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【中国クチコミ分析】 中国で広まるウイスキー市場。人気日本ブランドから読み解く ―『サントリーシングルモルトウイスキー山崎』 Vol.2

中国で近年急速に伸びているのがウイスキー市場と、その市場でのブランディングを事情を探るべく、中国トレンドExpressでは長らく人気商品としてランキングに存在感を示していた『サントリーシングルモルトウイスキー山崎』のクチコミ調査を今年1月から7月の期間で実施。中国消費者が同商品、そしてウイスキーに何を求めていたのかを探り出します。

第2回目の今回は、前回紹介した同商品に関するクチコミから、中国消費者の人気のポイントを抽出し、分析してみたいと思います。

 

▼前回はこちら
中国で広まるウイスキー市場。人気日本ブランドから読み解く―『サントリーシングルモルトウイスキー山崎』 Vol.1

 

『サントリーシングルモルトウイスキー山崎』は中国トレンドExpressがお届けしているクチコミデータランキング「トレンドViewer」の「買った」ランキングで2017年9月27日の週から今年6月13日の週まで「買った」ランキング1位を獲得。ランキングが下落したとはいえ、現在でも「買った」「買いたい」ランキングの常連となっています。

販売休止も中国SNSでポジティブクチコミ増大

クチコミ件数の推移を見てみると、下のグラフのように今年3月から4月で急速に増加していることがわかります。

 

【グラフ】「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」のクチコミ件数の推移

2018年は2月16日が春節だったこともあり、その春節観光などの日本に訪れた人たちが、2月末から3月にかけて多くのクチコミをアップしています。

その内容は、3月のクチコミにおけるポジ・ネガを見てみても、ネガティブの比率が半年間で最も少ない値になっていることからも、非常に好意的な高評価クチコミが多かったことが見て取れます。

そのクチコミ件数は、製造元のサントリーが「響」と「白州」の販売休止を発表した5月16日とその翌日から急速に増加しています。

販売停止の発表を受けての伸びであることから、ネガティブなクチコミや懸念の声が増えると思われがちですが、クチコミのポジ・ネガの比率は以下のようになっています。

予想に反してポジティブのクチコミ比率が拡大しています。下のグラフはこのポジ・ネガの件数の半年間の推移を示したものです。

 

【グラフ】「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」クチコミのポジ・ネガ推移

これを見ると、サントリーシングルモルトウイスキー山崎の兄弟ブランドの販売休止は、消費者にとってはネガティブ要因になってしまいがちです。しかし、実際は報道のあった5月にポジティブが増大、その後減少しますが、やはり件数ではニュートラル、ネガティブを上回っています。

反対にネガティブに関しては、4月にごくわずかな上昇が見られましたが、すぐに減少し、2月と同水準に戻っています。

ここに中国消費者の思考を読み取るヒントが隠れていると考えます。

気になるのは価格。販売休止が「断貨王」人気に拍車を

下のグラフは前回もお見せした、「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」に関するクチコミキーワード各月上位20位と、その半年間の件数をまとめたものです。

これを見ると、圧倒的に「価格」、「売り切れ」というキーワードが上位に、そして本来は重要であるべき使用感「美味しい」の件数は、この両者に比べて非常に少ない傾向が見られます。

 

【グラフ】「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」のクチコミ件数

ここから中国の消費者が同製品に対して気にしているのが「いくらぐらいか」、そして「手に入るか否か」に集中していることが見て取れます。

続いていくつか気になるキーワードをピックアップし、そのクチコミ件数推移を見てみましょう。

「価格」というキーワード、4月にいちど20位以下まで下がりますが、5月の新聞発表を受けて一気に増加しているのが見て取れます。これは販売休止を受けて価格が高騰することを懸念する声が反映されています。また日本で品薄状態にある2月ごろからは「売り切れ」が増加、6月にも高い数値を示しています。

それ以外では、やはり「偽物」というキーワード、「転売」というキーワードが4月5月を中心に増えています。

「転売」に関しては、5月以降も若干の減少は見せていますが、依然としてキーワード上位に名前を連ねています。「偽物」同様、品切れ、生産休止となった以上、山崎を購入する方法がなく、またそれを見て取ったバイヤーも山崎の販売を宣伝している状態であると言えます。

ただ、この反応は山崎自体の販売がまだ続いていることから、いったんは収束していくのではと考えられます。

「買った」から「ほしい」へ。中国消費者心理

そもそも、サントリーシングルモルトウイスキー山崎人気は、中国の消費者が連ドラに端を発した日本のウイスキーブームに注目。日本国内でプレミア商品が高価で販売されるのを見て「日本人が買いあさるならいいモノに決まっている」という心理が働き、いわゆる爆買い対象となった商品です。

さらに中国国内で「成功者」や「カッコよさ」の象徴としてのウイスキー人気が高まることで、日本でも人気の高い「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」への関心度がより高まったのです。

そうした消費者心理は「品薄」や「品切れ」というキーワードによってより高まります。さらに5月、本商品そのものではないのですが、兄弟ブランドが「売れすぎて販売休止」になったことで、「買っておかないと!」という心理が高まり、それが「あんなにたくさんの人が欲しがっている。今のうちに!」といった購買へと結びついていったものと推測されます。

中国では往々にして「売り切れ」になったことで、「断貨王(売り切れ大王)」の名が付き、一気に人気が高まることがあります。

トレンドViewerでも日本国内で品薄状態が始まったころから、「買った」だけではなく「買いたい」ランキングにも姿を見せており、「買えない」→「買いたい」という心理が高まっていることを感じさせます。

こうした「日本で大人気!」「日本でも品薄」という情報が中国消費者にとってより購買意欲を増加させるものであると言えそうです。

次回は「ウイスキー」に関するクチコミキーワードから山崎人気との関連性を見ていきたいと思います。