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【中国クチコミ分析】 中国で広まるウイスキー市場。人気日本ブランドから読み解く ―『サントリーシングルモルトウイスキー山崎』 Vol.1

中国で近年急速に伸びているのがウイスキー市場。これまでのビール、ワイン、白酒に加え、ウイスキーへの興味が高まっています。その動きに日本で反応したのがサントリー。傘下のBeam Suntory(中国名:賓三得利)が、2018年1月、T-Mallに旗艦店をオープンし、「山崎」ほか、同社の持つブランド「ボウモア」、「JIM BEAM」などの販売をはじめています。今回は、中国で人気になった日本のウイスキーのクチコミを収集、分析することでその市場の動きを追ってみたいと思います。

中国トレンドExpressがお届けしているクチコミデータランキング「トレンドViewer」。その「買った」ランキングでは『サントリーシングルモルトウィスキー山崎』が長きにわたって1位を獲得していました。


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人気上位の日本産ウイスキーブランド

ランキングデータを見ると2017年9月27日の週から今年6月13日の週まで「買った」ランキング1位。その後、徐々にランキングを落としましたが、同時に「買いたい」ランキングでも姿を見せ始め、現在でも「買った」、「買いたい」ランキングに常連となっています。

今回、中国トレンドExpressでは、BEAM SUNTORYがT-Mall旗艦店をオープンさせた2018年1月から7月までの期間「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」、そして中国消費者のウイスキーに対するイメージを知るために「ウイスキー」についてのクチコミデータを収集。その経緯を整理しました。

 

【グラフ】「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」と「ウイスキー」のクチコミ件数の推移

ウイスキー全体の口コミ数が減少した5月ですがクチコミ件数が急激に増えているのは、同月にサントリーから「白州12年と響17年の供給休止」が発表されたためと思われます。

中国ではサントリーの発表の翌日にあたる5月16日ごろには中国のメディアやSNSによって報じられていることからも、中国側の関心の高さがうかがえます。

クチコミ件数を見てみると、5月以降から徐々に減少にうつりますが、それでも7月時点では1月に比べて1.6倍程度の件数が確認でき、その人気は衰えていないと予想できます。

それは、1月と7月の同製品の口コミ内容の「ポジティブ」、「ネガティブ」、「ニュートラル」の比率を見てみてもわかります。

 

【グラフ】「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」の1月と7月のポジネガ

販売停止の発表から2ヶ月を経過した7月においても、それぞれの比率には大きな変化が見えていません。ただ、価格上昇や品薄によってニュートラルの比率が増加しています。

ネガティブの増加が見られないことから、「手に入らないのは仕方がないね」といった心が透けて見えます。

気になるのは「価格」?やや薄い「使用感」

では具体的に、どういったクチコミが多いのでしょうか?今回中国トレンドExpressでは、「サントリシングルモルトウイスキー山崎」に関するクチコミから月ごとに上位20位を検出。そのクチコミの総数を下のグラフにまとめました。

 

【グラフ】「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」のキーワード(2018年1月~7月)

これを見ると、上位がブランド名や商品名が集中してしまっています。そこで、このキーワードから商品名などを取り除いてみます。

 

【グラフ】「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」のキーワードから商品名を取り除いたもの(2018年1月~7月)

ダントツで多いのが「日本」というキーワード。同製品が日本のウイスキーブランドであること、日本製であること、また日本からの直輸入であることに対して、消費者が関心を抱いていることがわかります。

次いで多いのが「価格」。日本でも販売停止発表後に、プレミア価格が付いたことが話題になりましたが、中国でも「いくらなら購入できるのか」や「18年はいくらで、12年はいくら?」といった、購入価格についての質問などが多くあります。

そのため同製品、中国の消費者にとっては「手に入れることが一苦労」という部分が見えてきます。

それを示すのが、「色」や「味」、「氷」(これも漠然としたキーワードですが)の後に続く、「転売」「偽物」といった、看過しえないキーワードです。

ただ全体的に見ると、味の感想については「美味しい」が入っていますが、件数としては価格や販売場所などの情報に比べて非常に少なくなっています。また具体的な飲んだ後の感想もほぼ見られない状況です。

ここから、中国の消費者にとって同商品を購入するポイントが、味などよりも「高いものを購入する」というステイタスを求めてという部分にあるように思われます。

これらのキーワードは、月ごとに追ってみると非常に興味深い動きを見せています。例えば「販売停止」の書き込みが絶えたとたん、「転売」や「偽物」といったクチコミが増えるなど、「山崎ショック」ともいえる消費者の心の動きを見ることができます。

次回は、こうしたクチコミキーワードの月ごとの推移やその背景について、より細かく見ていきましょう。