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【中国EC商戦】「618」でダブルイレブンの勝敗が決まる② ~618で勝ち、ダブルイレブンでも勝つには消費者心理を知るべし~

中国最大の小売りイベント「ダブルイレブン」。その勝敗が「618」で決まる、ということを前回お伝えしました。今回からはその618で勝つための施策について、その考え方について解説、また次回ではその中におけるKOLの活用などについて紹介していきます。

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▼前回の記事は
「618」でダブルイレブンの勝敗が決まる① 2019年上半期最大のEC商戦、まもなくスタート

618の戦略目的をどこにとるべきか

618は確かに中国の1年のなかで、上半期における最大の商戦。そのため、「売り上げを最大化すること」が、最初の目的となります。

 

しかし、繰り返すように618はその5か月後にやって来るダブルイレブンへとつながる重要な商戦。

そのため、618では当期間内の売上を最大化する事だけでなく、「それをどうダブルイレブンにつなげるか」を考えながら施策を展開する必要があります。

618を活用してダブルイレブンの購入者となるファンを増やす、すなわち「店舗資産の形成」です。

 

下の図は、中国で人気の化粧品ブランド「ランコム」の年間クチコミ推移です。これを見ると5月にクチコミ件数が大きく伸び、その後10月、そしてダブルイレブンの11月で最大化しているのが見て取れます。

 

ランコムのクチコミ件数の推移

ランコムは618シーズンに合わせて、「Weiboハッシュタグキャンペーン」を実施することで商品のUSPをより強くユーザーに浸透させ、さらに618の商戦期に合わせてクチコミ拡散を行うことでブランド認知拡大を大きく牽引しました。

 

留意すべきは、その件数が618を過ぎた7月、8月になってもあまり衰えを見せていないことです。これは、ランコムが618だけをターゲットに絞った認知度向上施策ではなく、618~ダブルイレブン、ひいてはダブルトゥエルブなどの年末商戦までを視野に入れた、クチコミ拡散施策を売っていたことを示しています。

その結果、ダブルイレブン時などのキャンペーンにおいても消費者が「あぁ、618で人気だったランコム」といった形で商品の情報などをすんなりと受け入れ、ダブルトゥエルブなど年末商戦期にさらにクチコミの露出の向上につながりました。

「618で勝ち、ダブルイレブンでも勝つ」を地でいった好例と言えるでしょう。

消費者の行動フェーズに合わせた施策展開がカギに

ではこうした、クチコミが継続していく施策はどのように作ればいいのでしょうか?

それにはまず、中国消費者の情報収集→購買→共有までのプロセスを理解する必要があります。

下の図は、中国消費者の行動パターンをまとめたものです。

 

中国消費者の情報収集~購入後までの行動パターン

まずWeibo上(ニュースメディアやその他媒体の公式アカウント、KOLの発信情報など)やメディア上の広告、企業のプロモーションなどで、ブランドや商品の情報に触れます。

それが直接購入につながるケースは極めて少なく、SNSなどを使って得た情報を精査します。この際、多く使われるのが「小紅書(RED)」。

そのAPP上で検索をかけ、「どのくらいの投稿数があるか(投稿数が多い=話題)」や使用感など、より深い情報を確認していきます。

 

その商品の購入に興味を持つと、今度はECサイトなど商品を売っている場で情報を集めます。価格だけではなく、買った消費者のクチコミなど、細かくチェックしているようです。

最近は、日本を含めた海外の商品に関しては当地に住んでいるソーシャルバイヤーにそれらの情報を聞くことも多いようです。

 

そしてようやく購入フェーズ。ただここでもいくつかの選択肢があります。

①T-MallやJD.comなどの大手ECサイト、②前述のソーシャルバイヤー経由、③日本の商品であれば日本に行った際に買う、④身近に日本に行く人がいれば購入を頼む、といった具合。

 

ダブルイレブンを視野に入れた施策を打つのであれば、これらのフェーズそれぞれで施策が必要となります。特に上図の中の「認知」から「興味・理解」、そして「検討」へと続くフェーズの施策を立体的に考えていくこと、すなわち消費者の間での「ザワめき」を起こすことで、618からダブルイレブンへとつながる、クチコミの連鎖を繋げることが可能になるのです。

 

近年では「とにかくKOL」という手法を選択する企業も少なくありません。

しかし、有名KOLによる情報発信は爆発的な効果を生みますが、持続力が弱く、多くの場合「認知フェーズ」に限った一過性のクチコミ増となってしまいます。

これではダブルイレブンまでを視野に入れるどころか、618商戦を戦うのにも不十分。KOL施策そのものは極めて有効な情報発信ですが、それを「認知・理解フェーズ」そして「検討フェーズ」へとつなげるためには、それを念頭に置いた設計が必要となるでしょう。

 

次回はこうした消費者の心理をベースにした「ザワめかせるKOL活用ノウハウ」をご紹介します。

 

■2019年の618を勝ち抜く戦略はこちら