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【中国越境EC入門】 いまさら聞けない! 越境ECとは?!~第1回~

今年ももう3月、年度末です。この時期、企業内で本格的に動くのが人事なのですが、近年日本のビジネス界でますます注目されているのが中国市場。そのため、中国事業担当部門の人材強化を図っている企業も少なくなく、増員なども考えている企業もあるようです。なか、新たに「中国事業担当」となる方も少なくありません。そこで3月のこの時期、中国トレンドExpressでは新任中国事業担当者向けの基礎知識コンテンツを配信いたします。もちろんベテランの方が基礎の再確認のために使っていただいてもOK。

その第一弾として今も熱い視線を注がれている中国向け販売チャネル、「越境EC」についておさらいします。


越境ECとは何?

越境ECとは読んで字のごとく、中国国外の企業がE-コマースによって中国の消費者に直接商品の注文を受け付け、海外から商品を発送するビジネスモデルをいいます。

なんでこんな形で取引を行うのでしょう?

 

まず、どこの国にも商品を販売するための手続き、決まりがあります。特に食品や化粧品、薬といった使用の仕方によっては直接消費者の健康に影響するかもしれない商品には、どの国も厳しいレギュレーションを設けており、安全な商品の輸入に気を配っています。

また企業が海外で商業活動を行う場合、相手国の企業を代理商にしたり、もしくは直接現地法人を設立したりと、非常に煩雑な手順を踏まなくてはなりません。

 

しかし、一部の消費者はこうした自国内では販売されていない、かつ他国できちんと販売されている商品を欲する場合があります。

それを手に入れる方法として注目されているのが越境EC。

この方法であれば、自国内で正式に販売許可を得ていない場合でも、いわゆる「個人輸入」というモデルで購入することができます(もちろんワシントン条約対象商品や自国内での流通が禁止されている麻薬、武器などは除きます)。

中国は最大の越境EC市場~関税優遇~

最近の日本のビジネス界で「越境EC」とうと、もっぱら「日中間の越境EC」を連想する人が多くいます。

実際、日本と中国における越境ECビジネスは拡大の一途をたどっており、日本を代表するシンクタンクである富士経済では、日本の対中国越境ECは、2019年には2兆1000億円規模にまで成長すると予測しています。

 

【資料】中国の越境ECをめぐる環境

出所:トレンドExpressセミナー資料より

中国の場合は、こうした越境ECによって中国では販売されていない、日本国内の商品を購入しています。

前述のとおり中国でも個人輸入に関しては、比較的規制が緩く、関税に関しても「1回の取引金額5,000元以内、かつ、個人の年間取引金額合計2万6,000元以内」であれば減免となると規定されています。

ちなみに、これは2018年10月に発表されたもので、それ以前は「1回の取引金額2,000元以内、かつ、個人の年間取引金額合計2万元以内」。すなわち減免範囲が拡大されたわけです。

ここからも中国が越境ECビジネスを奨励していることが見て取れ、中国消費者としては越境ECで購入しやすい環境となっています。

大きく分けると「直送型」と「保税区型」

この越境ECのモデル、中国には日本を含めた海外の商品を扱う多くの越境ECプラットホームがあります。それらについては次回で詳しくお伝えするとして、今回は押さえておきたい2つのタイプを整理します。

それが「直送型」と保税区型」と呼ばれる2つのモデルです。

 

直送型とは、読んで字のごとく、日本から商品を注文した中国国内の消費者に直接商品を輸送すること。郵送には国際郵便であるEMSが利用されます。

ただ、このタイプは個別輸送になるため、物流コストが高くなってしまうこと、また商品やタイミングによっては税関チェックを受けることで、日数がかかったり、消費者が関税の支払いを求められたりといったことが起こることがあります。

 

もう一つが保税区型と呼ばれるもの。

まず、保税区とは中国政府が設置し、税関が管理している国内倉庫エリアで、保税倉庫区とも呼ばれます。

このエリアに保管されている商品は、いわば「海外に置かれている」ことと同様の扱いを受けるという場所で、もちろんこのエリア内で商品を販売することができます。

この制度を利用し、越境EC向けの商品を一時的に保税区内の倉庫にまとめて輸送して保管。消費者からの注文があった時点で、ここから発送するというモデルです。

日本からの直送とは異なり、中国国内からの発送となるため、配送日数の短縮が可能です。また現時点での制度上は海外からの発送とほぼ同様の扱いとなるため、煩雑な販売許可などの手間を削減した海外商品の販売が可能になります(この制度は今後変更が加えられる可能性があります)。

ただし、いったん保税倉庫に入れた商品が売れなかった場合、自国に戻すためには高いコストを支払う必要などがあるため、販売予想を綿密にしなくてはいけない、一定のリスクを負わなければなりません。

 

【資料】越境ECモデルの違い

出所:トレンドExpress 越境EC事業部

なぜ海外の商品を欲しがるの~中国の消費者心理~

さて、このような越境EC市場の拡大を支えたのは、中国の消費者が日本を含む海外の商品を強く望むという傾向があることです。

 

中国国内では現在「消費昇級」と言われるように、消費者がより良い商品、特に安全・安心の商品を求める意識が強まっています。

一つには個々人の経済状況がよくなり、質の高い商品を求められる条件が整ったこと。もう一つは、そうしたニーズを満たす国内の商品が少ないことがあります。

中国国内のメーカーも、近年その製品レベルやデザイン性が向上していますが、消費者にとってはかつての品質問題(毒ミルク事件や地方で流通するコピー・劣悪商品)などの印象がぬぐい切れず、あまり国内商品に期待しない、という意識があります。


▼参考記事

医師が薬用酒に提言したら即「逮捕」!?  中国で「広告」が信じられないワケ(1)

医師が薬用酒に提言したら即「逮捕」!?  中国で「広告」が信じられないワケ(2)


それに比して「日本ではニセモノが無い」、「日本人は安全意識が強い=日本人が買っている物なら安全であるはず」というイメージが強くあることから、日本国内で販売されている日本人向けの商品を購入したがるのです。

 

しかし、多くの日本ブランドでは中国国内で生産し、中国市場向けに投入していますが、それに対して「日本の企業は信用できても、その途中が…」や「中国消費者に向けてと言いながら、自国内よりもレベルの低いものを売ろうとしているのでは」と言った誤解などがあり、同じ日本ブランドでも「日本国内版>中国生産版」という意識でいる消費者も依然として多い状況です。

 

中国でも冷めやらぬ日本商品人気。この波を上手につかむためにも越境ECについて理解しておく必要がありそうです。

次回は中国の越境ECプレイヤーについてみていきましょう。