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スキンケアだけではない化粧品市場 成長中の中国メイクニーズをつかむには Vol.1

中国でも人気の高い日本の化粧品。インバウンド消費、越境EC、またソーシャルバイヤーなどを通じても多くの商品が中国市場で展開されている。

しかし、そのメインは「スキンケア・基礎化粧品」においてのことであり、もう一つの大きな市場であるメイクアップ市場においては「出遅れ」感が否めない。

スキンケアと同様に成長を続けているメイク市場で日本ブランドが存在感を強めるにはどうしたらよいのだろうか?中国トレンドExpressではクチコミ調査を行い、中国消費者のメイクアップに関する意識を調査してみた。

今回はその中から、まず中国のメイク市場を俯瞰してみよう。

スキンケアに比べ極めて少ないメイクアップ商品投入

まず、トレンドViewerに収録されている「商品数」と「クチコミ件数」から、「スキンケア・基礎化粧品」と「メイクアップ」の状況を比べてみよう。

 

まずはアイテム数。

【グラフ】トレンドViewer2019年上半期「スキンケア・基礎化粧品」とメイクアップ関連商品の商品数

スキンケア・基礎化粧品が100アイテムを超えているのに対し、メイクアップ・ベースメイクを合計しても、30アイテム程度。

 

この背景にあるのは、もちろん日本のスキンケア商品が中国で高い評価を得ていることに他ならない。

中国で消費者に関連内容をインタビューをすると聞こえてくるのが「日本ブランドはやはり安心できる」といった声が多く聞かれる。

直接肌に使用し、されにそれが「吸収される」ことを求めているため、もより高い安全性を満足できるという点が人気となっている。

 

また同時に「同じアジア人で肌質も似通っているだろうから」という点を挙げる消費者も多い。気候風土、そして外見的特徴などから欧米人とはやはり差を感じるのに対して、同じアジア系の国民である日本のほうが「より自分たちに近い」という印象を持ち、安心感につながっている。

 

日本の企業にとっても、人気の分野をより強化するという意味合いで、中国向け商品はスキンケア・基礎化粧品が主流商品となっている。

 

ただ、その状況を化粧品市場全体を見ると、非常に偏った構成になってしまっていると言える。

クチコミ件数を見ても、スキンケア・基礎化粧品セグメントが半年で150万件を超えているの対し、メイクアップとベースメイクを合わせても32万7000件と、4分の1程度しかない。

【グラフ】トレンドViewer2019年上半期「スキンケア・基礎化粧品」とメイクアップ関連商品のクチコミ件数

しかし、中国のシンクタンク「中商産業研究院」によると、中国のメイクアップ市場(中国語では彩粧市場)は年々拡大を続けており、2019年には「432億元」、日本円にして約6600億円にまで成長すると予想されている。

【グラフ】中国メイクアップ市場規模の推移

出所:2019年我国彩妆行业市场规模将达到432亿元(中商産業研究院)

中国の化粧品市場でシェア拡大を狙うのであれば、このメイク市場の成長にも乗っておきたいところだ。

欧米系強し! ラグジュアリー系が人気に

中国トレンドExpress編集部では中国のメイクに関するWeiboのクチコミ直近1年分を収集した。

まずはその人気上位15ブランドを見てみよう。

【グラフ】中国で人気のメイクアップブランド上位15

これを見ると、日本勢では「資生堂」、「RMK」(エキップ)、そして「KATE」(カネボウ)がランクインしている。

資生堂はブランド名というよりも社名ではあるが、中国では同社商品すべてを網羅する「ブランド」という認識が高い。

しかし、それ以外はほ欧米系、特にラグジュアリーブランドが占めていることが見て取れる。もちろん、こうした世界のブランドに対して日本勢が健闘していると見ることもできるが、トップの「CHANEL」や「Dior」、「LANCONE」とクチコミ件数を比べると水をあけられた感は否めない。

 

次いで、「メイク」と「日本」、「韓国」、「アメリカ」、「ヨーロッパ」、「中国」の組み合わせでクチコミを収集し、どの国のメイク商品が人気なのかを調査した。

【グラフ】メイク×国別クチコミ件数

そのクチコミ件数はヨーロッパ、アメリカ、そして韓国の順となったが。日本コスメブランドの言及は1位となったヨーロッパブランドの約1/4程度、韓国ブランドの1/3、さらには中国ブランドの半数程度にとどまってしまい、その差の大きさを感じさせる。

 

この結果の原因を知るために、そのクチコミを投稿しているユーザーを年齢層別に見てみることとした。

若者世代では健闘している日本ブランドだが…

下のグラフは、各国ごとの口コミ投稿をしているユーザーを、それぞれ年齢別に比率を算出したものである。これを見ると、日本メイクがクチコミ件数でトップ比率を得ているのは18歳以下のゾーンだけとなり、大学生では韓国に譲る結果となっている。

【グラフ】国別投稿の年齢別比率

全体を通してみると、20代前半までは韓国、日本ブランドが拮抗しているが20代後半に入ると欧米系が抜け出し、30代に入るとヨーロッパブランド、さらに年齢が進み30代後半からは中国ブランドへと変わる傾向が見て取れる。

 

少しその背景を分析しよう。

 

まず、受験戦争が苛烈な中国では、女性がメイクデビューを果たすのが中高生ではなく、大学。そのため、メイクに関するクチコミ件数も大学入学後に増えてくる。

その前の世代、18歳以下ではメイクをする機会が少ないこと、またメイクをするにしてもドラマやアニメといったコンテンツに影響されるケースも少なくないことから日本の商品を手に取るケースが多いようだ。

大学入学後は自由にメイクを楽しめる状況になるものの、一部を除いては経済状況においては制限が存在する。そのため比較的リーズナブルに手に入る、手に取るのはやはり低価格帯の物が多くなる。

ここでは日韓が拮抗する図式になっている。

 

しかし、女性の社会進出が進み、ビジネスでも女性幹部が珍しくない中国では、30代に入るとビジネスの上でも社会的地位も向上し、自らのステイタスとしてよりハイレベルなものを求める意識が強い。

そうした女性にとってはやはりラグジュアリーブランドの多いヨーロッパブランドを使用する選択となるのである。

 

こうした現象から見ると、日本の化粧品は欧米系ほどの「ハイエンドさ」が足りていないのかもしれない。

 

日本ブランドの多くが主戦場を90後~80後という、若者世代~社会の中核世代に求めている。

前半戦の若者世代では比較的優位に進められるだろうが、80後世代、すなわち30代以降では、競合はラグジュアリーブランドとなり、極めて強力なライバルと相対することになる。

 

そこでどこまで消費者のステイタスとなれる高級感を訴えられるかが今後のカギと言えそうだ。