【訪日中国人】2018年の国慶節、中国の観光客はどこへ行った?
2018年の国慶節も終了。今年は自然災害という予期せぬ出来事に見舞われ、観光への影響が心配されました。今回はトレンドViewerの機能を活用し、国慶節中の「行った」クチコミランキングを分析。昨年2017年の人気スポットと比較しながら見ていきましょう。
■データ
トレンドviewerにおいて
- 2018年9月26日~10月9日
- 2017年9月27日~10月10日
の「行ったランキング」を抽出、比較。
集計を行った期間中の「行った」クチコミ件数は、合計16万4594件。昨年の約14万件から2万件以上の増加を見せています。
また、書きこまれたスポット名も、2017年は319か所であったのに対して、2018年は326か所と微増傾向にあり、中国人観光客が訪れている場所が徐々に増えていることが感じられます。
TOP2は安泰も、順位の入れ替わり激しい国慶節インバウンド
さて、気になるランキングですが、今回は上位20か所を見ていきましょう。
【表】2018年国慶節期間に「行った」とつぶやかれたスポット
2018年順位 | 2017年順位 | スポット名 |
---|---|---|
1 | 1 | 沖縄 |
2 | 2 | 札幌 |
3 | 6 | 奈良公園 |
4 | 19 | 由布院 |
5 | 17 | 明治神宮 |
6 | 21 | SUNTORY山崎蒸溜所 |
7 | 3 | 清水寺 |
8 | 24 | 鹿苑寺金閣 |
9 | 60 | ドン・キホーテ |
10 | 26 | 別府温泉 |
11 | 13 | 通天閣 |
12 | 201 | 京都駅JR伊勢丹 |
13 | 98 | 芦屋 |
14 | 36 | 那須 |
15 | 29 | 慈照寺銀閣 |
16 | 43 | 大磯 |
17 | 240 | 新橋 |
18 | 14 | 富士山 |
19 | 40 | 修善寺 |
20 | 27 | 大阪城 |
TOP20を見てみると、国慶節に限ってみても順位の入れ替わりが大きいことがわかります。
「由布院」は博多空港から直接バスなどで行けることもあり、中国人観光客からの人気が高かったのですが、今回はなんとTOP5に食い込む健闘を見せています。
また「SUNTORY山崎蒸溜所」は、ジャパニーズウイスキー人気と相まって、その味の秘密を訪ねる中国人が増加し続けた結果のランクインとなりました。
そのなかで、やはり強いのが「沖縄」です。今年は国慶節スタート時期に台風24号の影響があった沖縄でしたが、台風が過ぎてからは相変わらずの人気を見せ、昨年同様1位をキープしました。
ただ、クチコミ件数そのものはやや減少しており、台風の影響が全くなかったわけではないようです。
また2位は「札幌」。直前に地震があった影響が懸念されましたが、昨年同様の2位にランクインしており、北海道の健在を示しています。
大きく順位を上げたスポットには2017年の240位からTOP20入りを果たした「新橋」があります。
これは、東京のおしゃれ人気スポットである「お台場」へのアクセスが良いという理由が考えられます。特にゆりかもめはお台場へのアクセスとしてだけでなく、東京湾の眺めを楽しむロケーションなども人気となっています。
実際に「お台場」も昨年の140位台から50位以内までランキングを上げており、この双方を楽しむ旅が今後も人気となりそうです。
また同時に、日本のドラマ『孤独のグルメ』や『深夜食堂』人気によって、日本の名物ともいえるサラリーマンの集う居酒屋への興味が高まっているという背景もあるのかもしれません。
また大きく順位を上げたのは「京都駅JR伊勢丹」。正式名称は「ジェイアール京都伊勢丹」です。
同スポットは「伊勢丹」としてのショッピングニーズ以外にも、日本の味を堪能できるグルメスポットとしての人気が高い場所です。
特に2017年の国慶節シーズンに旅行情報クチコミサイトなどで紹介される機会が増え、一気にランクを上げましたが、その後に2018年春のお花見シーズンなどクチコミを積み上げてきた結果、上位に食い込むまでになっています。
クチコミにも見る震災の影響。関西圏は依然として人気
今年の国慶節での懸念材料となったのは、直前に見舞われた自然災害。
訪日中国人から強い人気を誇る大阪、北海道の両都市が前者は台風、後者は地震という自然災害の被害を受けました。
同情報は日本だけではなく、中国でも大きく報道され、LCCや中国東方航空といった航空会社がフライトを取りやめるなど、大きな影響がもたらされました。
しかし、国慶節期間中の「行った」クチコミを見る限りでは、その影響はあまり大きくないようです。
2017年に比して「清水寺」こそランキングを下げましたが、それ以外の関西の有名スポット、「奈良公園」や「鹿苑寺金閣」、「通天閣」といったスポットは軒並み昨年より順位を上げており、災害を気にせず訪れていることがわかります。
ただ、興味深かったのが「新大阪」が昨年に比べて大きく順位を上げていること。
これはおそらく新幹線の「新大阪駅」を示していると思われます。先の台風被害を受けた関西空港は、9月21日には全面再開をしていましたが、その情報を得ていなかった観光客が新幹線で大阪および関西圏に向かったことと予想されます。
しかし折悪しく台風24号の影響を受けた中国人観光客もいたようで、Weiboには遅延についての書き込みが散見されました。
人気の変動の背景にあるのは??
さて、こうした順位の入れ替わり、その背景にあるのはやはり「日本情報の取得の速さ」にあるでしょう。
中国消費者は日本人が思うよりきわめて売りも速いスピードで日本の情報(商品、人気スポット)を収集しています。
その情報源となっているのは、一つには日本在住の中国人たち。留学生やすでに社会人となっている人たちが、中国SNS上の自身の情報発信の中で多くの観光スポットを紹介しています。
もう一つは、こうした背景を受けて「日本情報を専門に扱うWeChatメディア」が存在しているということ。こうしたメディアはKOLとはまた異なった視点で日本の観光や娯楽、芸能の情報を中国向けに発信しているのです。
興味深いのは、新しいスポットを発掘する動機となっているのが「有名な観光地は中国人が多すぎる」というもの。
すでに「訪日ハードリピーター」となっている中国消費者が現れていますが、彼らは「日本に来たのに日本っぽさが味わえない」と、中国人観光客が集まる場所を避ける傾向があります。
こうした訪日リピーターは常に新しいスポットの情報を求めており、前述のようなWeChatメディアや日本に住む友人の伝手などを使って情報を集めているのです。
現在、越境ECの新しい形として「日本在住のソーシャルバイヤー」の存在が大きくなっていますが、訪日PRにおいても彼らに頼る部分が出てくるのかもしれません。