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対決シリーズ【欧米vs韓国vs日本】化粧品の場合(2)~キャンペーンは最低月一回、勝者は秋だけでなくて○○にも実施していた!~

(1)では日本ブランド、韓国ブランドに焦点を当て、SNS露出件数の多寡について理由を考察してきました。

▼「化粧品対決」シリーズ、初めの1編はこちら

対決シリーズ【欧米vs韓国vs日本】化粧品の場合(1)~主要ブランドを独自調査!SNS露出には○○の多さも影響~

 

本編ではブランド別に、キャンペーンの実施時期とSNS露出の件数を時系列に振り返ってみます。

調査期間:2016年9月~2017年8月
グラフ:橙が露出件数、青がキャンペーン実施回数

日本勢は11月に一球入魂、月0回のブランドも

まずは日本のブランドです。

資生堂

資生堂:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

 

資生堂はダブルイレブン(11月11日)前にキャンペーンを行っており、その後11月のSNS露出拡大に成功しているようです。キャンペーン実施の特徴としては、毎月キャンペーンを行っているという点が挙げられるでしょう。キャンペーンが0回の月はありません。

絶え間ないキャンペーンの実施が成功しているのか、SNS露出件数は増加傾向にあります。2017年4月はスパイクしていますが、これは資生堂の台湾進出60周年を記念し、歌手蔡依林(微博のフォロワー数3741万人)を起用し配信したプロモーション動画のヒットが関係しているようです。

以下のキャプチャは3本目のエピソードのものです。5分弱の動画では経済的に苦労して育てられた娘と、地味な仕事をしながらいつでも口紅を忘れなかった母親の物語が描かれます。

資生堂W11プロモーション動画キャプチャ1(歌手蔡依林)

資生堂W11プロモーション動画キャプチャ2(歌手蔡依林)

ある日、成長した娘が就職の面接に臨みます。緊張が高まる中、何気なく上着のポケットに手をやると、そこに母親がこっそり忍ばせた赤い口紅が手に当たります。娘の手の中の口紅と工場で休憩する母親の手の中の口紅が画面に現れ…という構成のショートムービーです。

全編を通じて口紅の話がされているものの、商品はこのラストシーンでのみ全容を映し出されます。細かな細工の施された口紅のケースが自然と印象に残るような構成です。

コーセー

続いてコーセーです。資生堂と同じくダブル11前にキャンペーンを行っており、11月の露出件数増加につながったようです。年間を通じてみてみると、キャンペーンを実施している月とそうでない月があり、4月5月は二か月連続で実施していません。SNS露出数は増減を繰り返し、結果として今回の調査期間では観測開始の時期よりも減少の結果となっています。

コーセー:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

カネボウ

カネボウも例にもれず11月にキャンペーンを実施しています。コーセーと同じく11月以降はキャンペーンを行っていない月もあります。キャンペーンを行っている月もありますが、その実施後にSNS露出件数が増加する様子は見られません。2017年1月以降はSNS露出件数が全体的に横ばいです。

カネボウ:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

世代交代が起こる? 韓国ブランド一騎打ち

続いて韓国の2ブランドのキャンペーン実施回数とSNS露出件数のグラフです。

Langine

Lanegineは、11月だけでなく10月からキャンペーンを打っており、毎月最低1回の施策を実施しています。11月まではSNS露出数は増加傾向にありましたが、12月以降は年間を通じた継続的なキャンペーンの実施にもかかわらず、結果として件数の下落が見られます。

Langine:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

 

SNS露出件数の減少には、昔人気だったものの、今では「古臭い」と変化してしまったブランドイメージが影響しているようです。

イニスフリー

そしてLangineの人気減退により空席となったポジションにおさまることに成功したのが、イニスフリーといえるかもしれません。イニスフリーのキャンペーン実施回数とSNS露出件数を並べたグラフです。

イニスフリー:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

 

キャンペーン回数は毎月最低1回を維持しています。露出件数こそやっとLangineを追い抜いたというところですが、キャンペーン回数はLangineを15回ほど下回り、まだまだ伸びしろがあるポジションと言えそうです。

通年手を抜かないのが欧米スタイル

ディオール、ロレアル(メイベリン)、ランコム

最後に欧米のブランドを見ていきましょう。

Dior:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

 

ロレアル:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

 

ランコム:SNS露出件数、中国でのキャンペーン回数 グラフ

第1軸(左):SNS露出件数 第2軸(右):中国でのキャンペーン回数

 

キャンペーンは集中して11月に行うことが国にかかわらずマストのようです。ディオール、ロレアル、ランコムのすべてで11月にキャンペーン回数の山ができています。

どのブランドも11月以降キャンペーン回数は減少しています。その一方で、SNS露出件数に関しては3月~初夏にかけて、11月に近いかそれ以上の山ができています。キャンペーン回数では初夏に再度山ができており、これを受けてとみられるSNS露出件数の増加も見て取れます。

まとめ ~天下の分かれ目は初夏のキャンペーン

キャンペーンなくしてSNSでの露出、すなわち知名度はなし…ということが6つのグラフから読み取れたのではないでしょうか。

今回分析した全6ブランドでは、すべてのブランドでダブルイレブンの前に複数のキャンペーンを展開し露出を勝ち取っています。一方で初夏に月3~4回のキャンペーンを打っている欧米ブランドと動画のヒットした資生堂以外は、11月と比較してその後のSNS露出件数は極端に減っています。

化粧品は競合が多い市場です。キャンペーン回数とSNS露出件数の時系列での実績を見てみれば、知名度が高いブランドでも何もせずに売れているというわけではないことが見て取れます。

SNS露出件数は以下の要因と関係があるようです。

  • キャンペーン回数
  • キャンペーンを打つ時期
  • 継続的なキャンペーンの実施(月最低1回)

実際には、各ブランドはどのようなキャンペーンを行っているのでしょうか?

続く記事で各ブランドが中国で行ったキャンペーンの実際の例を紹介します。お楽しみに!

 


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対決シリーズ!【欧米vs韓国vs中国vs日本】化粧品の場合(3)~事例から学ぶ、勝てるプロモーションの設計と規模~