【越境EC】 上海で聞いてきました! 電子商務法と中国消費者の微妙な関係~後編~
1月から施行された電子商務法。その施行後の様子を消費者目線で聞いてきた上海現地取材。現在は「あまり変わっていない」というお話が聞けましたが、今回はソーシャルバイヤーをどのように見ているのかについて、ざっくばらんな意見を頂いてきました。
基本的なソーシャルバイヤーの捕まえ方
前回のお話しの中で、「2月末時点では」、通常通り稼働している様子のソーシャルバイヤーたち。
ではそういったソーシャルバイヤーと、どのように出会うのかを聞いてみました。
ソーシャルバイヤーとの接触のルートを大別すると、「友人の紹介」というケースが多かったようです。実際に友人が利用していて評価が高かったので教えてもらったというケースですね。
では「その友人が知ったきっかけは?」というと、ほぼ「そのまた友人の紹介」となり、最終的には「誰かの親戚」や「元同僚」となるケースがほとんどだとか。
ただそれ以外では、なんと「インバウンドがきっかけ」というケースも多く聞かれました。その内容をまとめると以下のようなルートが考えられます。
- 旅行会社のスタッフ、クルーズ船のスタッフ
- 訪日時に使った車の運転手
- ビザの代理会社の人
また、利用しているソーシャルバイヤーの属性としては、
- 留学生(一般に買えないもの。日本国内限定品などを頼む)
- カリスマ代購(KOL的存在)
- 個人で起業してソーシャルバイヤー業を行う人
- 主婦(中国国内在住のハンドキャリータイプ)
といった方々が多いようです。
特にこうした人たちが中国のフォロワー向けに発信している日本の商品情報は、非常に高い関心を払われている様子。
「特にアパレルですかね。試着した時に写真を撮って送ってもらうと、デザインや着た時の感覚がよくわかって助かっています」(前回お話を聞いたSharenaさん)と、現場情報ニーズを語ってくれました。
電子商務法の影響はあるものの、前回のように「日本の商品は欲しい」や「代購は必要なチャネル」、「日本トレンドの情報源」というニーズ・意識に変わりはなく、今後の付き合い方も考えさせられました。
代購のライバルとは? 消費者も豊富な選択肢
さて、今回お話を聞いているなかで、少し興味深いことを語ってくれた消費者の方がいました。それは「ソーシャルバイヤーにとっての最大のライバルは電商法ではない」というもの。
語ってくれたのはDragonflyさん(80後・女性)は「代購も使っているけれど、越境EC、例えば“洋碼頭”や“別様(欧米商品を扱う越境EC)”なども使っています」という、海外商品ファン。
小さな広告会社で働きながら、同時に中国国内のメーカーと情報交換をしている人物です。
彼女が言うには「代購も使うけど、タイミングによっては越境ECの方が安いので、時々切り替えています」ということで、中国特有の「どこならお得に、確実に買えるか」という意識が働いているようです。
さらにDragonflyさんは「ダブルイレブンのようなECプラットホームのイベントは、確実にそちらで買った方がいい」と言います。
その理由についても細かな分析を教えてくれました。
いわく「大手のプラットホームや小売店は、イベント時に自分たちの利益を抑えて販売価格を下げられるじゃないですか。その分はどこか別の売上で補完できるから。でも代購は小売りで購入して輸送する、もしくはハンドキャリーなら自分の渡航費用だってかかる。その分って、大手プラットホームみたいにキャンペーンだからって値段下げられないですよね。だから大規模イベントの時は代購より大手サイトで買った方がお得なんです。」
きちんと「価格構成」を理解している中国の消費者らしい分析。さらに別の消費者は、近年の中国メーカーの動きを紹介してくれました。
彼女のような回答は、今回の取材でも少なくはなく、「いくつか異なる商品を一括して買うのであるなら、ソーシャルバイヤー」、「それ以外で、もし越境ECで買えて、価格が下がっているなら越境ECで」といった声が聞こえました。
以前は「越境ECより信頼できる」と言われており利用されていたソーシャルバイヤー、もちろん「日本の商品を購入するためのチャネル」であることは間違いないのですが、「絶対的なチャネル」ではなく、「選択肢のひとつ」となっているようです。
特に昨今は越境ECがダブルイレブンや618以外にも、細かなキャンペーンを展開しながら販促活動を行っていることから、中国消費者に対する日本商品販売でも価格競争が起こっているような印象を受けます。
よく「中国の若い人は多少高くても買う」という印象がありますが、例えば同じ商品で越境ECとソーシャルバイヤー、訪日観光時の購入と並んでいた場合、やはり「安い方」に流れるのは共通の消費者心理であると思います。
侮りがたし国内メーカー。消費昇級の先には…。
またDragonflyさんは「中国国内メーカーの動きも、代購は注目したほうがいい」と語ってくれました。
近年の傾向として外資系化粧品メーカーからOEM生産を受託している中国企業が、受託している商品と同レベルの商品を開発、自社ブランドを立ち上げているとのこと。
その際に「○○(外資系メーカー)と同効果」を詠いながら、価格は国内ブランド並なので、消費者も手を伸ばしやすくなるそうです。
そうなると、消費者は海外ブランドの商品をわざわざ越境、インバウンド、代購で買う必要性が薄まっていくので、今後は「必ず日本の商品でなければいけない」という理由付け、機能性やその訴求方法がより重要になってくるように考えられます。
また同時に、商品を販売するチャネルに関しても、消費者がどういった心理でそのチャネルを利用するか、そのタイミングの特徴など、消費者心理を読んだ複数の販売チャネルを構築する必要があると言えるかもしれません。