分析や戦略策定といった準備フェーズが始まります。

つまり、今年のW11を決めるのは、今これからの準備によります。

消費者が何を買おうか迷いながらキーワード検索した中で拾ってもらうのを待つのではなく、事前の徹底的なブランディングとマルチチャネルでの購買訴求で、より多くの消費者に「これが欲しい!」と指名買いしてもらうこと。

W11を勝ち抜くために、今から、これからが勝負です。