【mini column】中国Z世代に新たな日本文化 JKファッションと広がる「手帳」の輪
―中国Z世代攻略情報も満載『2020年中国化粧品マーケティング白書』販売中―
色々なものが流行る中国の若者世代。近年特に変わったものが流行り始めている。
それは「手帳」。
といっても、ビジネスマンたちが使う「堅苦しい」ものではなく、日本の女子高生などが好むかわいらしいデザインのノート。どうやら最近の中国Z世代では一部のものが日本とほぼリアルタイムでの流行りを見せるらしいこの流行の一端を覗いてみよう。
中国Z世代に広がる「手帳」というトレンド
そもそも「手帳」という言葉は中国語にはない。
「筆記本」、「記事本」などといわれ、大学ノートを小さくしたようなものは売られていたが、それほど機能性、デザイン性に優れたものではなかった。
また日本のようにほぼ1人1冊持っているようなものではないし、年や年度の入れ替わりの時期に手帳商戦などが組まれることもなかった。
「なぜ日本はこのデジタル時代に紙のノートを持ち歩くのか?」などと聞かれ、回答に窮したことがある。考えてみれば、自国の文化習慣についての質問に、きちんとロジック立てて説明出来なかったのは、海外在住者としては失格であっただろう。
そんなことがあってから〇〇年。今、中国では「手帳」がZ世代を中心に広がっている。
小紅書で「手帳」と検索すると、なんと75万件ものノートがヒットする。
いずれも色とりどり、様々なペンや蛍光ペン、マスキングテープを使って書かれた、鮮やかなページの写真とともに、手帳ライフがつづられている。
日本のように「何かを忘れないように記録する」というよりは、日記感覚で自分の生活などを記録していくケースが多く、日本よりも「フリーダム」。
日本のような「ビジネスで役立つ手帳」、「仕事効率を高める手帳法」という、重々しい雰囲気もなく、単純に楽しむことに主眼が置かれている。
先の質問ではないが、スマホ時代の今、なぜ中国のZ世代はアナログな「手帳」にハマるのだろうか? WeiboにWeChatのモーメンツ、小紅書(RED)に動画であれば抖音など、使えるツールはあるはずなのに…。
中国JKファッションとともに語られる手帳
一つにはSNSのテンプレートではなく、完全DIYで自分だけのページを作ることができることだ。
きれいにかわいいページを手書きで作るのは容易なことではない。しかし、こういう時に役立つのがSNS。
小紅書では「手帳教程」というキーワードでは2万件以上のノートがヒット。手帳達人ともいえるユーザーが、自身の「手帳ページの作り方」を動画とともにアップしており、それを参考に自分流にアレンジして楽しむことが可能だ。
中国Z世代女子は、SNSのように決められたテンプレートの中で自己を表現するのに飽き足らず、手帳というアナログ世界の紙の上でゼロから自分らしさを求めている様にも見える。
もう一つは「手帳」はファッションアイテムであること。
極めて面白いことに、中国ではこの「手帳」が「JKファッション」や「漢服」、「アニメコスプレ」などと一緒に語られていることがある。
日系ファッションという括りだ。
依然述べたように、中国のZ世代では現在、日本の女子高生ファッション「JKファッション」が人気で漢服・ロリータファッションとともに「三坑(3つの沼)」と呼ばれている。ハマったが最後、のめり込んで抜けられないほど楽しいというもの。
▼参考記事
中国Z世代を席巻する「JK」 その背景とは?
基本的にいずれもその姿に自分を変え、写真に収めそれを共有するという楽しみ方だが、JKファッションの中で「かわいい手帳を書く」というのも、日本のJKになりきる重要なキーワードだったりするのである。
その影響もあってか、「三坑」共有アプリ「多糖」では、これら3種類に加えて「手帳」のスレッドも追加された。
普通の中国Z世代女子だけでなく、同世代の日本のサブカルチャーファッション愛好家からも、日本の「手帳」は強い支持を得ているのである。
ちなみにこの手帳、ビジネスとしてみれば周辺商材も可能性が生まれる。
小紅書上には手帳ページの写真や書き方レクチャー動画のほか、手帳作成に使えるペンやマスキングテープなどの小物も紹介されている。
手帳を自分らしく、オンリーワンのものに作り替えるには、より多くの道具をバリエーション豊かににそろえ、それを駆使する必要があるのである。
その点、日本のお家芸といえる領域。
上海や成都では2020年から2021年にかけて日本の雑貨セレクトショップである「LOFT」がオープン。
こうした日経雑貨ファンを喜ばせ、可愛いデザインの手帳やそれを彩るマスキングテープなどが、日本文具ファンを狂喜させている。
こうした若者の「手帳」文化の広がりに、中国中央電視台も「高いものでは人民元で2000元 なぜ日本人は手帳を買うのか」といったテーマの特集報道を行っている。
自分に合うモノなら日本の流行もドンドン取り込み、楽しんでいく中国のZ世代。果たして次にこの領域ではやるのは?
興味は尽きないのである。