中国トレンドExpress

【2017年上半期まとめ&国慶節予測】中国旅行事情 後編 ~旅先での「消費昇級」と鉄道網整備から見える旅行者の拡大~

いよいよ一か月後に迫った国慶節。本編では2017年上半期の中国旅行事情について、海外旅行、国内旅行の例をとりあげてその変化を紹介します。


▼前編はこちらから

【2017年上半期まとめ&国慶節予測】中国旅行事情 前編 ~訪日旅行のスタイルは二極化する!?~


再びフランス旅行へ、日常の美とコスパの良い商品が人気

パリでのテロ以降落ち込んでいたフランスへの中国人旅行者数ですが、2016年の末以降、回復となりました。2017年の第二四半期では中国からの旅行者数は前年同期比10.2%増加となっています。

前編でご紹介したように、国慶節期間の人気旅行先の一つにも数えられていますが、旅行の主な目的は「買い物」から「深度遊」に変化し、記事では旅行スタイルのレベルアップが起きていると伝えています。

【深度遊】
時間をかけて旅先の文化、民俗、自然、芸術を体験、理解する旅のスタイル。バス移動がメインで、移動中は寝て過ごし、到着した目的地でバスを降り観光、写真撮影にいそしむ…といった旅行スタイルの対局にあるとされる。

記事によれば、フランスを訪れる旅行客の若年化に伴い、自由旅行も増え続けていると言います。フランスメディアの伝える公式な数字によれば、フランスを訪れる全中国人旅行客における自由旅行の比率はすでに43%に達しているそうです。

現地ガイドへの取材によると、「教会で鑑賞するクラシックの演奏」と「フランス式のフラワーアレジメントの教室」の二つが特に若者の旅行者に受けているそうです。旅行者はこれらの体験を通じ、生活のそこここに息づくアートを体感することに喜びを感じていると伝えられています。

またフランスでの「モノ」消費においては、ハイブランドの製品ではなく現地の一般大衆が好む製品を選ぶ傾向が見え始めており、コスパのよいコスメ商品が人気となっているそうです。

観光者向けではなく、そこで生活する人の普段の生活に組み込まれているような「体験」、そして生活者が認める「良さ」を判断基準に「製品」を選び取る…パリを訪れる中国人観光客の姿から、日本がこれから先、90後また00後といった若年層の中国人観光客へ提供するべき旅のスタイルについてイメージを膨らませられるのではないでしょうか。

二線都市・三線都市への鉄道サービス拡充が経済成長を加速

最後に視点を中国国内の旅行スタイルに移します。2017年上半期では鉄道の運輸体制にも調整が加えられ、新路線の運航開始や増便により鉄道旅行も成長市場となりました。7月1日から8月31日までの利用者数はのべ5.98億人となる見込みで、昨年同期比4970万人増となります。

記事では一年を通じて低価格であること、天候の影響を受けずに運航できること、鉄道の駅が全国各地にあることなどから、これからも人気の旅行形態となることを予想しています。実際に、7月までの予約乗客数は昨年比113%増となりました。北京、上海、深圳、武漢、南京、広州、天津、杭州、蘇州、鄭州といった地域で特に増加しています。

国内では二線都市、三線都市への鉄道網整備が続いており、これにより各地域の経済発展が見込まれています。鉄道旅行はリピーターの占める割合が小さく、新規の旅行者が9割を占めるのが特徴です。実際にオンライン旅行代理店大手のCtripCEOの孫氏がメディアのインタビューに答えたところによれば、同社は現在まさに二線都市、三線都市、四線都市への拡大戦略をとっている最中であり、それら都市にはまだ多くの潜在的な旅行者が存在していると考えているそうです。

こういった情報からは、今後、二線都市そして三線都市が経済成長するに伴い、住民が訪日旅行のターゲットとなる可能性が見えてきます。

参考:携程CEO孙洁:加速三四线城市渗透(出典:亿邦动力) 中国語

交通手段に着目していえば、中国の列車の旅といえば、比較的簡易な寝台車で10時間以上の旅路も珍しくありません。日本国内での列車の旅とは異なるものなので、同じ「列車の旅」であってもいかに実態が異なるものなのか、正確に伝えることで消費者の認識を正し関心を寄せてもらうこともできるかもしれません。

まとめ

中国の旅行ブームがまだまだ続いていることが2017年上半期の動向、国慶節の動向を予測するレポートからわかりました。

欧州の人気が上昇している様子ですが、旅行者の旅行日数のうち最も多くを占めるのが4-6日であることから、今年も日本や東南アジアを旅行する中国人旅行者は多そうです。引き続き旅行ブームに湧く中国人旅行客の旅先として日本が選ばれるためには、東欧に負けない「魅力の発信」が必要なことは間違いありません

旅先での買い物は、フランス旅行を例にとれば「コスパ重視」、そして現地の人が日常使いする「本当に良いもの」を求めていることがわかりました。「消費昇級」の潮流が起き、中国人消費者にとっては「品質」を見定めて商品を選ぶことが楽しみの一つとなっています。訴求ポイントを見誤らずに商品の価値を発信していきたいところです。

国慶節期間の消費動向、そしてウェブ上でのクチコミを始めとする情報の蓄積は11月のEC最大商戦「ダブルイレブン」への消費を後押しすることでしょう。国慶節に向けたプロモーションは、一年間で一番の中国人消費者の動向を左右する分岐点を作るのかもしれません。


▼国慶節が最大の商戦期となる理由とは? セミナーレポートからご確認ください。

【セミナーレポート】2017年国慶節需要を逃さない!(1)10月上旬の国慶節連休が最も重要な商戦期である理由