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【column】 新世代が変える中国の食 「オシャレに手軽に健康に」Z世代が食トレンド

中国の食が少しずつ変わりつつある。それを動かしているのは、これまで紹介してきた「Z世代」、すなわち95後や00後世代である。

この中国Z世代の食に対するやや特別なニーズは、中国の食環境を少しずつ変えている。今回は若者をベースにして生まれている昨今の中国「食」とトレンドを見てみよう。


不摂生と健康意識の高さが共存するZ世代

そもそも若者は不摂生、という印象が強い。例えば夜更かし。

 

実は中国のZ世代も同様で、T-Mallのデータを基にしたレポートでも、ECで購入する時間帯は「深夜0時~2時」が最も多いとのデータとなっている。

 

また抖音やB站をはじめとする動画コンテンツも大好きで、スマホを手放せない世代。夜までスマホ画面を見続けており、その時もお菓子が手放せない。

 

まさに現代っ子の典型的な特性なのだが、同時にあるキーワードもZ世代の注目を集めている。

 

「養生」である。

 

この「養生」に関しては、2020年2月に記事化しているので、詳しくは下記の記事を参考にされたい。

簡単に言えば中国伝統の漢方的要素を取り入れた健康食である。


▼参考記事
中国女性のスキンケアは「食」 若者にも浸透する「養生」とは?


ただZ世代が求める養生食品は、それ以前の世代とは異なる。

彼らが求めるのは「手軽に」、そして「スタイリッシュに」である。

 

例えば中国の伝統漢方薬剤として知られる「阿膠(e jiao)」。

これは動物のロバの皮に含まれるコラーゲンを煮出し固めた、簡単に言えば「ロバの皮の煮凝り」である。

主に山東省で生産されており、中国山東省聊城市の東阿県の阿膠はとくに有名で、その名を冠した「東阿阿膠」は企業名として、そして阿膠の代名詞として知られている。

 

多くはお粥などにして食べているものであるが、現代っ子たちに対しては別のアプローチを展開。

国内コーヒーショップチェーンの「太平洋珈琲(Pacific coffee)」とタイアップで、スティックタイプのインスタント阿膠入りコーヒーを開発したり、同様にミルクティーを開発してみたり、さらには中国でも日常的に消費されているヨーグルトを「阿膠入り健康ヨーグルト」として売り出してみたりと、古典的な漢方薬材ながら、商品開発を頑張っている企業でもある。

また、Z世代に人気の養生食品を見てみると「即食燕の巣」や「胡麻スナック」、「ローヤルゼリー入りティー飲料」など、ドリンクやお菓子感覚でとることのできる商品へ関心が向いている。

 

こうしてみると、確かに不摂生な生活を好みながら、しかし同時に健康への配慮を欠かさない世代。

「そもそも規則正しい健康的な生活を送れば、そういった食材は不要なのでは?」という大人なツッコミもあるだろうが、そうした相反するニーズを兼ね備えるのがZ世代という事なのだろう。

生まれたドリンク界のスターブランド

このZ世代の養生、健康食ニーズ。一般的な食品にも影響を与え、そして新たなスターブランドを生み出している。

 

中国化粧品、特にメイクアップ業界の台風の眼となったのが「完美日記(Perfect Diary)」だが、中国における食品業界、特にドリンク業界の台風の目となったのが「元気森林」である。

同社は李佳琦を使ったプロモーションなどでいわゆる「Z世代」に刺さり、誕生からわずか4年で推定企業価値40億元といわれた会社。

 

2019年のダブルイレブンではコカ・コーラなどを押しのけて、飲料部門での売り上げ2位を獲得。

特に「糖分ゼロ、脂肪分ゼロ、カロリーゼロ」を前面に押し出した商品群(炭酸飲料、ミルクティなど)が、健康やスタイル維持を気にする若い女性に刺さった。

 

同社の炭酸飲料、パッケージにはなぜか日本漢字の「気」の文字(中国の簡単字では「气」、本来の繁体字では「氣」)が使用されており、さらには「日本国 株式会社 元気森林 监制」という表記があり、日本ブランドなのかと勘違いする人もいる様子(※)

 

当初は「偽日系ブランド」などと呼ばれ、軽い批判を受けたこともあったが、現在ではまさに中国ドリンク界の革命児となっている。

特に同社が打ち出した「糖分ゼロ」は、これまで甘いものが主流だった中国のドリンク界を席巻し、同社以外にも数多くの「糖分ゼロ」ドリンクが登場。

チーズティーで若者からの支持を得ている「喜茶(HEY TEA)」も、ペットボトルドリンクブランド「喜小茶」でも「糖分ゼロ」をうたったドリンクを発売している。

中国ではドリンクやお菓子といった、若者向け食品が成長しており、日本の食品の人気も高い。

そうした人気をベースにZ世代に刺さらせるためには、こうした「健康」キーワードも念頭に置いておきたい。

 

※生産は「元气森林(北京)食品科技集团有限公司」という北京市に拠点を置く中国国内企業。「株式会社元気森林」は同社の日本法人で、同社商品の企画・デザインを行っていると思われる。