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【中国消費者権益デー速報】今後の中国市場の発展は? 315中国消費者権益の日特別報道から見る

中国が近年、特に強化を訴えているのが「消費者権益の保護」。毎年3月15日の消費者権益特別番組では、こうした消費者の権益保護のために、摘発の度合いを強めています。そういった中国の消費者保護施策からは中国政府の市場の在り方の考え、消費者の意識などが見えることが多く、中国マーケティングにとっては貴重な情報です。

2019年も引き続き、29回目を迎える「315晩会」報道を見ながら、中国市場の整備について考えてみたいと思います。

電商法に関する報道無く、生活密着型の課題を

今年初めには電子商務法が施行され、その後大きな動きが無いままでいましたが、「315では何かしら方針が出されるのでは…」と緊張した雰囲気で多くの企業さんが気にしていましたが、今回は昨年同様、海外からの輸入品や外資企業、さらにはECに対する摘発などは報道されませんでした。

 

ポータルサイトの「新浪網」では315特設ページを設け、消費者からの苦情を受け付けており、その中に一部海外商品に対する品質問題(化粧品の中に鉄くずが入っていた)が述べられていましたが、販売した「洋碼頭」が即時対応を見せており、大きな問題にはなっていません。

 

では何が問題として取り上げられたのでしょうか。今回、摘発対象になったテーマを上げると、下のような内容になります。

  • 医療廃棄物の不法再利用
  • 汚泥にまみれた子供のおやつ工場
  • 普通のタマゴと変わらない「付加価値ハイエンド」タマゴ
  • ハイテクノロジーを駆使した「迷惑営業電話」(Wi-Fiからの電話番号解読システム付き)
  • 医療保険管理用APPを用いた個人情報取得
  • 薬剤師免許、医師免許を「借りた」薬局・クリニック経営と免許仲介業
  • おむつの不法再利用による大人用(老人用&妊婦用)おむつ生産
  • 電子タバコ(≠加熱式タバコ)の安全性検証
  • 家電設置、修理会社の詐欺行為
  • 銀行カード(銀聯)の「かざすだけ支払い機能」の安全性問題
  • APP金融の高利貸しのワナ

とまぁ、なかなかに盛りだくさんの内容でした。
※個別の内容に関してはここでは省きますが、ご興味のある方は弊社編集部までお問い合わせください

今後の経済は地方が舞台に?テーマから見える事

今回の315特別報道、全体のテーマを並べて見て感じられた特徴として言えるのは、「食品・衛生」と「ITを駆使した犯罪」であり、同時にそれらの舞台が「地方」すなわち、北京、上海、広州、深圳といった1線都市ではなく、2線以下の都市に集中していたことでしょう。

 

前者の「食品&衛生」の問題は、中国では古くからある問題ですが、それが昨年からも2線及びそれ以下の都市の問題がクローズアップされています。

 

一昔は上海などでもこうしたニセモノや非合法食品などが出回っていましたが、こうした生産を行う企業が1線都市周辺では少なくなりました。

しかし、これらは2線および2線以下の都市では依然として残っており、こうした地方の業者を重点的に摘発する必要が出てきたと思われます。

 

その原因はやはり、地方都市でも経済状態が良くなり、いわゆる「消費昇級」が徐々に表れ始め、消費者の安心・安全意識が高まっていることがあるように思います。

 

また「ITを駆使した犯罪」に関しては、中国では頭の痛い問題かもしれません。

 

ご存知のように「中国IT」は世界でも認められている技術レベルですが、それが氾濫し、社会にマイナスの要素を生んでいるように思われます。

もともと中国はオフショア開発によって多くのエンジニアがおり、現在でも人気職種です。そのために、多様なアプリケーションの開発をいとも簡単にこなす人材が増え、そのノウハウを悪用する人も増えてきてしまったということなのでしょう。

地方都市のビジネス環境が315で整うか

今年の315特別報道を簡単に分析しましたが、この番組も、ここ数年で性質がずいぶんと変わったと感じられます。

 

一昔前、すなわち中国が市場化したころには、「外資叩き」などというように、意図的に外資企業やもしくは大手の国内企業の「不手際」を指摘し、法の公正を示すことが多かったのですが、ここ数年は「民生」、すなわち直接一般消費者の生活に関わる、そして自己中心的な利益追求をする国内の地方企業の問題を取り上げることが増えています。

 

それは繰り返しになりますが、今後の中国市場の主力が、1線都市から2線、3線都市へと移ってきている、地方都市の消費者が沿岸都市の消費能力に追いつきつつあるということが考えられるかもしれません。

 

ただ、こうした地方都市は市場ルールの順守の意識が追い付いていないことが多い、だからこそ315のテーマの舞台とすることで地方都市の意識改革を促し、そのビジネス環境を整えようという狙いなのかもしれません。

 

番組終了後もしばらくは消費者権益保護の活動が続きます。その動き、そして地方都市での活動など、注意深く見ていきたいと思います。