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【特集】国慶節まであと1か月!(1)~2017年「十一」の日本旅行動向を占うユーザー属性を発表~

1か月後に迫った「十一黄金集」こと10月1日の建国記念日を記念する「国慶節」の連休。今年は10月1日から8日の8連休となっています。

今回の特集では、中国トレンドExpress恒例の国慶節に関するクチコミとアンケート分析をお伝えします。国慶節に向けた施策の最終調整にご利用いただければと思います。

【調査概要】
集計期間:2017年6月1日~8月16日
対象SNS:新浪微博

集客時期は前年比較で前倒し、若者の訪日が予見

昨年同様、国慶節の日本旅行に関するクチコミ分析から行っていきましょう。まずはクチコミ件数推移を見てみると、8月最終週あたりから伸びた昨年と比較すると、クチコミの増加が半月程度早まっています。

今年は去年よりさらに1日長い8連休となっているため、どのように過ごすのが、早めの計画を立てている方も多くいるのかもしれません。中国のメディアの報じるところによれば、すでにツアーの予約が埋まり始めているそうです。


【2017年上半期まとめ&国慶節予測】中国旅行事情 前編 ~訪日旅行のスタイルは二極化する!?~


いずれにせよ、8月は国慶節の旅行客への集客開始の時期と言えます。

グラフ:2017年国慶節日本旅行予定に関する書き込み推移:6月8日-14日32、 6月15日-21日48、6月22日-28日89、6月29日-7月5日75、7月6日-12日102、7月13日-19日88、7月20日-26日78、7月27日-8月2日56、8月3日-9日78、8月10日-16日175

データ出所:2017年6月1日~8月16日まで、「日本旅行」に関連したクチコミを集計

「日本旅行」をクチコミしているユーザーデモグラフィック

ではここから、クチコミユーザー分析を進めていきましょう。まずはエリア分布からです。

地域

2015年の分析では上海が3割近くを占めていましたが、2016年はエリアが大きく分散していました。

2017年はどうなっているのか、2016年と比較した表から見てみましょう。

順位 2016年(シェア) 2017年(シェア)
1 広東省(10.70%) 上海市(9.01%)
2 北京市(9.96%) 広東省(7.87%)
3 上海市(7.87%) 河北省(7.53%)
4 江蘇省(6.23%) 北京市(7.18%)
5 浙江省(5.16%) 山東省(6.39%)
6 山東省(3.72%) 江蘇省(6.27%)
7 四川省(3.40%) 浙江省(5.93%)
8 福建省(2.89%) 湖北省(4.90%)
9 遼寧省(2.66%) 遼寧省(4.90%)
10 湖北省(2.64%) 天津市(3.76%)
11 天津市(2.51%) 湖南省(3.65%)
12 重慶市(2.49%) 四川省(3.53%)
13 安徽省(2.49%) 福建省(3.08%)
14 河南省(2.49%) 安徽省(3.08%)
15 河北省(2.47%) 雲南省(3.08%)
16 山西省(2.46%) 河南省(2.62%)
17 陝西省(2.41%) 重慶市(2.39%)
18 湖南省(2.41%) 海南省(2.39%)
19 吉林省(2.39%) 陝西省(1.48%)
20 その他(22.65%) その他(10.95%)

上位3位に変化がありました。トップは上海市、2位に広東省、3位が河北省となっています。「北上広」と呼ばれる経済先進地のうち、北京がTOP3から離脱しました。北京市のユーザーにとって、昨今は日本以上に魅力のある旅行先が存在するということかもしれません。

TOP3の占めるシェアは昨年からさらに減少しており、4位以降に分散している様子がうかがえます。どういった都市に分散しているのでしょうか。北京市の代わりにTOP3にランクインした河北省は北京市と隣接しています。ECによる農村部の成長も期待できるようです。2016年省別GDPランキングでも上位10位に入っています。近所である北京の影響を受け、成長しつつある経済力で旅行をはじめ消費のトレンドを踏襲しているのかもしれません。

また山東省、浙江省の発展については「都市解説」シリーズで解説の通りで、旅先としての「日本」は中間所得層の関心をうまくひきつけられているといえそうです。


▼参考記事は以下リンクよりご覧になれます

越境ECシリーズ(3)農村部のECビジネス拡大、河北省の存在感 「中国公式統計による2017年上半期ECレポート」

中国・都市解説(3)山東省(済南市) ~無骨な男性と古代の思想家が支える裕福な沿海部~

中国・都市解説(1)浙江省(杭州市) ~賢く稼ぐ名勝地!大企業の本拠地は、上海に次ぐマーケットになるか?!~


性別

属性については、男女別でみると男性が32.78%、女性が67.22%でした。この比率は昨年とほとんど変化はありません。やはり旅行の決定権はいまだ女性にあるということでしょう。

年齢

続いて年齢層を、昨年と比較して見てみます。

グラフ:国慶節日本旅行について投稿したユーザー年齢分布:2016年:12歳以下0.33%、12-18歳14.84%、19-24歳45.13%、25-34歳29.33%、35-50歳8.71%、51-80歳1.66%:2017年:12歳以下0.21%、12-18歳15.68%、19-24歳51.64%、25-34歳24.33%、35-50歳7.12%、51-80歳1.02%

昨年からさらに19-24歳の層が増加し、半数を超える結果となっています。一方で、昨年の国慶節後の振り返りでは35-50歳の層が一番多い結果となっており、今年も同様の結果になることが予測されます。

この事前の発信と実際の訪日観光客の年齢層のかい離からは、若い方のほうが事前の情報発信に熱心ということが読み取れるのではないでしょうか? 仕事と育児に忙しいアラサー世代と比べ、学生や未婚の20代では時間に余裕があると考えられます。

またC-tripでは国慶節を前に日本、東南アジアを行先とした安い海外旅行ツアーの販売に注力しているようで、こういった商品の品ぞろえが訪日旅行の旅行者層に影響を与えている可能性があります。

先週の特集【聖地に集う中国人】では、聖地巡礼のターゲットがちょうどこの19-25歳の層になるとお伝えしていますが、たとえば地方集客に向けた情報拡散を行うのであれば、この年齢層の情報発信・拡散力を活用するのも1つの手かもしれません。


【聖地に集う中国人】2017年版 前編 ~1位はもちろん岐阜県舞台のあの映画!「聖地」ブランド継続の要を書き込みから~


行き先の分散化が顕著、ターゲット像の明確化が喫緊の課題

最後に訪日旅行での行先について書き込みを整理し、同じく昨年の結果と比較した表が以下です。

ユーザーのエリア分布だけでなく、行きたいスポットにも分散化の傾向が見られます。2016年と比較して見ると、クチコミに見られるスポットが多様化、細分化していることがわかります。

順位 2016年(件数) 2017年(件数)
1 京都府(223) 東京都(212)
2 大阪府(203) 奈良県(172)
3 東京都(198) 京都府(112)
4 奈良県(72) 北海道(98)
5 鹿児島県(66) 沖縄県(98)
6 福岡県(48) 那覇(73)
7 兵庫県(45) 宮古島(54)
8 北海道(43) 秋葉原(48)
9 長崎県(43) 富良野(43)
10 沖縄県(34) 箱根(42)
11 長野県(21) 札幌(42)
12 青森県(21) 心斎橋(37)
13 愛知県(21) 飛騨高山(37)
14 石川県(20) 富士山(32)
15 神奈川県(18) 天橋立(32)
16 新潟県(18) 大阪城(28)
17 和歌山県(11) ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(23)
18 三重県(9) 東京ディズニーランド(23)
19   洞爺湖(23)
20   箱根(22)
21   有馬温泉(21)
22   鎌倉(17)
23   長野県(17)
24   日光(16)
25   嵐山(14)
26   福岡県(12)
27   長崎県(12)
28   東京スカイツリー(11)
29   神戸(10)
30   横浜(10)
31   名古屋(9)
32   レゴランド(9)
33   静岡県(7)
34   和歌山県(5)
35   広島県(5)
36   下呂温泉(4)
37   白川郷(3)
38   山口県(2)
39   大分県(1)

「東京都」が1位に返り咲いたほか、「奈良県」「京都府」「北海道」「沖縄県」と有名どころが並びます。

面白いのは、これまで「沖縄」「北海道」とひとくくりであったところが、「那覇」「宮古島」「洞爺湖」などの細かいスポット名がクチコミに出てくるようになってきたところです。沖縄や北海道でひとくくりにせず、地名を詳細に把握してから訪問する観光客が増えているということでしょう。知識欲が高いという仮説も成り立ちます。

また、19-25歳のクチコミが増加していることが影響しているのか、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」複数のテーマパークがランク入りしています。開園から日の浅い「レゴランド」も行き先候補となっています。幼い子供を連れた旅行なのかもしれません。

まとめ

行き先のクチコミ件数で東京が1位という結果からは、クチコミユーザーのエリアが分散していることから初回の訪日が増えているのではないかという仮説が立てられます。また同時に、細かいスポットがクチコミに出てくるようになったという点からは、嗜好の多様化、情報の拡散、リピーターの増加などがうかがえます。

こういった状況を踏まえると、訪日観光へのプロモーション活動では、ターゲットを明確にすることの重要性がさらに高まっていると言えるでしょう。年齢、性別だけでなく、出身地、初回の訪日かリピーターなのか、それらの属性の見極めが必要です。こういった見極めを可能にする事前の分析がプロモーションの精度を向上させることは間違いありません。

続く記事では「買いたい」ランキングで注目の商品や、アンケートの集計結果をお伝えしていきます。旅行予算や買いたいもの、行きたいところに大きな変化はあるのでしょうか?結果をお楽しみに!


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