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【特集】商品クチコミ6つのファクター (2)勝ち抜けるのは誰?半年間の月次推移まとめ

特集(1)では3つのレギュラー商品「パーフェクトホイップ」「馬油ナチュラルミルクローション」「フルーツグラノーラ(フルグラ)」を例に、「SNS書き込み総数」「ソーシャルバイヤー発信件数」「メディア発信件数」「KOL発信件数」「消費者使用経験ポジティブ件数」に注目してそのバランスに見られる特徴を考察してきました。また「外部要因」についても掘り下げて調査しました。

今回も上記の「6つの要素」に着目しながら、外部要因の1つとして「為替レート」を追加して、商品ごとの月次推移をまとめました。

またそれぞれの商品の「外部要因」についても引き続き確認していきます。

※為替については、三菱UFJリサ一チ&コンサルティングによる1990年以降の為替相場より調査。月中平均TTBを採用(TTB=telegraphic transfer buying rate、電信買相場)


▼特集(1)では3つの商品のクチコミバランスチャートを公開!合わせてご確認ください

【特集】商品クチコミ6つのファクター (1)要素別に集計、見えてきた3つの道


根強いファンの「パーフェクトホイップ」

まずは「パーフェクトホイップ」です。「SNS書き込み総数」は、4月、7月、9月に増加しています。

パーフェクトホイップ

「ソーシャルバイヤー発信件数」「消費者ポジティブ件数」「メディア発信件数」など、半年の期間でほぼ変化がみられませんでした。SNSでの言及は自然と沸き起こったクチコミのようです。

同商品の6要素の傾向で特筆すべきは、「KOL発信件数」と「消費者使用経験ポジティブ件数」が安定的に発生していることでしょう。

根強いファンがいることが考えられますが、新たに魅力的な商品をみつければお試しの手を伸ばし、未練なく乗り換えることも中国人消費者にはよく見られるパターンです。安定してクチコミが発生しているうちに、プロモーションを仕掛けて人気が持続する素地を作り上げておくのも一手ではないでしょうか。

また新浪微博では日本のテレビCM、ウェブ動画で面白いものがあれば即座に広まる傾向があります。今年2017年の春に放映された満島ひかり出演の日本のテレビCM、またタイ版の同様なCMが複数拡散されています。もこもこの泡に顔をうずめる様子が「受けて」いるようです。こういったプロにより作成されたコンテンツによって興味が喚起されている面がありそうです。

定番の地位にかげりも、店頭でキャッチする消費者心の機微

次に「馬油ナチュラルミルクローション」を見ていきましょう。

馬油ナチュラルミルクローション

5月と7月「ソーシャルバイヤー発信件数」が微増しているのを受け、「SNS書き込み総数」も増加しています。

トレンドViewerの「買った」ランキング推移を見てみると、4月から5月にかけて順位を上げたのち、6月以降は下降傾向にあります。

7月のソーシャルバイヤーの発信、そしてSNS書き込みは「購入の報告」という書き込みにつながらなかったのか、はたまた訪日中国人のピークとなる夏で競合商品が多く太刀打ちできなかったのか、あるいは夏向きの商品ではなく手に取られなかったのか…いくつか可能性が考えられそうです。

こういった「買った」書き込みの相対的な減少を受けてか、「ソーシャルバイヤー発信件数」は、7月以降から若干ながら減少傾向となっています。

新浪微博で話題となってから3年、「KOL発信件数」の推移からは特に施策らしい施策は打たれていない様子がうかがえます。今後も引き続きクチコミ件数の減少が続いた場合、「訪日土産の定番」の地位が揺らぐ可能性もありそうです。


▼2014年からの馬油のウェブ上での盛り上がりも調査! 特集(1)も合わせてご確認ください

【特集】商品クチコミ6つのファクター (1)要素別に集計、見えてきた3つの道


実際に「昨今急に売れなくなった」商品として馬油を挙げる報道もあります。これから寒くなるので回復する可能性もありますが、施策をうたずにいれば、中国人消費者の需要は徐々に、同様な効能を持つ別の商品に取り込まれていくのかもしれません。

参考:
中国人店員が戸惑う…家電量販店の「しきたり」日本人、毎日なんで? 爆買い下火になった「あの商品」(出典:livedoornews)

『315』での批判も七十五日、フルーツグラノーラ

最後にシリアルのフルーツグラノーラ(フルグラ)の各要素です。


▼中国での「シリアル」の食べ方、知っていますか? 特集(1)から確認できます!

【特集】商品クチコミ6つのファクター (1)要素別に集計、見えてきた3つの道


以下のような集計結果となりました。

フルグラ

「SNS書き込み総数」は、4月は315※の影響を受けて9,000件を超えています。翌月は7,000件未満、翌々月は6,000件未満となっており、徐々に315事件関連の書き込みが減っていったことが考えられます。

「ソーシャルバイヤー発信件数」は調査期間の半年を通じ、ほぼ横ばいから若干の減少傾向となりました。「メディア発信件数」は横ばいとなっており、そのためか「消費者使用経験(ポジティブ)件数」も増える兆しが見られません。

※『315』とは…
1987年、国際消費者連盟組織により、消費者の権益の保護、促進を目的とし設けられた世界的な記念日である3月15日の「世界消費者権利デー(World Consumer Rights Day)」。

毎年この日、中国では中国中央電視台(CCTV)にて特別番組の『315晩会』を放映、消費者の権利を侵害したとする企業を名指しで取り上げます。消費者からのメールや電話など“生”の声に基づき、番組スタッフが徹底取材し、真実を暴くとしていますが、海外企業のメーカーにとってはメディアを使った特定商品の袋叩きのためのリスクをはらんだイベントとして認識されています。


▼今年の詳細をまとめています

【中国315世界消費者権利デー】カルビーは姿を消したまま…無印良品の「下有対策」は奏功


 

為替レートと書き込み件数の関係

フルーツグラノーラの各要素の関係で着目すべきは、為替レートSNS書き込み総数の推移の関係でしょう。まるで反比例のように、一方が上がれば一方が下がる形になっています。為替レートが越境EC上での販売価格に作用し、結果として書き込みが減少している可能性があるのではないでしょうか。

フルーツグラノーラは前出の2商品に比べて、ソーシャルバイヤー発信件数が多くなっています。パーフェクトホイップは約500件/月、馬油ナチュラルミルクローションは1,000件超/月、それらに対しフルーツグラノーラは2,000~3,000件/月と圧倒的な数を誇ります。

書き込みから多数存在すると考えられる「フルーツグラノーラ」のソーシャルバイヤーですが、彼らは個人で仕入れを行い販売しています。そのため、為替の変動が販売価格へ与える影響が大きくなり、このように発信件数が為替の変動に伴い上下していると考えられそうです。

 

SNSの書き込みに315の痕跡はあるのか?

それでは実際にSNSの書き込みを見てみましょう。

昨年の9月には「おいしい!おやつにも合いそう!」という味への満足や、「すぐにふやけるところがいい」という好評価が見られ、後者からは消費者の食べ方にマッチした特性があったことがうかがえます。

『315』の直前にも「フルーツが沢山で栄養が豊富!」とフルーツグラノーラがほかのシリアルと違い果物が多く含まれていることを評価する声がありました。

『315』後のフルグラに関連した書き込みには「ああ!去年2袋も食べちゃったよ!2袋だから死なないよね!?」と報道の指摘にショックを受けるファンの、動揺が全面に出たコメントが見つかります。

『315』での指摘に対してカルビーは3月18日には「正規品は中国で許可された工場で製造したものを輸入しており、安全」との声明を発表しており、新浪微博でも情報がシェアされています。

またこの事件の直後には「ケロッグよりおいしいって聞くけど、ケロッグも十分おいしいよ」という書き込みもありました。フルグラの占めるポジションにとってかわる可能性のある商品の存在も見えてきます。

「フルグラが有害だなんて思わない、他においしいものないし、食べたいよ~」という書き込みもあり、『315』での指摘はフルグラにとっては、その人気の根幹を揺るがすほどのインパクトはなかったとも言えそうです。

直近ではフォロワー数100万のKOLと思しきアカウントから「フルグラとリッチな牛乳を朝食にサーフェスで仕事…(落ち込んだ表情)」という投稿がありました。内容自体は落ち込みも感じさせますが、実際には最新の機器を持ち場所を選ばずにできる頭脳労働者であることを感じさせ、自分の人生を肯定的にとらえているようにも見受けられます。フルーツグラノーラは社会的に高い地位を持つ人物が送る、上質な生活にはまり込めるアイテムであることを思わせます。

参考:卡乐比回应315点名:未对中国大陆出口该麦片(出典:国際電商)

まとめ

今回とりあげた商品については、クチコミにおいてこの半年はそこまで大きな動きは見られない結果となりました。

昨年から中国国内では「嫌韓」の風が吹いており、日本ブランドにとっては追い風が吹いている状況です。

消費者の「ほしい」を満たす魅力的な新商品は、日々市場に登場しています。すでに定番商品となっているアイテムを、人気が下火になる可能性にさらしながら手をこまねいているほどもったいない状況はありません。消費者の認知もあり競合に逆風が吹きつける今は、まさに大躍進が期待できるタイミングとも言えそうです。これまで取ってこなかった第一歩を踏み出し、新たなクチコミの波を起こすにはベストな環境が整っているのではないでしょうか。


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