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【速報】中国インターネット業界の世相が見える? 2018年版「中国インターネット企業Top100」

日本を超えるスピードでIT化が進んでいる中国。その様子はすでに日本でも多く報道され、中国IT産業の聖地ともいわれる深圳市へ視察に向かう企業、自治体も数多くあります。そうした中国のIT業界を支えるインターネット企業の状況レポート『2018中国互聯網企業100強』が、7月に中国政府から発表されました。今回はその発表から、中国の広義のインターネット業界の現状を把握していきましょう。

『2018中国互聯網企業100強』は中国互聯網協会(中国インターネット協会)、中国工信部信息中心(中国興行・情報省情報センター)が連名で発表した、中国国内におけるインターネット企業をランキング化したもの。

ランキングは企業の「規模」、「収益」、「イノベーション状況」、「成長性」、「影響力」、「社会的責任」から総合的に判断されたもの、とされています。

そのレポートでは、2017年のインターネット業界100強(トップ100)の総売上は1兆7200億元(約28兆円余り)で、前年比50.6%増。また営業利益総額も2707.11億元(約4兆4000億元)と、こちらも前年比82.6%増、トップ100企業のうち、83社で黒字決算となっており、好調な成長を見せています。

ではそのトップ100の内から、上位20社を見てみましょう。


まだまだ続く2強時代

【資料】『2018中国互聯網企業100強』の上位20社

順位 企業名 通称 ブランド・サービス
1 阿里巴巴集団(アリババグループ 阿里 Taobao、T-Mall、Alipay、アント・ファイナンシャル、優酷
2 深圳市騰訊計算機系統有限公司(テンセント 腾讯公司 WeChatQQ、騰訊網、騰訊遊戯
3 百度公司 百度 百度、愛奇芸
4 京東集団 京東 京東商城(JD.com)、京東金融、京東クラウド
5 網易集団(ネットイース) 網易 網易遊戯、網易ニュース、網易クラウドミュージック
6 新浪公司(SINA.COM) 新浪公司 新浪網、新浪微博(Weibo)
7 搜狐公司(SOUHU.COM) 搜狐 搜狐、搜狗、暢游
8 美団点評集団 美団点評 美団、大衆点評、美団外売、美団打車
9 三六零科技有限公司(360) 三六零 360安全衛士、360殺毒、360手机衛士
10 小米集団(シャオミー 小米集団 小米商城、小米手机
11 北京字節跳動科技有限公司 今日頭条 今日頭条、抖音短視頻(TikTok)、火山小視頻
12 網宿科技股份有限公司 網宿科技 網宿
13 58集団 58集団 58同城、赶集網、安居客、転転
14 珠海金山軟件有限公司 金山軟件 西山居、金山クラウド、金山オフィス
15 携程計算機技術(上海)有限公司(C-Trip 携程 携程旅行網(C-Trip
16 上海二三四五網絡控股集団股份有限公司 二三四五 2345導航,2345加速浏覧器
17 美図公司 美图 美図秀秀、美顔相机、美拍、美図手机
18 新華網股份有限公司 新華網 新華網
19 蘇寧控股集団有限公司(SUNING 蘇寧控股 蘇寧易購、蘇寧金融
20 北京汽車之家信息技術有限公司 汽車之家 汽車之家、二手車之家

TOP2は「不動」の存在。アリババとテンセントとなっています。

アリババといえば、すでに「Taobao」や「T-Mall」で名前が知られていますし、実際に出店などをされている企業も多いかと思います。まさに「中国ECの生みの親」と言える企業ですが、近年はその成功をベースに多くの分野に進出しています。

その代表格が「アント・ファイナンス」。

これはアリババ内の第三者決済サービスであるAlipayの運営を行っている企業ですが、近年は「零細企業への資金援助」そして「個人信用」といった分野へと進出。

中国国内におけるケンタッキーフライドチキンの株式を取得し、中国におけるケンタッキーの経営を握った企業としても知られました。

好調な拡大を見せるアリババのライバルがテンセントです。

アリババが中国ECの生みの親ならば、テンセントは「中国SNSの生みの親」。早期のPC用チャットツールであるQQをはじめ、現在日本国内でも展開のスピードを速めている「WeChat」などは、すべて同社によるものです。

特にWeChatは、単なるコミュニケーションツールという枠組みを超え、支払い、金融、生活インフラとも連携する、いわばライフプラットホームともいえる存在にまで成長しています。

同時に「騰訊網」というポータルサイト、「騰訊遊戯」というゲームのプラットホームを展開するなど、主にtoC分野においてその存在感を示しています。

ちなみに100社のうち11社で利益率40%以上となっており、またアリババグループとテンセントの2社で、100社合計売上の25%、営業利益においては60%を占めていることが報告されています。

このデータを見ても、この二強状態はしばらく継続しそうです。

また、インターネットビジネスではなく、端末からスタートし、中国におけるユニコーン企業の代表ともいえるのが「小米(シャオミー)」です。

2010年に成立した同社は、もともと「iPhoneのコピー」などと言われていた携帯電話で話題になりましたが、現在はデザイン面にも独自性が見え、国内外での評価も上がり始めています。

同時に「小米商城」という自社ECサイトを立ち上げ、中国の若者がアップル社やMUJIに求める「高品質」で「スタイリッシュ」さに重点を置いたブランドイメージを打ち出しています。

新ビジネスに新企業も続々

また、絶えず進化している中国のインターネット業界では、新しい企業も成長しています。中でもゲームや「ライブ配信」といった、若者をターゲットにした新しいビジネスを手がける会社もトップ100に名を連ねています。

その代表格が「北京字節跳動科技有限公司」でしょう。

同社はニュースアプリ「今日頭条」を運営しながら、ユーザーが15秒の短い動画をアップロード・公開できるアプリ「TikTok」を傘下に収めている企業。後者はすでに日本に上陸しており、10代の若者を中心にその人気を拡大しています。

もう一社注目しておきたいのが「北京車之家信息技術有限公司」 です。

これはネット上でカー情報および自動車の価格確認、購入(主にBtoC)ができるというサイトを運営している会社です。

中国は言わずと知れた世界最大の自動車大国。また「自分で自動車を所有する」ということが社会的なステイタスになっていることから、自動車消費は伸び続けています。こうした自動車を求める消費者とディーラーをネット上でつなぐ役割を持ったサイトとして人気を集めています。

また近年は中古車市場も成長していることから、こうした中古車販売プラットホームも展開しています。

特化型で生き抜いてきた老舗企業

このランキングを見ながら、中国経験の長い方は「懐かしい」と思う企業名もちらほらランクインしています。例えば「三六零科技有限公司(360)」。

これは中国におけるネットセキュリティソフトとしての老舗。ウイルス対策が大きな問題にある中国にあって、無料で使えるセキュリティソフトである「360シリーズ」は、主に学生たちにとっては大きな味方でした。

またスマホが普及するとスマホ版のセキュリティソフト、そしてアプリダウンロードサイトも展開。後者においては「セキュリティソフトメーカーのサイトだから、そこでダウンロードできるAPPも安心」といったイメージを与え、多くのユーザーが活用しています。

もう一つの老舗が「珠海金山軟件有限公司」。360が主に一般ネットユーザー向けであれば、こちらはオフィス用ソフトウェアの会社と言っていいでしょう。

金山は主にマイクロソフト社の「office」に近いシステムやセキュリティソフト、また現在はビジネス用のクラウドシステムを提供することで、中小や地方企業のユーザーを獲得しています。

これら老舗企業は、二強や大手ポータルサイトのような多角展開よりも、比較的自身の得意分野に特化した形で中国のインターネット業界を生き抜いてきたイメージがあります。

今後を占う「集約化」―生き残るのはどれだ?

例えば現在、百度のブランドとなっている「愛奇芸」は、2010年に百度グループが立ち上げらた動画配信サイト。同社は2013年にライバルであった動画サイトであるPPSを3.7億ドルの価格で吸収合併し、その勢力を拡大しました。

また「美団点評集団」。参加に「美団」そして日本でも知られた「大衆点評網」の大手2ブランドを抱えていますが、この2つはもともとライバル会社。ともに2010年ごろに中国で巻き起こった「団購(団体購入。購入者が一定人数に達すると安く購入・サービスが受けられる)」ブームに乗って誕生した、無数のサイトの1つでした。

しかし、やがてブームが過ぎ去ると淘汰の時代に入り、多くのサイトが姿を消していきます。一説には2013年のデータでは、6300ものサイトがしのぎを削っていましたが、2014年にはわずか400程度のサイトしか確認されておらず、かろうじて大手と言われるサイトも「美団」、「大衆点評」、「拉手網」ほどしかありませんでした。

結果、生き残りのために2015年、前者2社が合併。「美団点評集団」という、レビュー・団購サイトが誕生し、その一強体制を確立。現在に至っています。

このように「爆発的人気」→「乱立」→「過当競争」→「自然淘汰」→「M&Aや提携による合従連衡」→「集約」という流れが、日本の数十倍の規模とスピードで展開されていくのです。

どの業界のどこが生き残るのかを握るのは、やはり二強。アリババとテンセントの動きにかかってきます。両社はともに、新しい市場では自社で会社を設立するよりも、その市場で将来性のあるベンチャー企業に資本を投下することで市場を確保する傾向があります。

例えば「タクシー配車サービス」。現在は「滴滴」一強になっていますが、かつて同サービスを行う企業は複数ありましたが、アリババが資本投下したベンチャーとテンセントが資本投下したベンチャーがしのぎを削り、最終的に両社が合併することで、シェアの95%を占める巨大配車アプリへと成長したわけです。

そのため、シェアバイクやライブ動画など、新たな市場においても、この2社の動向が今後の発展をカギを握っているでしょう。