中国トレンドExpress

中国でヒットを生み出す商品開発の心得とは? 「Fujiko」ブランド生みの親・和田佳奈氏が語る消費者ベースの思考

中国市場開拓においてはもちろんマーケティング活動も重要だが、その商品が中国消費者のニーズに根差したものでなければならない。

トレンドExpressでは6月2日、そんな中国に向けた商品開発をテーマにしたウェブセミナーを開催。「Fujiko Ponpon Powder」など、中国市場でのヒット商品を展開している株式会社かならぼの和田佳奈社長を招き、その商品開発の考え方から手法から、今後中国市場に投入するための消費者理解についての話を聞いた。

中国向け商品開発セミナー第2弾として開催された同セミナーの模様をピックアップしてリポート。

 

<モデレーター>

濵野 智成

株式会社トレンドExpress 代表取締役社長

大学卒業後、世界有数のコンサルティングファームであるデロイト・トーマツ・グループに入社。120社以上への経営コンサルティング支援を行い、グループ最年少のシニアマネージャーとして東京支社長、事業開発本部長を歴任。株式会社ホットリンクに参画後、COO(最高執行責任者)としてグローバル事業、経営企画、事業開発、戦略人事、コーポレート部門を統括。新規事業として立ち上げた株式会社トレンドExpressをカーブアウト型で分社化して代表取締役社長に就任。累計資金調達12.8億円を先導し、クロスボーダービジネスの先駆者として東京と上海をベースに活動中。

 

<ゲストスピーカー>

和田佳奈

株式会社かならぼ 代表取締役社長

2004年、株式会社アイエヌジーに入社。ティーンマーケティングに従事し、食品からコスメ、プリントシール機、携帯キャリアなど幅広いジャンルの各社メーカーのリサーチ~プロモーションまでをプランニング。11年に株式会社IDOへ入社。住宅メーカー発行のフリーペーパー編集長を担当。また、某携帯キャリアのweb美容マガジンの立ち上げに関わる。15年、株式会社かならぼのブランドマネージャーに就任し「Fujiko」を立ち上げる。17年に株式会社かならぼの筆頭株主となり、代表取締役に就任。現在では「Fujiko」「BIDOL」「4U」「MENCOS」の4ブランドを従業員16名で国内外にて販売。

美しさを“楽しむ”ブランドを追求。それができなければ商品化しない

―中国では大人気商品となったのがFujiko Ponpon Powder。その注目商品誕生のきっかけは和田社長、そして株式会社かならぼに貫かれている商品開発の考え方。

その理解のために、ウェビナーはまず同ブランドが誕生する背景から始まった。

 

濵野 まずはfujikoブランドにかける想いや、和田社長の商品開発の考え方などを教えていただきたいと思います。

 

和田 fujikoブランドは私が会社を立ち上げるきっかけになったブランドで、考え方としては「自分をターゲットにする」というものです。

もともと立ち上げた当時、私も三十代前半でしたが、思ったのが例えば子供もいてかつ働いている忙しい女性の事でした。

特に私は本当に美容が全然わからなくて、情報にも疎くて、面倒くさがりで…だったんですが、そういう忙しい、美容に疎い女性でもかわいくなったり綺麗になることへの楽しさを思い出してもらえるようなブランドにしたいなという思いがありました。

Fujikoというブランド自体が「キレイになるって楽しい」というコンセプトを持っているわけです。

ですので、“楽しさ”がアイテムに詰め込まれていないと商品を作れないと考えています。

どれだけ上質な成分を使ったとしても、見た目でも使い方でもどこかしらに楽しさを提供できないのであれば、まず商品を作らないと決めています。

そこに、商品を使い続けてもらうための便利さやクオリティなどを付加していくことを考えています。

一番最初に作ったリップティントもそのコンセプトが受け継がれています。

「リップを塗ってはがす面白さ」という根底に、そこに「色が落ちずに定着する」「コップにつかない」など、使い続けてもらえる理由を付加した商品として販売していました。

その後、第二弾の眉ティントがヒットして、fujikoブランドが走り始めたという経緯です。

消費者の声からインサイトをつかむ姿勢を中国にも

濵野 ユーザーエクスペリエンス、消費者が使ったらどういう気持ちになるか?という感情を考えて商品開発をしている印象を受けます。

開発者として、世の中にないものを作り出す「イノベーション型商品開発」と、競合を見ながらより良い自社製品を製造する「リノベーション型商品開発」などのタイプがありますが、どう言った形で商品開発をするタイプでしょうか?

 

和田 全く競合を見ないというわけではないですが、どちらかといえば「こういう商品があったらいいな!」という声を拾って、商品を作ります。

春が来るからそれに向けて新しいものを作る、夏がきたら次のものを…というやり方ではなく、「今、本当に消費者が欲しいものって何?」ということを考えて作っている感じですね。

それを考えるうえで、twitterやインスタは毎日ずっと見てるんですけど、いろんなアカウントをフォローしています。

全く違う、例えばコスプレイヤーさんだったりとか、本当にいろんな層の方々の声が聞けるのってSNSのすごくいいところだと思っています。

あとは基本的には日々の蓄積で、インフルエンサーの子とかと会うことももちろんありますし、居酒屋さんで人と話をする。そういった機会を活用して「今どういうものが欲しいか」といった情報を聞き取っています。

例えば、コロナでのマスク生活でリップの売り上げは落ちている傾向がありましたが、自分の感覚としては「そろそろリップをつけたくなる」という消費者心理があると感じていました。

そこで2月にマスクにつかないリップを開発したところ、売れ行きが良く好評いただいています。

「このタイミングでこういうものが欲しくなる」と考えた結果、競合商品も見て、自分が考えた商品が他社にないものであれば、商品を作るチャンスだと考えています。

 

濵野 ”Connecting The Dots”、スティーブジョブズと同じ感じですね!