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新たな爆買いスポット誕生? 中国海南島が、今、燃えている Vol.2 ~理想のオールバウンド体制がここに~

中国消費者の新たな爆買い聖地「海南島」で何が起こっているのか。
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今、中国の消費者が熱視線を送っている海南島での免税ショッピング。それを受け入れる体制も万全の準備が整っている。

さらにそれをよく見ると、日本のインバウンド業界が長らく追い求めていた「inbound to outbound」の体制が整えられていることに気づく。

そんな今後のインバウンドビジネスへの学びも隠れている海南免税ビジネスの状況を確認しよう。

拡大された免税政策を復習

まずはおさらいとして中国の「離島免税制度」について触れておこう。

中国の離島(主に海南省)の経済発展政を目的に定められた、離島での免税販売を認める制度で、2011年から始められたものだ。

 

制度の施行に伴い、この制度に沿って海南省内には世界最大級といわれる免税店が建設され(後述)、中国国内の観光客も海南島への往復チケット(観光で来ているという証明)と身分証を提示することで、空港や海外の免税店と同様に免税ショッピングが楽しめる。

 

同制度のスタート時は航空券に限られていたが、鉄道などが整備された結果、鉄道のチケットでも免税で買い物ができるようになった。

そして2020年6月29日、中国政府が新たな政策を打ち出した。7月1日からの免税対象額の引き上げである。その内容は以下の通り。

 

  • 免税購入上限を年間3万元/人から「年間10万元/人」に引き上げ
  • 対象となる商品も38品目から45品目に拡大(スマートフォンなどの通信機器も免税対象となった)
  • 免税条件であった「単価8000元まで」との規定を撤廃。高額商品も免税対象に。

 

現在、越境ECにおける年間限度額が2万6000元であることを考えると、4倍以上の商品が購入できる。

また、スマートフォンなども免税対象に加えられたことで、ネット上では「iphoneが安く買える!」と話題となった。

中国のスマホは基本的にSIMフリーで、機種は家電量販店やECで、SIMカードは通信キャリアでと別々に購入していた。

そのため、「安くiPhoneが購入できる」という事は非常に大きなメリットなのである。

 

同時に別文書で対象品目およびそれらの免税購入上限数のリストも公開されている。

これを見ると、化粧品、携帯・スマホおよび酒類に関しては上限が定められており、それぞれ30個、4台、1500mlまでとなっている。

また健康食品に関しては「輸入保健食品としての許可が下りているもの」と定められている。

 

しかしそれ以外に関しては上限が定められておらず、上記規定の金額以内であれば、自身の経済力の許す限り購入ができる。

中国消費者の「買買買!」のテンションに火が付くのも納得ができる。

最大級の免税店×オールバウンド体制の構築で消費者の囲い込みが

この海南島における離島免税を支えているのが島内に開設された免税店である。

現在、海南島には合計4つの免税店が存在しているが、その最大のものが三亜海棠の三亜国際免税城である(その他3店舗は海口美蘭空港免税店、海口日月広場免税店、瓊海博鰲免税店)。

 

その総建築面積は12万平米、売り場面積も7万平米と、この制度を象徴する店舗だけあって、その規模も圧倒的。

一説には「世界最大規模の免税店」なのだという。

そして、この巨大な店舗はA座、B座の2棟に分かれており、そこで化粧品、香水、高級腕時計・ジュエリー、アパレル、家電など合計約300ものブランドが出店。45品目の免税対象商品を販売している。

これらの店舗はフリーの旅行だけではなく、ツアーのルートにも組み込まれており、海南島観光で必ず立ち寄るスポットとなっている。

 

しかし、観光で訪れた消費者は、経済面はともかく、1人で数多く持てないのでは?という懸念もある。

しかし、それを見越してかこの離島免税改正ではある特例がつけられている。

 

それは、「海南島の観光から帰宅後、180日間は特定ECで免税購入が可能」というもの。

 

つまり、海南島から帰ってから追加で購入したい、もしくは180日以内に使い切ってしまって再度購入したい、といった場合には、ECを通じて免税購入が可能なのである。

 

海南免税店運営母体であるCDF(China Duty Free 中国免税品(集団)有限責任公司 国営企業)では三亜離島免税店のECサイト(http://www.cdfgsanya.com/index.html)も運営しており、すでに多くのブランドが免税商品の販売を行っている。

こうした海南島観光帰りの消費者をターゲットにしたECは、海南省旅行文化庁と中国EC最大手のアリババグループとの提携によるキャンペーンでも展開されている。

同グループのECサイト「淘宝」で「汇聚海南」と検索することで、「聚划算」の特設ページに移動。海南島旅行に行ってから180日以内の消費者をターゲットに免税による販売を行っている。一部の商品は免税店よりも安い特別価格での販売となっているようで、ニュースサイトでも報道されている。

まさに「海南島への観光→帰宅後のEC販売」というオールバウンド体制を構築しているのである。

インバウンド的盛り上がりを見せるSNS。KOLを活用したプロモーションも

こうした免税制度の拡張に盛り上がるのは中国消費者そしてその情報源となっているSNS。

すでに小紅書(RED)には「海南免税店攻略」というタイトルの投稿が数多く登場、8月14日時点で2500件の投稿が確認できた。

その多くは三亜の免税店の紹介。

特にフロアガイドを紹介しつつ、出店ブランドを羅列。さらには自身が訪れた際にキャンペーンをやっていたブランドの様子などを細かく写真付きで説明している。

また、自身が購入した商品をまとめて写真に撮り、それをアップしている様子も見うけられる。

それはまさに「東京ショッピング攻略」といったタイトルで書きこまれた、インバウンド・ショッピングガイドや自身がドラッグストアで購入した商品を紹介するのとほぼ同じ。

考えてみれば、2020年に入って中国の消費者は海外へショッピングに出かけることができなった。

そのぶつける先がなかった購買欲を、ここで発揮しようと動いているのである。

 

こうした消費者の心の動きは、すでに同店舗に出店済みの大手ブランドの知るところとなり、マーケティングへの活用が始まっているようだ。

今回簡単に小紅書を確認しただけでも、「SK-Ⅱ」が三亜免税店とKOLを掛け合わせたプロモーションを行っている様子が見て取れた。

おそらく欧米系の化粧品ブランドもそのあとに続くことも、容易に想像できる。

 

海南島現地の消費とその後のEC消費。

インバウンド回復後を見据えた予行練習としても、この海南島免税ショッピングでのマーケティングは注目しておくべきだろう。