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【訪日中国人】 大阪城公園>USJ? 依然として人気の中国からの訪日旅行 国慶節ニーズへのヒントは?

年末のインバウンドに向け、消費の主力であり、そして最もアクティブな世代「80後(1980年代生まれ)」や「90後(1990年代生まれ)」、そして新世代である「95後(1995年以降に生まれた世代)」のニーズは無視することの出来ない存在になっています。

引き続きHotels.comがまとめた『2018年中国游客境外旅游調査報告』から、最新の中国人観光ニーズの内、中国人観光客が海外旅行に臨む「改善点」について、また中国の旅行予約サイトの最新レポートから、日本観光ニーズの再確認もしていきましょう。


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「もっと中国人観光客向け」サービスを。中国観光客の心の声

Hotels.comの『2018年中国游客境外旅游調査報告』においては、海外に行った中国人観光客が「改善してほしい点」にも及んでいます。

【表】中国ミレニアル世代が望む海外観光地の改善点

希望改善点 回答比率
中国語の話せる店員(ショップ) 44%
中国のオンライン決済システム 44%
中国語の案内図 42%

出所:Hotels.comの調査レポートをもとに中国トレンドExpressで作成

これらを総括すると、「中国人観光客に特化したサービスを」ということなのかもしれません。世界的に中国人観光客が増えており、、また世界各地でもその誘致合戦がおこなわれているなか、「中国人向けのサービス」がまだまだ不足している、ということなのかもしれません。

かつて日本では、これらに加え「インターネット接続」という点が挙げられましたが、その点は中国側でWi-Fiルーターの貸し出しなどのサービスが充実したこともあり、徐々にネット接続の不満は薄れているようです。しかしながら、人材と決済は依然として日本で行われるインバウンドでも必ず取り上げられる課題となっています。

まず中国語人材に関していえば、インバウンドに限らず日本でも枯渇している模様。特に「中国を理解した中国語人材」は少ないようで、どの企業もあの手この手で人材の発掘をしているようです。

そのため店頭では「日本を熟知した中国人日本語人材」が多く採用されており、大都市の百貨店や観光地では中国語による対応が受けられるようになっています。

しかし、それはあくまで東京や大阪などの大都市や京都・北海道に限ったこと。地方の都市では中国語どころか英語人材も足りておらず、インバウンドにおける地方拡散の課題となっています。

同様に、中国語の案内(買い物や交通機関)においても課題は多いように思います。

東京でも日中英などの複数言語併記を見かけるようになっていますが、それは既存の日本語の案内に追記したものが多く、海外からの観光客を意識して「新たに設置する」ケースはまだまだ少なくなっています。

右側通行、左側通行、改札の使用方法や注意点など、日本人には当たり前になっているものでも、海外からの観光客にとっては未知の存在。そのため、中国を含めた「外国人観光客目線」での案内設置も考える必要があるでしょう。

中国モバイル決済の国際化がカギに

すでに多くのメディアで報道されているように、中国ではモバイル決済が急速に普及しており、大都市では「財布を持たずに、スマホだけで買いものに出かける」というライフスタイルが広がっています。

海外ではVISAやMasterなどのクレジットカードも普及していますが、中国ではSNSをベースとしたAlipay、WeChatPayといったモバイル決済が主流です。

それは海外旅行でも顕著に表れています。

今回のHotel.comの調査では「銀聯」の使用率は全体の60%と高い比率となっていますが、昨年比で2%の下落。それに対してAlipayを使用したとの回答は49%と昨年比18%の伸び。またWeChatpayの使用も昨年比13%増加し、50%を上回る数値となっています。

しかしながら、これらはいずれも「中国独自」のシステムであり、利用するのも中国人観光客に限られます。そのため、日本だけではなく、海外でも普及率が高いとは言えず、中国人観光客が不便を感じている様子です。

日本においてみれば、中国のモバイル決済に関する情報が、ようやく広まりつつあるとはいえ、いまだに「銀聯の導入」を考える地方都市も存在しています。AliPay、WeChatPayともに日本でも法人を設立し、代理店を通じた開拓をしていますが、その情報普及が大きな課題となっています。

それでも高い中国の訪日観光ニーズ 狙いは関西

さて、Hotel.comのレポートと同時に、中国の旅行予約サイトの1社である「途牛」も独自のデータによる中国消費者の海外旅行の状況を分析、『2018上半期中国オンライン海外旅行消費報告』を発表しています。

それによると、2018年上半期に同社のサイトを利用した中国の「個人旅行観光客」が訪れた海外目的地でトップが「日本」、次いで「タイ」という結果になっています。

【表】途牛利用者の人気海外目的地

順位 目的地
1位 日本
2位 タイ
3位 シンガポール
4位 インドネシア
5位 ベトナム
6位 フィリピン
7位 マレーシア
8位 サイパン
9位 モーリシャス
10位 スリランカ

出所:『2018上半期中国オンライン海外旅行消費報告』を基に中国トレンドExpressにて制作

 

日本への観光は「温泉の旅」や「雪見」、そして「花見」といったテーマ性のあるルートが人気となっており、そのシーズンも春節&雪見が重なる2月ごろ、そして桜の季節の4月ごろが多いと報告されています。

その中で、日本の人気スポットを見てみると、「大阪城公園」や「ユニバーサルスタジオジャパン」、「金閣寺」といった関西の観光地が並んでいます。


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【表】中国訪日観光の人気スポット(順不同)

エリア スポット
大阪府 大阪城公園
大阪府 ユニバーサルスタジオジャパン
京都府 金閣寺
東京都 浅草寺
静岡・山梨 富士山
東京都 二重橋(皇居)
奈良県 奈良公園
山梨県 忍野八海
東京都 明治神宮
京都府 清水寺

出所:『2018上半期中国オンライン海外旅行消費報告』を基に中国トレンドExpressにて制作

上述の観光地は中国トレンドExpressのクチコミデータランキングにおいてもうかがい知ることができます。

トレンドViewerにおける上記スポット(二重橋を除く)を見てみると、ほぼいずれもが100位以上となっています。

【グラフ】上記人気スポットのトレンドViewerにおけるランキング推移(2018年1月~7月)

風光明媚な忍野八海が新たな人気スポットとしてランクを上げている反面、東京の人気スポットである浅草寺は徐々にランクが下がっているように見え、東京以外のスポットへ興味が向いていることが見て取れます。

また100位圏外ではありながら、徐々に人気を上げているのが大阪城公園。ここには昨年、新しいスポットであるTHE LANDMARK SQUARE OSAKA(ザ ランドマークスクエア オオサカ)」がオープンするなど、話題に事欠いておらず、今後も注目される観光地となっています。

こうした中国からの訪日観光客の関西人気、その背景にあるのは関西には比較的伝統的な日本文化スポットが多く存在していること、また中国訪日観光客の主目的が「文化を体験する」というニーズへと向かいつつあることが関係しています。

もう一つはリピーターの存在。初めて日本へ行く場合は「まずは東京」となりますが、近年の訪日観光のハードル軽減からリピーターも増加中。「東京以外の、より日本文化の色濃い場所へ」というニーズが増えていることを感じさせます。

中国観光客は情報が早く、新たなスポットを次々と開拓していきます。今後の観光客獲得においては、冒頭の「改善点」を念頭に置きながら、積極的な情報発信が重要性を帯びてくるでしょう。