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越境ECで爆売れ!「アームカバー」の陣(3)~中国向け全3編のPR記事のポイントと『リスクをチャンスに変える』思考法~

(2)ではトレインとっておきのPRの心得「主導するPR」、そしてECで売れるためには「ECモール外」での情報露出、拡散により中国人消費者の認知獲得が必要な理由を確認しました。

本編では、実際にトレインが中国の「情報の海」インターネットへ流した情報についてご紹介します。

「女の欲望」シリーズのPR内容

「女の欲望」アームカバーシリーズを中国で発売するに際し、合計3回のニュースリリースを行い、1度に15媒体程度、計45媒体に掲載されました。

媒体はテンセント、新浪といったポータルサイトから、通信社、女性情報サイト、トレンド情報サイトなど、大手メディアにわたり様々に掲載されています。

内容は、第1回、2回と、それぞれ内容を異なるものとして、段階的に消費者層に刺さるものを訴えかけていきました。

第1回

第一弾は、『手臂防晒最佳策「女人的欲望」COOL&UV防晒手臂套』(女の欲望COOL&UVアームカバーで腕日焼けもしっかりガード)と題し、日本では日焼け対策・スキンケア商品としてという機能面だけでなく、ファッションアイテムとして評価されているという点を前面に打ち出しました。

つけるだけで日焼けから守れる点、日本では「アームカバー」といえば「女の欲望」だといわれるほどの人気で、東急ハンズ、LOFT等でも売り上げ1位の実績を持っている、といったポイントを粒立てて発信しました。

第2回

第二弾『夏天开意「女人的欲望」吸汗防晒加袖套』(夏の車運転も安心、女の欲望で汗も日焼けもさようなら)の記事配信はその一か月後に行われました。

一日のうちいつ活躍するアイテムなのか?といった使用シーンを表現し、さらに吸放湿性、涼感生地といった製品情報を盛り込みました。

アームカバー 中国語による商品説明とイラスト

第3回

商品の売れ時となる6月に配信した最後の記事、第三弾では、『奔跑吧夏天!「女人的欲望」COOL&UV防晒手臂套』(駆け回る夏は「女の欲望」COOL&UVアームカバー)と題し、中国で大人気のバラエティ番組内で、出演タレントがアームカバーを着用していたことを中心とした記事をリリース。

「もうネットのみんなは知っている」「ゴルフや釣りや、いろいろなシーンで使える」と、日本のみならず中国国内でもすでに広がっているという切り口で訴求すること、使用シーンの多様さを改めてアピールすることに主眼を置きました。

 書き込みの内容もチェンジ!

中国市場への参入時によく言われる戦略として「5分の1かける10倍市場」というものがあります。日本での成功要因や、ヒットの強みを、5分の1までに凝縮して中国に売り出すのです。訴求するポイントや、購入を促すターゲット層も、狭く、深くアプローチする。その結果中国の消費者に受け入れられる商品となると、10倍、20倍の利益になって返ってくる、という法則です。

今回のUVアームカバーに関しても、この「日焼け止め&涼感」という特性をまず訴求すべき魅力として焦点を合わせ、掲載記事ではここにフォーカスしました。その後「日本で話題」「テレビでも使われる」といった点を付随的な情報として提示します。

この結果、中国人消費者の関心を誘うものとしてメディアに認められ、先の(1)の記事で紹介したように、最終露出媒体は228メディア(拡散率5.1倍)、新浪微博のホットトピックス入りを果たしました。

また投稿内容もポジティブな書き込みが目立つようになりました。

施策前後の書き込み内容の変化[施策後はポジティブな書き込みが大幅増・ネガティブ減少]

それまで、この商品に関する書き込みは、中国国内で販売する代理購入者(バイヤーなど)による書き込みが多くを占めていました。施策後はSNS上でのPV数の多い投稿や、ECサイト上のレビュー欄では、実際に購入したユーザーからの書き込みが増えています。それらにはポジティブな内容が多く、結果として購入意向の拡大を促進し、さらに購入者による高評価が増えていく…という好循環が生まれます。

特に、商品の強みとして訴求した「COOL&UV」の部分に触れて「本当にひんやりしていて気持ちいい」「つけても涼しい感じがする」といった材質への言及また、「車の運転に使える」といった、記事内でも提案した実際の使用シーンの感想といった書き込みは、購入して実際に体験してもらわなければ生まれません。

今回の施策内容が消費者の心を捉え、購入・使用へとつながったことを示すものと言えるでしょう。

チャンスと表裏一体、中国市場のリスク

このような成功例がある一方で、中国市場にはリスクもあります。市場の巨大さ、インターネットでの情報伝播の即時性は時に大きな損失をもたらします。長谷川社長の考える、中国市場参入のリスクは以下の2点です。

熱しやすく冷めやすい

「去年売れたからと言って、今年も売れるとは限らない」のが中国市場です。話題になった商品ほど、類似品がほかのメーカーでも作られ、同様の商品が市場に出すぎて供給過多になり、結果として価格帯での勝負を余儀なくされる、また全体の売り上げが下がる可能性があります。中国では、勝負がこのフェーズに移るまでの期間が日本よりも短いです。

その年その年のトレンドや同業他社の製品、ターゲット層の動向を見極め、たとえ翌年に同じ商品を売り出すとしても、量や販売戦略をその時々に合致したものに変更していくことが肝要です。

ネガティブなクチコミも、非常に早く広まりやすい

日本でも販売されている商品で、中国向けに少し価格を上げたものを売り出した場合、中国人消費者は「不当に高い値段で買わされる」「私たちを騙している」といったネガティブな評価を下す可能性があります。

こういった話題は瞬く間に拡散され、ブランドイメージそのものが傷ついてしまう危険もあります。

リスクをどのように回避するのか、またそのリスクに出くわしてしまったらどのように解決を図るのか。長谷川社長の意見は以下のようなものです。

まず、前年ヒットした商品は、前年と同等またそれ以上の売り上げを期待して大量に用意してしまうと在庫過剰のリスクがあることはわかっているので、生産段階で数を抑えることでそのリスクを回避します。結果として在庫不足となるリスクが別に発生しますが、この場合は逆に「売り切れが出る」ということを売りにすることもできると考えると良いでしょう。

前年の話題に惹かれ、今年は手に入れたいと考えている消費者もある程度存在するものです。そして早々に売り切れになってしまうという枯渇感は逆に購買意欲を煽り、購入を促進する面があるのは事実です。

また、生産量を抑えておけば、突然のブーム終了を迎えても、さばききれない余剰在庫を安売りし、せっかくの利益を減らしてしまうような事態は最低限避けられます。

次に、ネガティブなクチコミですが、拡散してしまったことにおろおろするのではなく、商品の改善に役立つよう活用することに焦点を合わせるべきです。悪い意見こそすぐ新しい製品に活かせるよう、ネットの声は拾う必要があります。

トレインの「女の欲望」シリーズでは現在タイツを販売しています。大ヒット商品ではありますが、中国人ユーザーから「毛玉ができやすい」という書き込みが目立ちました。これを受けてすぐに、2017年の秋冬シーズンでは「毛玉になりにくいタイツ」を展開することを決定しました。

中国人ユーザーが気にする点は日本人とは異なる場合があります。同じ「品質にこだわる」にしても、「どこにこだわるのか?」について、文化的、経済的な観点から中国人消費者を理解することも重要です。

 

続く記事ではパブリックリレーション(PR)すなわち「消費者とのコミュニケーション」について、パッケージや情報の質から解説します。

 

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