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越境EC② 越境EC二大巨頭を解説! ~株式会社オプトホールディング吉田上席執行役員に聞く越境EC進出の極意~

越境ECシリーズ第一弾では中国全体の小売総額推移から消費規模をご紹介し、そのうちのECの占める割合やECの利用者数、そして越境ECのポジションを確認しました。ご紹介したデータからは、越境ECでの日本製品の需要はまだ健在化されていない部分も含め、満たしきれていない可能性も見えてきます。

では、実際に越境ECに出店、出品するにはどのような方法があるのでしょうか。まずはEC二大巨頭とそれぞれの越境ECプラットフォームについてまとめ、その後株式会社オプトホールディング上席執行役員の吉田様のインタビューをご紹介します。

中国ECモール二大巨頭「天猫(Tmall)」と「京東商業(JD.com)」。国内ECサイトと越境ECの違いとは?

中国のEC市場で圧倒的なシェアを誇る二大ECモールは、アリババグループの「天猫(Tmall)」と京東集団の「京東商業(JD.com)」です。それぞれ越境ECのプラットフォームを持っており、「天猫国際(Tmall.HK)」「京東全球購(JD worldwide)」というモールが存在します。

中国国内のECサイト天猫(Tmall)や京東商業(JD.com)と、越境ECサイト天猫国際(Tmall.HK)や京東全球購(JD worldwide)の出店側の最大の違いは、前者は出店する企業が中国の法人でなければならないのに対し、後者は日本法人でも出店できるという点にあります。

※「天猫」は「タオバオ」のサービスの一つです。タオバオ内で天猫の名を冠したプラットフォームには「天猫国際」の他、「天猫商城」「天猫超市」「天猫電気」があります。タオバオはCtoCのECサイトとしてスタートしていますが、最近はBtoCの側面も強まっています。

京東全球購入の日本公式パートナー、株式会社オプトホールディングの吉田氏に聞く

それではここからは吉田様へのインタビュー形式で、越境ECへの進出方法をうかがいたいと思います。

今回お話を聞かせていただいた吉田様が上席執行役員を務めてらっしゃる株式会社オプトホールディングは、2015年9月、京東全球購の公式パートナーとなりました。京東全球購とタオバオのECモール内に日本商品専門の『天喜日本生活専営店』を開設し、店舗内へのお客様の商品の出品とプロモーションを手掛けています。また日本企業の中国大手ECモール(天猫国際、京東全球購など)への出店・運営を代理店として手掛けてらっしゃいます。

-日本商品専門の『天喜日本生活専営店』を出店されているECモールと、その特徴を教えてください

天喜日本生活専営店は現在、京東全球購とタオバオの二か所に出店しています。タオバオはCtoCの印象が強いと思いますが、最近はBtoCも増加傾向にあります。

 

-タオバオに出店するメリット、デメリットにはどんなものがありますか?

今のところ「授権証」も不要となっています。出店のハードルの低さは魅力ですが、並行輸入品もあるため埋もれてしまうリスクもあります。

【用語解説:授権証】中国でのEC出店に際し、運営者を指定しそのブランドの製品を販売する権利を明示化したもの。「電子商務販売授権書」という(電子商務はECのこと)

-では、天喜日本生活専営店の店舗への「出品」ではなく、モールに「出店」する場合のプロセスはどんなものですか?

日本法人含めた外国法人向けのモールが用意されていますので、複数あるモールの中から出店するモールを選定します。

代理店は必須ではありませんが、例えば代理店を活用して出店するケースでは、出店をあるモールに申請すると、モール側はその申請企業へ代理店の評価を伝えるケースもあります。このくらいの数の店舗の代理店になっていて、その店舗は消費者からこういう評価を得ている、といった情報です。この点は特徴的だと思います。

その上で企業が申請を進めれば出店が完了します。ただし、大手モールの天猫国際は実質招待制となっていますし、京東全球購も出店基準がありますので、希望された場合でも出店不可となる場合もあります。

出店後のプロモーションで感じるであろう中国のスピード感、日本企業はどう向き合えばよいのか

-出店後のプロモーションで日本と違う点はどこですか?

端的に言えば、スピード感の違いと、「モール内でのキャンペーン」の存在です。例えば、売り上げを重視する場合、モール側の意向に即してタイミングを合わせキャンペーンに参加することが必要です。そうでなければ大きな売り上げは見込めないと思った方がいいでしょう。店舗経営者はそのタイミングで必要とされるキャンペーン商品をキャンペーン価格で用意しなければなりません。

-日本企業にとってボトルネックとなるのはどういった点でしょうか?

このプロセスの進行するスピードについていけない日本企業が少なくないのが現状です。モール側との連携が上手くいけば売り上げは拡大できますし、天猫国際を活用した事例などは日本でもよく取り上げられています。場合によっては、一定の値引きも必要になるケースもあります。売り上げ重視であれば、天猫国際への出店が理想だと考えていますが、迅速な意思決定に不安がある場合は、京東全球購の方がマッチしているかもしれません。

越境ECでの成功と失敗とは?

越境ECで成功するために必要なものは何でしょうか?

まず第一に、「中国市場に出るんだ!」という「やる気・本気」です。会社として、中国事業についての強い意思がなければ、成功はつかめないと思います。やる気を行動に移す際には「中国では中国のやり方で成功する」という考え方も必要で、中国式では「まずやってみる」ということが大切です。

これは私見ですが、悩んでいるということはその市場に興味を感じているということなんです。であれば、まずはやってみるのが良いと思います。重要なのは許容できる範囲のリスクを見極め、その範囲内で投資をすること。その結果を多少なりとも入手すること。それから次のアクションを決めることで、初めてチャンスがつかめるのではないでしょうか。今のこの中国市場を見る限り、やらない事のリスクの方が大きいと個人的には考えています。

日本のマーケティングの片手間で中国市場を相手にしたり、日本の市場調査のスキームで取り組みをすすめたりすると、市場調査~社内決裁~そして出店、というころには市場の動向ががらりと変わっていたりするのです。

-リスクの低いやり方には何がありますか?

例えば既に特定のモール内に出店している店舗へ商品を出品すること自体には大きな投資は必要ありません。私どもの『天喜日本生活専営店』への出品であれば数十万円から可能です。この金額の中で可能なプロモーションは、正直なところ金額に応じた程度の効果しか見込めませんが、行います。

実際のところは、一度始めれば、改善点が見え、では次はこのように取り組もう、となる企業様も多いです。広告出稿、ブランド強化、コンテンツ制作には投資が必要ですが、やり方によっては効果が期待できるものです。

売り上げが上がらない、これも1つの結果です。上手くいかなかった、これもまた結果です。その結果を分析し次につなげることが重要です。売れなかったら売れなかったで、なぜ売れなかったかと理由を探ることができます。それだけでも投資の価値があるのではないでしょうか。

越境ECでもチャイナリスク。どう向き合うのが正解?

-ECサイトは中国の規制に対しどう対応していくのでしょうか? 越境ECに進出するにあたり、こういった日本企業にとって不利となる政府の方針に備えるため、何か準備できることはあるのでしょうか。

EC自体は、内需の拡大につながるわけですから、ますます注力されていくでしょう。しかし、法律が変わっていくのは中国の常ですし、プラットフォーム側も政策には従うしかないわけです。

プラットフォーム側から情報を受け取ることはできますが、それですべて解決できるかというとそうでもありません。準備できることがあれば、何か起きた時に迅速に動けるよう、「常にいろんなパターンの」状況を想定することです。

今年だけでなく、中国市場では毎年毎年、何かしら日本企業にとっての壁があります。障壁がなくなるのを待っていては、いつまでたっても中国市場への進出はできません。中国市場進では「障壁がある」ことが前提ということを理解すると、何かあった時の対応もスムーズに行えるのではないかと思います。

トラブルはノウハウが蓄積される機会です。中国市場に進出したいのであれば、経験が積まれないという意味で、何もしないことが進出に対するリスクになる可能性すらあります。

まとめ ~中国のやり方を体得せよ!~

以上、越境ECに旗艦店を出店し、日本企業の進出支援をされている株式会社オプトホールディングの上席執行役員吉田様より、越境ECへの出店の現状と中国進出への心構えをお伺いしました。
中国越境ECへの進出には「悩んでいるならまずやってみること」が大切で、なぜならそこには「やればデータが集まるメリット、やらないことで経験が詰まれないデメリット」があるからということが分かったのではないでしょうか。中国で成功するためには中国式を体得することも必要で、中国式では「まずやってみることが大事」という極意をご教示いただきました。

吉田様のマーケティングへのデータ活用、プロモーション施策への提言も収めたインタビューの全文はトレンドViewerのバックナンバーよりダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。

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