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【mini column】中国で国民的番組を通じて訴えられる「グリーン社会」~2021年ダブルイレブン前夜祭から

2021年のダブルイレブンが最終日を迎えようとしている。

この日、どうしても見てしまうものがある。

既に春節年越しの『春節聯歓晩会』と同レベルの年間行事になっているダブルイレブン前夜祭番組『天猫双11全球狂歓夜』である。

ダブルイレブンというと、もちろんそのオーダー金額が世の中をにぎわせるが、今回は「消費者に対するメッセージ」という視点で同番組を見てみた。


2020年から前後半の二期制度に移行してから、10日の夜から11日に日付が変わるタイミングへの盛り上がりは意味合いが薄れ、さらに動画サイトで翌日以降も視聴が可能になっている。

それでもこの番組を「つい」見てしまうのは、ダブルイレブンという商戦がすでに中国消費者に深く浸透しており、それに伴い同番組も国民的番組になりつつあるからという一面があり、それ故に「見ておかないと」という義務感を生じさせるいくつかの理由があるのである。

 

ひとつには登場するゲストアーティストは、まさに今を時めく人気のトップでいるケースが多く、その領域を問わず多くのブランドが「代言人」として起用している人物が多いのである。

今年の番組トップを務めた易烊千玺、そしてゲスト出演した周冬雨、张韶涵、林允など、代言人やSNSマーケティングにおける提携芸能人として名前が挙がる人物ばかりである。

 

もちろんこうした代言活動とダブルイレブンという商戦が結び付けられていることは言うまでもないが、いわば中国消費者の目を引くアーティストが集められる。

中国市場で効果的なブランディング活動を行うためのパートナー探しとして把握しておいたほうが良い存在。そうした視点では同番組の視聴は非常に有益であろう。

歌唱のあとインタビューを受ける周冬雨

ちなみにではあるが、同時にこうした中国Z世代にも知名度を高いアーティスト(華晨宇など)を起用することで、商戦への参与度が多世代よりもやや低いZ世代を取り込もうという狙いも透けて見える。

 

もう一つは、同番組が国民的な番組であるからこそであろうが、そこに国レベルで推し進める政策のタネのようなものが埋め込まれており、場合によってはそれが新たな消費の潮流となりえるからである。

 

今回でいえば「環境保護」や「ローカーボン」が美しい生活を作るというメッセージであり、非常に強くそれが打ち出されていた感がある。

ご存知のように中国は2060年までに「実質的なCO2排出ゼロ」を目指すというカーボンニュートラル目標を掲げており、それに向けての環境改善への取り組み、法整備などが進められようとしている。

 

そうした国の動きを受けてだろう、22:00ごろには中国の二酸化炭素排出への努力、「健全な環境こそ未来への最大の贈り物」とのメッセージを伝えるばかりか、番組の最後には出演するアーティストすべてが環境への配慮を消費者に向けて訴えている。

 

すでにコスメの領域ではより「使用者に優しい」という意味合いが強い「CleanBeauty」が広がり、同時に動物実験の廃止などが行われており、徐々に環境問題と商業行為が結びつきを見せつつある。

 

もちろん番組ではオリンピック選手や国潮ブームなどを通じて、中国の発展、強大化を称える一幕もあったが、番組最後のメッセージを合わせてみると、「環境に対する配慮ができること」と、中国がこれまで求めてきた「発展した中国、強くなった中国のあるべき姿」とを結びつけ、環境保護活動が大国たる中国のなすべきことと考える雰囲気を漂わせていた。

 

今後は番組最後のメッセージにもあったように「緑色時尚(グリーンファッション)」など、環境保護と消費がより深く結びつき、新たなグリーンビジネスを生み出せるかに注目が集まる。

 

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