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【越境EC】ダブルイレブン直前の上海は?「11」で彩られる直前レポ

徐々に近づいてくる11月11日。そう、それは中国においてメーカーにとっても消費者にとっても最大の山場の日、「ダブルイレブン(双十一 独身の日)」。近年、日本ではその売上金額などが大きく報道されますが、その実態、特に中国消費者の動きに関してはなかなか把握できていない様子。そこで中国トレンドExpressでは、2018年のダブルイレブンに中国消費者に対する追跡取材を敢行。まずは直前の上海市に潜入し、ダブルイレブンシーズンの街、そして消費者の様子をウォッチしてきました。


最大の消費イベントならぬ「プロモーション」イベント

2018年のダブルイレブン、実は例年とは少し意味合いが違います。それは今年が「ダブルイレブン10周年」の年であること。

2000年代半ばごろから大学生の間に広まった「光棍節」。パートナーのいない独り身たちが集まってパーティを行うというのに目を付けたのがアリババグループのECサイト「Taobao」でした。

「独り身の寂しさをネットショッピングで紛らわそう」と訴えかけたのが2008年。それから早10年。今では大学生だけではなく、老若男女、世代・性別・立場、そして会社を問わず、ほぼ中国全土を巻き込む、中国最大の小売りイベントへと成長したのです。

その10周年ということもあり、街は至るところで「T-Mall」、「JD.com」の2台巨頭、さらには大手家電小売でECにも力を注いでいる「SUNING」の看板が目につきました。

上海浦東国際空港に到着すると、出国手続きへ向かう道の電光掲示板もダブルイレブン。化粧品ブランドなど、日本でも注目される商品類以外にも、日系のお菓子メーカーや中国老舗の調味料メーカーなど、ここぞとばかりに「ダブルイレブンキャンペーン」を展開。消費者のへの訴求を強めています。

浦東空港に降り立ったとたんに見えてくるダブルイレブンの宣伝

こちらは中国老舗の調味料ブランド

家電小売り大手のSUNING(蘇寧電器)もニューリテール型でイベントを展開

また、今年初参戦という企業も少なくありません。こうした初参戦のブランドの多くが、ダブルイレブンで狙うのは売り上げ金額や販売個数ではなく、中国消費者に対する「認知度向上」。

ほぼ誰もが注目するダブルイレブンに合わせて大きな露出を広げていくことで、中国消費者からの認知を獲得しようというもの。

上海市内「中山公園」駅の地下道は、まさに初参戦となる健康器具メーカー「SLENDERTONE」の広告でPRジャック状態。同社は上海市内の大型商圏のひとつである中山公園駅をターゲットに定めています。

同駅は地下鉄3号線、4号線、13号線が交わるジャンクションであり、すぐ近くには駅名にもなっている大きな公園・中山公園があるエリア。「龍之夢」という大型ショッピングモールや地下ショッピングストリートがあることから、多くの通行量が見込まれるスポットです。

SLENDERTONEではその地下街の一角の看板スペースをジャック。通行する消費者の目に繰り返し飛び込んでくることから、その名前や商品を印象付けようという狙いです。

SLENDERTONEは中山公園の地下街を使って大々的なPRを実行中

初参戦あれば、すでに中国で知名度と人気を得ているブランドは、新たな手法でのプロモーションも展開中。

欧米系ファストファッションの老舗・ZARAではWeChatミニプログラムを利用し、モーメンツ上に広告を展開することで、独自のダブルイレブンセールを訴求しています。

WeChatミニプログラムで展開しているZARAのプロモーション

これはすでに一定の知名度を得ており、WeChatなどでもすでに多くのフォロワー数を抱えているからこそなせるワザ。勝ち組の余裕なのでしょうが、同時に手を抜かずにダブルイレブンを攻めている熱意は参考になります。

いかにして自分の「存在」を知らしめるかが勝負の時期

このようにダブルイレブンは、多くのメーカーにとって自身の存在を知らしめる、もしくは再確認させる重要なプロモーションシーズンなのです。

特にECという空間では、一度に無数の競合と横一線での勝負。つまり、一つでも多くのクリックを獲得し、十店舗が存在していることを知らしめ、今後の顧客を囲い混むことが重要ミッションとなるのです。

それはECモールに出店している場合も、独自のECサイトを展開している場合も同様。特にECモールに出店していると「モールが宣伝してくれるだろう」と思いがちですが、モールは「モールの宣伝」に集中するため、ブランドはそのモールに入ってきた消費者を自力で捕まえに行く必要があります。

そういった消費者にモール内で自社商品を見つけてもらうためには、このような「モール外」での力の入ったプロモーション活動が重要なのです。

ちなみに海外のブランドでは「中国はダブルイレブンが勝負だから!」と本社に掛け合うことで「広告予算が取り安かったり、すでにダブルイレブン予算を組み込んでいる企業も」(外資系メーカー勤務の30代女性)あるそうです。

ブランドの大盤振る舞いは、消費者も戸惑うキャンペーン

こうしてECサイトだけではなく、ブランドも盛り上がるダブルイレブンですが、消費者の側はどうなのでしょう?

もちろん「ダブルイレブンだ!買うぞ!!」という声が大多数なのですが、同時に「今年はどうしよう…?」と戸惑う声も聞こえてきます。

その理由は「サービスがわかりにくい」というもの。

 

上海市内で話を聞いた30代の女性は、ダブルイレブン初期から参加(商品を購入)しているそうなのですが、今年について話を聞くと「今回はもう少し様子を見てから」と話しています。理由として挙げたのが「“看不懂(読めない、わからないの意)”」。

つまり、サービスが複雑すぎて、なにをどうすれば安くなるのか、本当に安いのかがわからない、というのです。

彼女いわく「昔のダブルイレブンはわかりやすかったわ。5割引きとか6割引きとか、単純に“安い!”って感じがしたけど、去年あたりから、よくわからなくなっちゃって」とのこと。

昨年には「ダブルイレブン数学」などという言葉も現れたほど、多種多様なサービスが飛び交っていましたが、それは今年も健在。

ブランド側としてはより多くの消費者を引き付けるために、「紅包」を使ったり、「〇〇元購入で〇〇元キャッシュバック」などなど、知恵を絞ってあの手この手でお得感をPRしているのですが、それが重なりすぎて、かえって消費者の戸惑いを招いてしまっている様子です。


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中国の消費者は、こうしたキャンペーンを「紐解いて」、「分析して」、「計算して」買う、という高難度を潜り抜けての購入となっているようです。

では、購入者数は減るのか?という不安も生じてきます。しかし、実際にはその高難度のサービス紐解きをクリアして、すでに予約も済ませている人も数多く存在しています。

 

上海でインタビューに答えてくれたある女性はこのように言います。

「正直に言うと、ダブルイレブンで何を買うかってあんまり考えていないんです。でも、“ダブルイレブンだから何か掘り出し物があるかもしれないし!”って思うと、チェックせざるを得ないんですよね」(30代女性)。

春節に餃子、中秋節に月餅、そしてダブルイレブンには「買い物」。ECで買い物をしないと11月11日じゃない。ダブルイレブンは、すでに中国の「風物詩」となっているようです。