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中国で人気の日本商品を小紅書(RED)で読んでみよう!~日本メガネの新たな活路篇

トレンドExpressが毎週行っている中国ソーシャルメディアにおける日本関連書き込み総件数ランキング。そのランキングから、注目の商品、注目のサービスをピックアップ。中国消費者がハマる背景を探ります。

今回は2019年8月14日~8月20日の「買いたい」ランキングから、『JINS SCREEN』の人気の理由について、今中国の体験共有&ECアプリ「小紅書(RED)」における同商品に関連した投稿を見ながら分析してみたいと思います。

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今週の中国人気商品:「【PCメガネ】JINS SCREEN」

今週は日本の若者のなかでも人気の高いメガネブランド「JINS」をピックアップしてみていきたいと思います。

まずはトレンドViewer「買いたい」ランキング推移を見ていきましょう。

これを見ると初出は130位。2017年3月ごろまでは低迷していましたが、その後徐々にランキングを上げ、今年2019年7月に入ってからはTOP10を伺うまでになっている商品です。

 

同店は当日手渡しで低価格、そしてハイクオリティ。さらには高いデザイン性によって日本の若者からも高い人気を得ていますが、近年は中国進出も加速中。

同社が7月12日に発表した『四半期報告書-第32期第3四半期(平成31年3月1日-令和1年5月31日)』では、5月31日時点で、中国メインランドにおいては141店舗を直営店として経営しており、前四半期に比べ11店舗の増加で推移しています。

 

なかでも中国の消費者の人気になっているのが、いわゆる「PCメガネ」。ブルーライトカット機能を持ったレンズで目を保護することのできるメガネです。

Jinsでは2011年にブルーライトを軽減させる「JINS PC」を、2015年にはその後継商品として、用途に合わせてブルーライト軽減率の異なる3種類のレンズを選べる「JINS SCREEN」を発売しています。

そんなJins、中国でも人気を広げているのです。

近視ではなく目の保護に。進むネット社会で避けられぬ悩み

小紅書(RED)で「Jins」と検索をかけてみると、公式アカウントの表示に加えて、すでに2000件余りの投稿がなされています。

その投稿、ほぼすべてが女性。特に20代~30代の若い女性からの投稿が大半を占めています。

では中国の女性は近視が多いのか、と思われるかもしれませんが、そうではなく、人を集めているのは「ブルーライトカット」のPCメガネなのです。

ご存知のように中国では日本以上のモバイル化が進んでおり、ネットユーザー8億人の100%近くがモバイルユーザーとなっています。

日中は仕事でPCを、家に帰ればスマホで動画やチャット…といったように、日常生活でディスプレイから目を離す時間は徐々に少なくなっています。

 

そこで気になるのがブルーライトによる眼への刺激。

 

もともと勉強漬けのなか、目を酷使してきた若者にとっては目への刺激に対しては敏感。また見た目を気にする若い女性にとって目の充血などのトラブルも避けたいもの。

 

そうした避けられないPC、モバイル社会のなかで、Jinsのメガネは「日本製の持つ品質への安心感」のもと、多くのユーザーに支持されている様子です。

ちなみに訪日観光客で日本でメガネを作った中国人は筆者に対して「メガネの説明、視力測定のプロ感が素晴らしい」と絶賛したことがありましたが、こうしたサービス面も支持されているポイントになっているのかもしれません。

小顔効果+ファッションアイテムに

さて、小紅書(RED)の投稿を見ていて気になったのは、同SNS上にアップされているJins商品の多くが丸型フレームのメガネ。特に細い金属フレームの物が多く、いわゆる「レトロ感」を漂わせるデザインが人気となっていること。

その理由の一つが「小顔に見える」という効果。

円形で、かつ大きめのレンズのメガネは、女性の顔を小さく魅せることで、日本のファッション業界でも紹介されていますが、それは中国でも広く知られており、そのために大きめの丸いメガネを買い求める女性が増えているのです。

「小顔に見えるメガネシリーズ」と銘打った投稿

「顔が大きめの人に超お似合いのメガネ」というタグが付けられたJinsメガネ

しかし同時に多いのが「復古風」というキーワードとともに紹介されるデザイン。すなわち「レトロ調」という言葉です。

実は中国の若者の中で、ちょっとしたレトロデザイン、またレトロな感じのファッションを好む若者が現れているのです。

「超軽い復古(レトロ)メガネ」というタイトルで紹介されるJins

レトロと言っても「民国風(中華民国時代風)」などと言われる、中華民国時代(1911年~1949年)に流行したもの。

特に1920年代や30年代は、ドラマや小説の舞台となることも多く、その時代のいで立ちも中国の若者の目に触れる機会が多いのです。

日本でも時折人気が出る「大正~昭和初期のモダンファッション」人気に近いのかもしれません。

 

同じく小紅書(RED)上で「復古眼鏡(レトロ調メガネ)」と検索してみると、なんと1万件以上の文章があることが表示されましたが、服装などに比べてお手軽にレトロ風格を漂わせることのできるグッズがメガネのようです。

 

中国で多くの日本商品が人気なのですが、実は意外に苦戦しているのが「ファッション」。

オシャレなKOLを見ていればわかるように、北京や上海といった大都市の消費者はファッション情報に関して非常に敏感。

そうした消費者をターゲットに世界のアパレル業界も大都市を中心に店舗を設置し、マーケティングを展開しています。

 

しかし日本のアパレルブランドで「浸透している」と言われるのは、UNIQLOやMUJI(良品計画)といったブランドがあるものの、それ以外のブランドの知名度は高くはありません。

日本のネイルデザインやカラーコンタクトなどに興味を持つ女性も多いのですが、こうした商品は中国国内の製品の方が価格が安く、また品質にも大きな差がないため、日本ブランドも攻めあぐねているのが現状なのです。

 

そのなかで「ファッション・アイテム」としてのクチコミ上人気が高まっている「Jins」。

その秘密は、同商品がブルーライトから目を守りつつ、女性を小顔に見せるだけではなく、中国で徐々に広がる「レトロファッション」を楽む極めて手軽なファッションアイテムとして定着しているのです。

 

日本でも知られているアイテムが、中国でも受け入れられているケースは多くあります。しかし、だからと言ってすべてのアイテムが受け入れられるわけではありません。

受け入れられるには、中国消費者や中国社会それ相応の「理由・背景」があるのです。

往々にして「〇〇社のアイテムが受け入れられるならわが社も!」と短絡的な発想になってしまいますが、そうではなく、その商品が受け入れられる社会背景、トレンドを深くとらえることが不可欠です。それを伝える消費者の言葉に常に耳を傾ける必要があるのです。