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2019年ダブルイレブン(独身の日)マーケティング分析 化粧品2ブランド躍進の背景は

昨年を超えるオーダー金額となった今年のダブルイレブン。T-Mallも1日のオーダーで日本円に換算して4兆円を超えていたが、やはり気になるのは「どのブランドが売れたのか?」。

今回は化粧品セグメントの順位の状況を見ながら、今年話題となったプロモーションを見つつ、今後の中国EC戦略について考えてみよう。

4兆円の裏に、化粧品ではランキングに変化が

すでに承知の通り、2019年のダブルイレブンはT-Mallが24時間で2684億元、日本円に換算して4兆円を超えるオーダーが集まった。

ジャック・マーが引退し、また事前にメーカーに対するプラットホーム「二者択一要求」が行政からの指摘を受けるなど不安要素もあったものの、昨年を超える成果となった。

 

EC業界全体のオーダー金額も、中国のデータ調査会社・星図数据によると、T-Mall、JD.com(11日単日)、PDD(拼多多)、VIP、Suningなどのデータを調査し「4101億元」と推計。

ただし、PDDはオフィシャルには具体的な金額を公開しておらず、同時に「売上金額比較」そのものに参画する意識の無いことを声明として発信している。

【グラフ】2019年ダブルイレブン当日の全体のオーダー金額(単位:億元)

出所:星図数据(http://1111.syntun.com.cn/indexPC.html)をもとに編集部で作成

では気になる2019年ダブルイレブンで「売れた」化粧品ブランドランキングを、過去2年分と合わせて見てみよう。

【表】T-Mall、ダブルイレブンでの過去3年間のコスメ部門TOP10

  2019年 2018年 2017年
1位 L’oreal Olay 百雀
2位 Lancome L’oreal 自然堂
3位 Estee Lauder Lancome Lancome
4位 Olay 百雀羚 Estee Lauder
5位 SK-Ⅱ 自然堂 SK-Ⅱ
6位 自然堂 Estee Lauder Olay
7位 百雀羚 SK-Ⅱ L’oreal
8位 Whoo Home Facial Pro One Leaf
9位 PerfectDiary innisfree innisfree
10位 Winona Winona SHISEIDO

出所:T-Mallの発表を基に編集部で作成

上記を見る限り、ダブルイレブンにおいては「L’oreal」、「Lancome」、「Olay」、「Estee Lauder」、「SK-Ⅱ」の5ブランドがしのぎを削っており、それを中国国内ブランドが追いかける形。2017年から見ると立場がやや逆転した形ではあるが、今後は2018年、19年型の図式が続きそうだ。

 

やはり薄利多売が基本のダブルイレブンでは資本力にすぐれる欧米系、コストパフォーマンスに優れる中国系が優勢なのは致し方ないのかもしれない。

 

今年は特に「Estee Lauder」の伸びは目覚ましく、昨年覇者の「Olay」、優勢な中国系ブランド2社を追い抜いて、TOP3の一角をしめた。

 

また韓国ブランドでは昨年までの「innisfree」がTOP10から脱落、代わって同じく韓国LG系列の「Whoo」が7位に入る健闘を見せた。

 

この2社の躍進の陰には、今年のダブルイレブンで話題となった共通のプロモーションが影響していたと考えられる。

勝敗は「ライブ」。数字で見るダブルイレブンの裏側

今年は各プラットホームともに「ライブ」に注力したダブルイレブンとなった。

T-Mallはもちろん「淘宝直播(タオバオ・ライブ)」をベースに、京東は「百大明星(百大スター)」の名のもとに有名芸能人を多く投入するほか、自社で育成したKOL「京東推薦官」を組織し、ライブ配信を展開していった。

 

ダブルイレブン終了後、中国メディアが興味を引き、多く取り上げたのはやはり淘宝直播のデータであった。淘宝直播は李佳琦、薇婭のカリスマKOLをそろえ、予約期からライブ配信を盛り上げたが、なかでも際立ったのは前述の「Estee Lauder」と「Whoo」であった。

 

予約期ライブの開始し間もないタイミングで「Estee Lauder」は予約総額1億元に達し、その後、2つの商品がそれぞれ1億元分の予約を受注している。

「Whoo」も「ライブ開始6分間で1億元を突破」という、淘宝直播での1億元突破スピード記録を樹立する成果を上げている。

下のグラフは10月21日、11月1日、そして11月6日の淘宝直播視聴者ユーザー数である。

【グラフ】10月21日(予約期初日)のライブ閲覧者数(単位:万)

出所:タオバオLive等、複数の発表を基に作成

 

初日には56ブランドのライブが行われたが、これを見るとほぼ「Lancome」、「Olay」、「Estee Lauder」の3ブランドを見に来た、という印象がぬぐえない。

実際に3社以外に関しては数千単位が続いていることから、この数値が圧倒的なものであることが分かる。

 

そして11月初日、多くの消費者が「ダブルイレブン」を意識するタイミングで、「Lancome」、「Estee Lauder」のライブは再度の盛り上がりを迎える。

【グラフ】11月1日のライブ閲覧者数(単位:万)

出所:タオバオLive等、複数の発表を基に作成

さらに11月に入って1週間後の11月6日には「Whoo」が主役の座を奪う。

【グラフ】11月6日のライブ閲覧者数(単位:万)

出所:タオバオLive等、複数の発表を基に作成

この時も、TOP3ブランド以外は数百レベルの視聴者数となっており、ここでも売上ランキング上位ブランドが他を圧倒している。

 

予約期開始早々にスタートダッシュをかけ、勢いを保ったまま11日当日まで絶やさずに情報発信を行う、というのはダブルイレブンの勝パターンではあるが、このデータではその勝ちパターンの主戦場が、今年は完全に「ライブ」にであったことを物語っている。

 

実際に「Estee Lauder」は昨年の6位から一気に3位に、また3日間ライブを行った「Lancome」も昨年の1位であったOlayをかわして2位を獲得している。

もちろんに「Estee Lauder」は例年通りダブルイレブン向けのお買い得キャンペーンを設定、このライブを含め、多くのチャネルで情報発信を行っていた形跡も見て取れ、従来型プロモーションをライブの積極的活用で効果を大きく高めたと予想される。

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さらに11月11日当日、薇婭、李佳琦も淘宝直播でのライブ配信を実施。李佳琦は6時間34分のライブ中、3683万5000ユーザーの視聴を集めているが、紹介商品のリストを見るとランクインしている企業の大部分の商品が紹介されており、まさにラストスパートをかけ売り上げを伸ばしたことになる。

 

「Whoo」だでけなく、11月1日に視聴者数1位であった「Perfect Diary(完美日記)」もライブ効果の結果、売り上げを大きく伸ばしTOP10入りを果たしたという情報もあり、これもまたライブ活用の帰趨が2019年のダブルイレブンに大きく影響したことを垣間見せる。

 

ライブコマースは2018年の618商戦から積極的に行われてきたが、ここまで盛り上がりを見せ、そして売り上げランキングを大きく動かすようになったのはこれが初めてのこと。

これから始まる年末商戦、そして2020年のEC商戦も「ライブのかしこい使い方」がカギとなっていきそうだ。