越境EC③ライブ動画で販売!日韓商品のスペシャリストbolome
越境EC②では、越境ECのモール型プラットフォームでの店舗運営、代行での出店・運営の例をご紹介しました。今回は小売り型の越境EC『bolome』を運営する株式会社bolomeの代表取締役水野 裕哉様にお話をうかがいました。
本編では、インタビュー形式で情報をお届けします。(聞き手:株式会社トレンドExpress代表取締役 濱野智成/インタビュー日程:2017年4月)
株式会社bolome 代表取締役 水野裕哉様
日本企業にとっての越境EC市場
―本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは簡単に越境EC「bolome」のサービスについてご紹介いただけますでしょうか。
bolome(中国名:波罗蜜)は、日本と韓国の製品を専門に扱っている越境ECのアプリです。2015年7月にローンチし、現在の会員数は約700万人、うち95%が女性で、年齢層は22~30代前半が大半です。
取扱商品は、主にドラッグストアで購入できるもの。お菓子、化粧品、日用品など、商品数は日本商品で5,000アイテムくらいです。現在はメーカーのお客様を中心に、卸販売の企業を含めると約500社と取引をさせていただいております。
―御社サービス「bolome」で商品を取り扱っていただく場合、どんな形態がありますか?
形態でいうと、三つにわかれます。①買い取り②委託③受注発注、です。メーカーの場合は②③を中心に取引させて頂いており、卸販売の企業の場合は①の形態で取引させていただいております。
「日本で売れて」「中国で知られて」いることが目安
―越境ECは今、日本企業が中国市場への参入する際の選択肢として、盛り上がっている市場だと思われますか?
この一年くらいで注目され始め、一般的にもかなり知られるようになってきましたが、販売に至る企業さんが多いかというと、そうではありません。盛り上がり、という意味ではまだまだではないでしょうか。
売りたいというお客様もいますが、当社では「売れる」と判断できるものを販売させていただいています。
では何が売れるのかというと、インバウンドを含め、日本で販売実績のあることが必須だと思います。それが中国で商品が知られるための最低条件で、中国で知られていないものは中国で売れない。中国で知られて初めて、越境ECに出品する意味があると思います。
成功するためには何よりも「自分の目」
―これから売れそうだと思うジャンル、製品があればお教えください。
正直まだ、これであれば必ず成功するだろう、と感じるものはありません。受け身な気持ちで、出せば売れるだろうというような気持ちで越境ECに商品を並べても売れないのが現実です。
爆買いで売れている大半の商品が中国で人気に火がついた要因も受け身で、芸能人やインフルエンサーがたまたまその商品を好きでSNSで紹介し、それを知ったファンに買われている…といった構図です。日本のメーカーが主体的にマーケティングを仕掛けて、爆買い商品に育てあげた例は、ほとんど無いのではないかと考えています。
―成功するためには何が必要なのでしょうか。
マーケティングは広告代理店やインフルエンサー頼みではなく、自分の目で中国の現場を見る必要があると思います。プロモーションを打つ前に、まずクチコミを見てみることが大切です。クチコミを知れば、消費者の顔が見えてくると思います。
中国の現場を知らずにマーケティングの施策を練ることはできませんので、現地に赴いて市場調査から初めるのが良いですが、現実問題としてこれを実行するのは難しいと思います。なので、当社のように中国での商品の売り方を知っている越境ECの企業を味方につけ、実際に商品を販売してもらいながら、ユーザーや市場の現状を身をもって理解していくプロセスが必要であると考えています。
―なるほど…中国人消費者のリアルな顔を知ることが大切ということですね。
消費者との2つのコミュニケーションチャネル
親しみやすさの高い「チャット」が決め手!
―bolomeのファンとのチャネルはどんなものがあるのでしょうか?
WeChatや微博など主要なソーシャルメディアで公式アカウントの開設、運営をしています。
またユーザーとより親密なコミュニケーションを取るためのチャネルとして、bolomeのファンを集めたWeChatのグループチャットの運営に力を入れており、このグループチャットのユーザー数は1万人を超えています。チャット形式で親しみやすいスタイルでコミュニケーションが可能なため、ユーザーのリアルな意見を拾い上げることができます。
またグループチャットは販売促進にも効果的で、限定商品の紹介や、特別クーポンの配布なども行い、プロモーションのチャネルとしても有効です。WeChatのメッセージで受け取った情報を周囲の友人とシェアすることもあるので、その効果は購読者のその先まで波及すると考えてよいでしょう。
ライブ動画と2つの仕掛けが消費者の心をつかむ
―『商品の紹介やプロモーション』には、具体的にはどんな施策があるのでしょうか?
WeChatグループのメンバーに対するサンプリングの配布が行えます。昨年はリアルの展示会も開催しました。
またbolomeを特徴づけている『ライブ中継』での商品の販売もしています。これは特に当社の強みであると考えています。
―かなり効果がありそうですね。そういった施策には、多数の企業様が参加されているのでしょうか?
ライブ動画は、「日本現地からの生放送」という動画プレゼンによるライブ感のある演出のスマホ版のテレビショッピングで、単なる一方通行のライブ動画ではなく、画面上にコメントが流れていくチャット形式です。
スタッフとユーザーがインタラクティブにやりとりしながら、ショッピングを楽しめるようになっています。ライブ動画を実施させて頂く企業は、当社でも厳選させて頂きながら、パートナー選びをしています。
―ライブ動画以外に、御社ECを特徴づけている要素はどこにあるとお考えですか?
特徴は、日本の店頭価格でユーザーが購入できる仕組み作りと、信頼性のある日本で全ての商品を現地調達していることです。同じように日本、韓国の商品を輸入して販売している越境ECの会社は少なくないのですが、多くは香港などで仕入れているのに加えて、価格も日本で購入するより高いのが実情です。
今後の展望
―今後、越境ECのプラットフォームの顔ぶれに変化はあるとお考えですか?
越境ECのプラットフォームは現在すでに淘汰されている状況と考えています。「日本商品」に特化したプラットフォームという意味ではbolomeは生き残った主要メンバーですし、売り上げで言ってもトップクラスです。
―では、御社越境ECはどういった方策でポジションを確立していく予定でしょうか?
販売方式は「日本からの直送モデル」を中心にしていること、あと日本のリアル店舗でしか購入することができない限定商品の「店頭買い付け」を戦略的に行っていることも特徴の一つだと考えています。
そしてBtoBの事業も昨年から始め、こちらも強化していきたいと考えています。
―御社越境ECプラットフォームへの出品が、他プラットフォームより優れているといえるのは、どういった点でしょうか?
日本直送モデルも用意しているため、爆買い対象ではない商品についても、小ロットでテストマーケティング的に、販売を始めることが可能です。
またモール型ではなく、bolome自ら商品を仕入れて販売する通販業者ですので、日本円決済による売買契約だけで商品販売が可能ですし、また商品の納品先は当社の日本倉庫でOKなので、通常の日本国内取引と変わりがありません。
モール型の天猫国際であれば出店には保証金がいりますし、売り上げにはレベニューシェアが発生します。アリペイの手数料も負担です。代行での運営にはそれなりの費用も発生します。
期待の分野とその理由は中国ならではの配送先にあった!
―取り扱い商品のうち、特に力を入れている分野はありますか?
315事件の影響を多少受けてはいますが、食品は力を入れている分野の一つです。
中国でECを利用するシチュエーションの一つに、オフィスがあるんですよ。中国の宅配業者は時間指定の配送を受けてくれないので、仕事をしている中国人は自分の勤務先にECで購入した商品を配送手配するんですね。となると期待できるのが、オフィスでの同僚とのシェアや、購入者から周囲の人へのおすすめなんです。また商品の特性としてリピート買いも期待できます。
また、日本直送モデルで販売しているため、東日本大震災以降の日本産食品の輸入規制の対象外であり、日本の様々な食品を扱うことができます。こうした「直送」でしか扱えないお菓子を扱えることも当社の強みの一つですね。今後も力を入れていきたいと考えています。
まとめ
小売り型の日韓製品特化ECプラットフォーム「bolome」の特徴と、韓国企業に向かい風が吹く今日本企業に与えられたチャンスの生かし方、そして食品の消費トレンドまで幅広く解説いただきました。
「bolome」は巨大なモール型ECサイトと異なり、出品・出店に関わる手数料が必要ないだけでなく、利用者がセグメントされていることからブランディングの一環としての効果も期待できる越境ECプラットフォームの一つと言えそうです。
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