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【特集】日本のお菓子ブランド調査(1)~「〇〇でのシェア」がEC利用者の日常風景

日本のお菓子はインバウンド市場で人気を獲得しており、「日本で買った」「日本で買いたい」ランキングを日々賑わせています。今回は日本でお馴染みのお菓子ブランドに注目し、SNSの書き込みから中国におけるイメージやターゲットなどを探ってみたいと思います。

【調査概要】
以下ブランドについて、2017年5月~10月の新浪微博上での書き込み(ブランド名での検索、製品名含むものもカウント)を収集
・グリコ
・カルビー
・味覚糖、UHA味覚糖
・明治
・森永製菓
・ロッテ

 中国国内における関心度とインバウンドの相関

上記ブランドについて、まずはインバウンド市場での最近の動きを確認しておきましょう。各ランキングに入ったことのある商品をまとめました。(2017年11月15日時点でのランキングまで)

  日本で買った 日本で買いたい
カルビー じゃがポックル、じゃがりこサラダ、かっぱえびせん、Jagabee ポテトチップスコンソメパンチ、Jagabee
味覚糖 コロロ、味覚糖のど飴PLUS コロロ、味覚糖のど飴PLUS
グリコ ビスコ、ポッキー<かさね抹茶>  
森永 チョイス、森永ダース チョイス
ロッテ GREEN DA・KA・RA キャンディ  
明治 たけのこの里  

のべ商品点数が一番多かったのがカルビーです。ポテトチップスコンソメパンチは昨年夏前から1年かけてじっくり順位を上げてきました。夏休み終了後の1か月間で大きく順位を落としましたが、国慶節からまた少しずつ順位を上げています。夏休みだけでなく国慶節期間も若年層の訪日が多かったことから、やはり若者の支持が大きいことをうかがわせます。


▼「個人旅行」の潮流が若年層の比率を押し上げた?国慶節振り返りはこちら(会員限定)

【特集】2017年国慶節、訪日中国人の動向(1)いつ、どこから、誰が来ていた?~滞在日数は「5日間」に集中~

次いで多かったのが味覚糖ですが、コロロのど飴PLUSは「日本で買った」「日本で買いたい」両方にランクインしており、根強い人気がうかがえます。

グリコはビスコが人気で、「日本で買った」ランキングにおいて2017年の初夏からじりじりランクを上げており、現在は30位前後まで迫ってきています。ビスコについて新浪微博の書き込みを見てみると、小分けになっておりサイズも丁度いいため、特に子供用のお土産として重宝されているようです。

 グリコ、味覚糖がツートップ!

では中国国内における各ブランドの調査結果を見ていきます。まずは半年間の書き込み推移を見てみましょう。

書き込み推移

※2017年5月~10月の新浪微博上での書き込み(ブランド名での検索、製品名含むものもカウント)を収集

また、半年間の書き込み件数ランキングは以下のようになります。

順位 ブランド 合計
1 カルビー 28,502
2 味覚糖 26,229
3 グリコ 11,546
4 森永 3,945
5 ロッテ 2,651
6 明治 2,528

半年間で件数が最も多かったのがカルビー、次いで味覚糖となっており、先ほどまとめた「日本で買った」「日本で買いたい」ランキングの状況と比較すると、中国国内での関心はインバウンド市場での人気と大きな乖離は見られません。3位はグリコで、4位が森永、5位ロッテと6位の明治には大きな差が見られない結果となりました。

「北海道産」大歓迎、ブランド力向上に貢献

ここからは、書き込み件数上位のブランドについて、その背景を見ていきたいと思います。

カルビーは、フルーツグラノーラが315※に取り上げられたことで4月は書き込みが9,000件を超えましたが、7月ごろまで減少したのち8月から再び増加傾向を見せています。その背景には、2017年7月に行われた記者発表があると思われます。

カルビーは7月上海で記者会見を行い、北海道工場で作られたフルーツグラノーラを中国に上陸させた旨を発表しました。この日、天猫国際Calbee海外旗艦店は300袋の北海道工場産フルーツグラノーラを先行販売、7月28日から正式に販売を始めています。

また天猫国際官方直営店でも8月から北海道工場産フルーツグラノーラを販売開始しました。北海道は環境・空気ともにきれいな中国人にもなじみの観光地ということもあり、北海道工場産フルーツグラノーラは中国人に歓迎され、それが書き込み増加にもつながっているのではないでしょうか。

※『315』とは
1987年、国際消費者連盟組織により、消費者の権益の保護、促進を目的とし設けられた世界的な記念日である3月15日の「世界消費者権利デー(World Consumer Rights Day)」。

▼フルーツグラノーラのクチコミを分類!推移に影響を及ぼすのは〇〇?

【特集】商品クチコミ6つのファクター (2)勝ち抜けるのは誰?半年間の月次推移まとめ


参考:
日本核污染区食品大量流入中国,这些千万不要买!(出典:SOHU.com) 中国語
日本“核污染区”食品惊现中国:很多你们爱吃的都在列…(出典:網易新聞) 中国語
卡乐比水果麦片在中国正式发售 携手中国检验认证开启食品溯源(出典:環球網国際新聞) 中国語
卡乐比麦片核辐射下架 卡乐比麦片是否安全?(出典:5h.com女性网) 中国語
国内外の需要拡大に対応し「フルグラ」新生産拠点(出典:カルビー公式サイト)

成功のきっかけは「SNSを活用したキャンペーン」にあり

カルビーだけでなく味覚糖も、夏から秋に向けて書き込みが増加傾向にあります。コロロが「日本で買った」「日本で買いたい」ランキングで8月ごろからランクを上げており、中国国内でのクチコミ増加がインバウンド市場にも好影響を及ぼしているようです。

UHA味覚糖は2001年に中国に進出し、2014年に天猫での販売も始めています。現在では天猫UHA旗艦店のみならず、ウォールマートなどの大型スーパーやコンビニエンスストアでも販売されるようになっていますが、そのブランド力はどうやって形成されていったのでしょうか?成功の秘訣を、キャンペーンから探ってみましょう。

2016年11月、UHA味覚糖はファンに呼びかけて、コロロ(中国表記:CORORO・酷露露)を使った斬新なケーキやおしゃれなカクテルなどのDIYレシピを大募集しました。作者は朋友圏で自分の傑作を公開、コロロは朋友圏によって瞬く間に広まりました。

2016年12月には、コロロを大学やオフィスビルの入り口などで無料配布し、自分のWeiboアカウントなどでコロロについて投稿してもらうキャンペーンも実施しています。

「オフィスでシェア」がEC利用者の日常

その他にコロロの成功に貢献した取り組みとしては、自社商品をまとめ買いしてくれる代理販売者に積極的にアプローチしたことや、まとめ買いで安くなるように値段設定していることなども考えられます。

UHA代理商の1人、馬氏は、「コロロは若者に人気なので、2017年7月からは学校や小中規模スーパーでの販売にも力を入れていく」と語っています。また天猫UHA旗艦店では、まとめ買いすると値引きになります。大学生やサラリーマンなどが友達同士でまとめ買いをし、コロロの売り上げをさらに押し上げているとも考えられます。

中国ECに関する特集で以前お伝えしたとおり、中国でECを利用するシチュエーションの一つにオフィスがあります。中国ではECで購入した商品を自分の勤務先に配送することが多く、お菓子などはオフィスでの同僚とのシェアや、購入者から周囲の人へのレコメンドが期待できます。おそらくこういったシチュエーションを狙ってまとめ買いを促進しているのではないでしょうか?


越境ECで消費者の心をつかむ仕掛けを解説!

越境EC③ライブ動画で販売!日韓商品のスペシャリストbolome


参考:
悠哈味觉糖业绩增长86%,原因竟是年轻人都爱“晒”!(出典:捜狐) 中国語
UHA味覚糖 TMALL天猫サイト 中国語

 

ポッキーを使って告白、これでシングル脱出成功か?!

3位のグリコの書き込みは安定して推移していますが、今後書き込み増加に貢献しそうな動画が最近公開されています。

2017年10月12日午後6時(中国時間)、テレビドラマで活躍中のアイドル・趙麗穎が自身のブログでグリコ・ポッキーの動画を配信しました。「明日は絶対デートだよ、名付けてポッキー大作戦」という宣言で始まります。

10月12日は11月11日「独身の日」の1カ月前にあたります。動画では、現在彼氏なしの女の子たちに、シングルで独身の日を迎えていいの?ポッキー使って告白しようよ!とアピールします。趙麗穎がグリコのポッキーを使って、好きな男の子との距離を縮めるという作戦を披露、二人で自撮りをする時にポッキーをくわえて、目をつぶって男の子のほうをむくという作戦です。

独身の日を意識しているため、対象は独身者。というわけで、後編は母と未婚の娘の絆を描きます。仕事や進学のために親元を離れていても、ポッキーでつながっているよ、という内容。ポッキーは子どもや若者に人気のおやつですが、これで親世代も取り込もうという意図でしょう。

参考:
趙麗穎代言格力高中國百奇系列廣告片合輯 中国語

まとめ

成功している企業の裏には、ターゲットとなる中国人消費者のライフスタイルを把握した上での取り組みがうかがえました。また、動画やSNSを活用したキャンペーンもマストアイテムのようです。つづく(2)では、キーワードTOP5から各ブランドのイメージを調査し、キャンペーン実施やコンテンツ制作のヒントを探っていきたいと思います。

 

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【特集】日本のお菓子ブランド調査(2)~中国おやつ戦争、ライバルはお菓子だけじゃない?