春眠できない消費者たち 「不眠大国」中国の状況は?
春眠不覚暁(春眠暁を覚えず)。
日本は現在、気候も良く、ついウトウトとしてしまいそうな季節である。まさに仕事をさぼって昼寝するにはまたとない季節である。
しかし、お隣の中国ではこの「眠り」が問題になりつつある。
今回はまず、中国の公開されているデータから、中国の「眠り」に関連した問題についてみていこう。
対象人口「3億人」? 眠りに問題を抱える中国社会
中国の「眠りの問題」とは、いわゆる「不眠」である。
医学的に「不眠症」と診断されている人や「不眠気味」など、睡眠の質に問題を抱えている人たちを合わせると、その人口はなんと3億人に達するといわれている。
中国のリサーチ企業「艾媒諮詢(iiMedia Research)では、中国の睡眠状況についての調査を実施、その結果を発表している。
【グラフ】年齢ごとの「不眠」状況
出所:艾媒諮詢(iiMedia Research) 『全国超3亿人在失眠!数读正被撬动的万亿级“睡眠经济”』
このデータを見ると、18歳以下と20代後半、そして51歳以上が「つねに不眠状態にある」と回答している。
艾媒諮詢の不眠レポートでは、その不眠の原因の53.6%が「仕事のストレス」という回答があった。
【グラフ】不眠の原因に関する意識調査(複数回答)
出所:艾媒諮詢(iiMedia Research) 『全国超3亿人在失眠!数读正被撬动的万亿级“睡眠经济”』
上記の不眠率でも26~30歳という社会にでて活躍する層の不眠率が高いが、それとこの結果は無縁ではない。
中国では、一時期「996(午前9時から夜9時まで、週6日働く)」という、残業や休日出勤の常態化を示す言葉が流行したことがあった。
経済発展によって多くの資産を持つ消費者も増え、爆買いなどで「お金持ち」のイメージが付いた中国の消費者だが、それを維持するのは容易ではない。
もともとスキルアップ意欲が高く、その職位や待遇の変化によって自身の市場価値を図っていく傾向が強い。
それを得るためには若いうちに必死に働き、成果を出す。また企業側もそれを求めており、企業と労働者の間の残業の悪循環が生まれていた。
同時に不動産所有によって安定を感じる中国にとって、結婚前の20代後半から30代というのはまさに勝負の時期。
その不動産価格も年々上昇傾向にある。「憧れのマイホーム」という言葉はかつての日本でも聞かれたが、中国では憧れでなく必然。それを満たすために寝る間を惜しんで働き、ローンを返すという人も少なくない。
今でも「不動産が変えないから結婚ができない」という声もあるのである。
更にはSNSを開けば、まさに「リア充」写真集。
投稿者の実際の生活はいざ知らず、不動産に車、ブランド品や高級化粧品などが目に入る。自身との現実の差を埋めるべく、空いた時間を副業に費やしたり独立して自身で経営に乗り出すのである。
ちなみに、新型コロナウイルス後にはリモートワークによる在宅業務の増加によって出勤退勤の区別がなくなり、「007(午前0時から翌午前0時まで、週7日間働く)」等という言葉もささやかれた。
こうした、決して生活にひっ迫したわけではないものの、よりよい生活を得るために仕事に打ち込み、ストレスを抱える姿が想像できる。
また、不眠率の高い18歳以下では「学習にプレッシャー」というものも大きいだろう。
大学受験のための勉強地獄は日本でも広く知られている。
さらには1人っ子ゆえに、親や祖父母の期待を一身に受け「受験で失敗するわけにはいかない」と悩み大きなプレッシャーを抱える若者の姿が見えてくる。
不眠の原因、年齢層を見ていくと、その世代が抱える悩みが見えてくる。
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