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「令和」まであと少し。 ちょっと気になる、中国消費者は日本の「皇室」「改元」をどう見てるの?

あと半月ほどで「平成」が終わりをつげ、「令和」へと移り変わります。すでに宮中では、この代替わりに関した一連の儀式が始まり、日本の憲政施行以来、初めての退位および新たな天皇の即位が行われます。

こうした日本国内の盛り上がりに対して中国はどのように見ているのでしょうか?Weiboなどネット上のクチコミを見てみると、中国における日本観も少しずつ変化していることが見てとれます。

始める「令和」ルーツ探し。出所候補に「史上最強の汚職役人」?

まず、4月1日の「改元」。中国でもSNSだけではなく大手メディア各社も大きく報道しました。

これらの報道の多くは、「5月1日からの新しい元号が発表された」という、非常に客観的な、事実を伝えるものでした。

 

Weibo上の「日本情報専門アカウント」では日本のニュースを見ながら記事をアップしていたようで、中国の消費者もほぼリアルタイムで「新元号発表」をチェックしていたようです。

 

元号の発表後、中国のSNS上では日本同様に「名探偵コナン」の主人公・工藤新一の今後を心配する声が上がりました。つまり「新一くんは、もう平成のシャーロックホームズにはなれないの?」といった日本のネット上の声が波及したものです。

 

その後起こったのが、「令和」のルーツ探し。

 

公式には出典は『万葉集梅の歌の序』とされており、そのために「脱中国の現れ」という声が上がりましたが、同様の表現が、中国後漢時代、張衡の『帰田賦』に見えられることから、「これがルーツで、日本は中国文化から脱していない」といった声が、中国のネット上などから巻き起こりました。

 

ただ、その後、それが徐々にゲーム化。Weiboなどで「中国の古典から“令和”の記載探し」が始まりました。

 

その中で多くの指示を得たのが『清史稿』(中華民国で編纂された清朝の歴史をまとめた記録書。完成していないので“稿”なのです)にある「乃賜令和珅自尽」という一文。

書き下すと「すなわち、和珅に自尽を賜しむ」となり、「(皇帝が)和珅という人物に自殺を命じた」という意味になります。

和珅は清朝中期の高官で、乾隆帝の寵愛を受けて権勢を振るい、「中国市場最大の汚職役人」となった人物。結果、次の皇帝である嘉慶帝に自決を命じられて一生を終えましたが、その際の記述が「令和の出所なのでは?」と話題になったのです。

 

これはもちろんSNS上の冗談に過ぎませんが、中には中国の史書からとにかく「令和」とつく記述を探してアップしている人もおりました。

理由としては「ほら、やっぱり中国がルーツじゃないか」と言いたいだけのような気がしますが、日本の改元をきっかけに自国の古典、歴史書を開くことに繋がっているようです。

 

さらにもう一歩踏み込んで、日本の「改元」などに関する中国の反応を見てみましょう。

天皇皇后結婚60周年にざわめき。

改元の話題が伝えられてから、中国では日本の皇室の動きに注目が集まっていますが、その反応からは非常に興味深い傾向が見られます。

 

その代表的なものがWeiboメディアの「微天下」が伝えた「天皇・皇后両陛下ご結婚60周年」の話題。

かつて日本の「天皇制」に関しては、中国では「封建的」であるとか、過去の歴史と紐づかせて感情的な発言が多くを占めていました。

しかし、今回このニュースに関する書き込みを見てみると、確かに感情的、ネガティブな表現も依然見られますが、それ一辺倒ではなく

  • 日本の皇后、きれいじゃないか
  • 「夫妻相」(夫婦の顔立ちが似ていること。中国では理想的な夫婦とされる)
  • 優雅だね~
  • 若いころの姿がめっちゃキレイ

と、好意的な表現も増えています。

また、中国のニュースやSNSが「天皇退位への儀式が始まる」というニュースを伝えたときも、「文化色漂う儀式だ」、「これが伝統だ」という意見のほか、「これはもともと中国から伝わったもの」「中国の文化のほうがもっと深い…」と、中国の唐代・宋代の歴史を振り返る声が起こるなど、自国文化を再認識するような書き込みが見られました。

アカデミックに「天皇」「日本」を見始めた中国

いずれにせよ、日本の天皇やその交代に関してのネガティブなイメージ、それにともなうクチコミも依然として存在しているのですが、同時にそれを文化的なものとしてとらえる動きが主に若い世代に起こっているようです。

 

いわゆる「アカデミックな日本の見方」です。

 

そのきっかけとなったのは、

訪日観光ニーズの高まりから日本の情報、主に商品や観光情報が入りやすくなりましたが、最近はさらに日本の文化や伝統へと関心が広がっていることが考えられます。

さらに昨今の中国の若者は、こうした伝統文化知識を「ステイタス」ととらえる傾向も強く、それゆえに国民感情をいったん置いて、こうした伝統文化について調べて語る、という行為に繋がっているように見えます。

 

それが、今回日本の「退位」「即位」「改元」という一連の動きが、中国において非常に冷静に、また客観的な興味を持って分析されている背景になっていると考えられます。

 

かつて日中関係が冷え込んだ時期、中国のニュースやSNS上では「日本」の話題=ネガティブといった時期がありました。さらに「天皇制」に関しては、中国でも特別な感情をもっている人も少なくありません。

 

しかし昨今のクチコミを見ていると、今、その状況がいろいろな要因によって変化していることを感じさせられます。

そのよい変化が新しい元号の時代でもつながっていくことを期待したいと思います。